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祖父のはなし。

2020年11月28日、夜ご飯を食べて家でTVを見ていると母から着信があった。
なんとなく怖くなって夫の服を掴みながら電話に出ると
「お姉ちゃん、さっきおじいちゃんが亡くなった。今みんな集まってきてるからまた連絡する。」と涙声の母から告げられた。

祖父はその時93歳で、60代後半で膵臓癌を患ったにも関わらず奇跡的に復活し、その後、何度か肺炎で病院に担ぎ込まれていた。
その都度お医者さんに「もう無理かもしれません」と言われていたので、私も含め家族は何度も「さよなら」の覚悟はしていたように思う。

私の実家はとても田舎の方にあり、父は病後の経過観察中、親族は80歳を超える人が多いためコロナの影響を心配した母から、関東に住む私はお通夜にも告別式にも参加しなくて大丈夫と言われた。

そうは言われても、多分ちゃんと祖父の顔を見てさよならを言わないと一生後悔しそうな気がして、次の日泊まる地元の宿を取り、電車の時間を調べ布団に入った。

布団に入ってからもぐずぐずと泣いていたけれど「これでもう、いつかおじいちゃんが死んじゃったらどうしようって悩まなくていいんだな、おじいちゃんはもう多分しんどくないよね」等考えていた記憶がある。

祖父はここ何年かケアホームに入っており、亡くなった日はスタッフの方が夕ご飯ですよーと声をかけたところ「今日はいらない」と言い、
その数時間後「あっ」と声がしてたまたま近くにいたスタッフの方が見に行った時にはもう呼吸が止まっていたらしい。

亡くなる三日前に母親に、「お刺身とビールを持ってきて欲しい、あと〇〇(ひ孫)の写真が欲しい」と言っていたようだった。

孫の私が言うのもなんだけれど、祖父はなかなかイカした人で
私と弟が小学生の時には、毎週土曜日になると学校の前まで車で迎えにきて、
自分の好きな鰻屋さんに私達を連れて行くのだった。

犬が好きで、だけどもう自分では飼えないからと、犬のぬいぐるみを枕元において寝ていた。

数年前は、ある日突然母親から浴衣の写真が送られてきて「おじいちゃんが、どうしてもお姉ちゃんにこれあげたいって勝手に浴衣買ってきたんよ・・」と連絡がきた。

私が実家に帰った際には「あっこちゃんにプレゼントを買いました!これはとても上等なものです!」と自信満々嬉しそうに、真珠のピアスをくれた。

なんだかもらった思い出ばっかりだ。

最後に祖父がくれたのは私のフルネームの実印だった。
結婚して姓が変わってしまたので、結局一度も使うことなく引き出しに入っている。

これ以外にも祖父の思い出はいっぱいで書ききれないけれど、ちゃんと私には残っている。

数日前に、留守番電話の伝言メモを整理していたら(勧誘とかが多いのでズボラな私は聞かずに何件も放置してしまう)、祖父からの伝言メモが残っていた。

なんだったけなと思って再生すると、
「あっこちゃーん、おじいちゃんです、そろそろ会いたいなあ。また電話ちょうだいね。」と録音されていた。


今日一人で気持ちいい天気の中お昼ご飯を食べていたら、急に祖父のことを残しておきたくなった。

美味しいものを食べたり、桜を見たり、愛犬を撫でていたりすると、おじいちゃんのことを思い出すよ。
おじいちゃんがもう寒い思いも痛い思いもせず、今日の日のような、あたたかいところでゆっくりしてくれていると思いたいな。たくさんありがとう。





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