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Mくんの「私に書かせなさい」 常識

今日は「常識」のお話をしようと思います。
なにか不快になることがあったとか、私の考えを知ってほしいとかそういった気難しい私の一面をお見せしたいというわけではなく、純粋に「常識」というものがどれほど曖昧で流動的なものかを示すエピソードを、科学の側面からお話する回にしようと思います。
「地震が起こるメカニズムを説明してください」という問いがあったとして、地震大国日本国民であれば、大半の人が
「プレートがプレートに沈み込んでいて…」という説明ができるものと思います。
それほど日本人にとっては自身は身近なものですから、このような説明は一般的に知られています。
しかしこの地震の原因がプレートの動きによるものだとか、そもそも大陸の下には「プレート」というものがあって、という学説が登場したのはいつごろなのかはご存知ですか?
何となく、明治時代くらいに欧米の文化や学問がいっぱい入ってきたころに日本に伝わったようなイメージがあります。
しかしこのプレートというものがあって、プレートが動いている理論「プレートテクトニクス」が研究者の間で受け入れられるようになったのは1960年代中頃で、この「プレートテクトニクス」が学説として発表されたのは1912年です。
地震がどうやって起こるのかが分かってから、まだ半世紀ほどしか経っていないのは、何となく意外な感じがしないでしょうか?
私たちのYouTubeチャンネルの視聴者様の年齢層は小・中学生~30代、40代の大人と思いますが、noteの読者様は高校生・大学生以上の方が大半でしょう。
読者の皆様のおじいちゃん、おばあちゃんが生まれたころには、まだ地震の原因が解明されていなかったというのは、なんとも不思議なお話です。

1912年に発表された「プレートテクトニクス」ですが、その分野の研究者たちに受け入れられるようになるまでに約半世紀かかっています。
発表された当初はプレートテクトニクスという考え方ではなく、「すべての大陸は昔1つの大陸だったのがバラバラになったんじゃないの?」とする説(大陸移動説)でした。
大陸移動説の根拠はこうです。
①地形がいっしょっぽい
大西洋をまたいだヨーロッパ・アフリカ大陸と南北アメリカ大陸は、ジグソーパズルみたいにくっつきそうな形をしている
②地層がいっしょっぽい
アフリカ大陸と南アメリカ大陸の地層や地質は遠く離れているのに地層が続いているように同じ
③生き物の分布がいっしょっぽい
海を越えられないミミズなどで、同じ種類のミミズが海を挟んで暮らしている
④採れる化石がいっしょっぽい
2億5,000万年以上前に絶滅した三葉虫などの化石の種類が海を隔てて同じ種類で採れる

他にもいくつかの根拠が示されていますが、主だったものは以上4つです。
もう少し詳しくご説明しますと、

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この世界地図は日本ではあまり見慣れたものではありませんが、ヨーロッパ諸国では当たり前の形です。
これもまた「常識」になりますが、世界地図はどこの国も自国が中心に来るように作ります。
①地形がいっしょっぽい
というのは要するに↓こういうことです。

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ただこの根拠だけでは、「何となくそんな感じがする」程度の説得力しかないですし、「たまたまこういう形になったんじゃないの」とする根拠には対抗できません。あくまで大陸移動説を思いついた人が気付いたきっかけにしかなりません。
そのためそのほかにも根拠を示す必要がありますので、それが②~④になるわけです。

②地層がいっしょっぽい
これも図で示すのが分かりやすいでしょう。

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ピンクの帯のように3つの地層がヨーロッパ・アフリカ大陸、南北アメリカ大陸にそれぞれ走っていたとしたら、これは「もともと繋がっていた」という説明をつけた方が理解しやすくないですか?繋がっていたんですよ!という根拠です。この図のピンク帯は私が適当に描いたものですが、これらの大陸には実際、このような地層のつながりがみられます。
「地層」と聞くと何となくイメージでしか思い浮かびませんが、地層が同じというのはかなり決定的なもので、文字通り海を越えるほど離れた地点で同じような地層が見つかることは、よほど大きな火山の噴火や地球上の生物を滅亡させるほどの隕石の衝突が何度も無い限りはありえないことで、要するに「たまたま」では済まされないお話です。
例えば↓の図のようなものが地層の模式図ですが、地表の方の地層は異なっているのに、下の方は地層に含まれる岩石の種類が同じで、かつその層の厚さが同じくらいの厚さであれば、A、Bの地点は昔近くにあったと推察されます。

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地層や噴火による火山灰の蓄積や水によって運ばれてきた土、砂が蓄積していったものです。氷河と同じで、下に行けば行くほど昔の地表の様子が分かります。層の厚みによって、その当時の地表の状態がどれほど続いたのかもわかります。
例えば粘土の層が厚い場合、昔そこは海か湖の底で、しかもその期間が長かったことが分かります。

③生き物の分布がいっしょっぽい

④採れる化石がいっしょっぽい
についてはここまでくればイメージがつくと思います。
特に海を渡ることができない生物が海を挟んで広く分布しているということは、昔地続きだったと説明するのが一番理解しやすいですから。ミミズの場合、渡り鳥のような鳥さんの足に一生懸命絡みついて海を越えた可能性は万が一あるかもしれませんが、さらにそこからたどり着いた陸地で交尾する相手を見つけることはまず不可能でしょうし、仮に子孫を作ったとしても広く分布できるほどにまで子孫は残せないでしょう。

さてここまで聞くと大陸は昔1つにまとまっていたという可能性以外を信じることができないような気もしてきますが、先ほど触れたように大陸移動説はその後50年ほど定説になりませんでした。
当時の常識として大陸は不動のものだったからです。また仮に動くとしても、なぜ、どうやって動くのかの説明がなかったため、この説を受け入れる人は少なかったのです。
特にこの「大陸は不動のもの」とする常識をくつがえそうとすることがやっかいで、この常識が崩れてしまうと困る人がたくさん出てしまいます。仮に大陸が動くものだったとしたら、過去の研究成果が根本から間違っていたことになりかねないことや、今後得られるであろう研究成果にも影響が出るかもしれないからです。
そんなリスクの高い学説であれば、否定してしまった方が安全です。
だからこそ、「大陸が1つだったんなら何が動かしたんだ?」という根本的な部分にツッコミを入れて、しかもその答えを出すのには協力しないでおくのが一番良い、という結論に至るのも致し方ないところです。
自分が常識と捉えてきたことに対して否定されることは誰にとっても苦痛であるはずです。
特に昨今はSNS時代ですから、自分と異なる考え方をしている人からの情報をシャットアウトすることは、日常生活レベルでさえ容易にできてしまいます。異質なものを受け付けない、そもそも目に入らないようにする時代です。
自身と考えの似ている人同士で集団を形成する様子は、まるでたくさんの泡が集まっているようです。泡は集まっても一つになるのではなく、破裂するまで泡として存在し続けます。まさにこうした「自分の見たいものしか見ない」状況のことを「フィルターバブル」といいますが、1世紀前、世間に受け入れられることのなかった大陸移動説のように、現代の私たちも「見たいものを見る」ことによって得られなかった視点や物事の考え方はたくさんありそうです。
「大陸は不動である」とする人が大半を占める科学者たちに「大陸は移動する」と言うことは、大学の先生に「幽霊は存在する」と真面目に議論をもちかけるようなものです。子供がそういう風に話をする分には「そうかもしれないねぇ」と優しく返すかもしれませんが、大の大人がそんなことを言えばどんな印象を持たれるかは想像に難くないところです。
しかしもしかしたら将来、幽霊の存在は科学的に証明される時代が来るかもしれません。怪談話や神秘体験のようなものは世界中に存在しますし、占いやおみくじをしたことが無い人はほとんどいないでしょう。
科学的に証明されていないものだからといって否定してしまうことが、いままでどれだけ科学の進歩の足かせになったのかは例を挙げれば枚挙にいとまがありません。
有名な「ビックバン」についてもそんなものは存在しなかったと考える研究者がいまだに存在するくらいですから、ここまで有名になった今でも「宇宙の成り立ちをうまく説明できる仮説」の域を完全には出ていません。ビックバンが受け入れられるようになったのはビックバン理論に基づいて存在が予想された宇宙マイクロ波背景放射が実際に観測されたためですが、もしかしたらビックバン理論も将来覆される日が来るかもしれませんね。

こういう風に考えていくと何が正しくて何が間違っているかの結論を出せない人間になってしまいそうで、無暗矢鱈に混乱を招きかねません。
私自身も何かに悩んであれこれ考えを巡らせていくと、なんとも複雑怪奇な結論にたどり着いてしまうことがあります。
第三者が私の結論をみた時に「何をしようとしているのかは分かるが、なぜそうなったのかは分からない」と思ってしまうような結論です。そして、だいたいそういう結論の時、結果として間違った結論であることが多いです。
そうして生じる失敗は、特にそれが仕事上での失敗の場合、とても怒られる失敗になりがちです。
なぜなら第三者からみると「なぜそうなったのか分からない」ものだからです。

しかし先人は効率よく思考し判断するための法則を残してくれています。
「オッカムのかみそり」とか「節約志向の原理」といいます。これをとってもシンプルに説明すると、「複数の回答がある場合、よりシンプルに説明できているほうが正しい」というものです。
これは発想を整理する方法の一つなので、必ずどんな場面でも正しく使えるものとは言い切れません。
しかし人間には「確証バイアス」というものがどうしても切り捨てられないので、自分自身が「こうあってほしい」という気持ちが強ければ強いほど、自分にとって都合のいい情報しか頭に入らなくなってしまいます。先ほどの「フィルターバブル」というのも厄介なもので、そもそも私たち現代人は自分にとって都合のいい情報のほうが集まりやすい環境にあるため、「確証バイアス」が働きやすい状態にあります。
そうした状態で自分にとって何らかの答えを導き出そうとすれば、必然的に複雑怪奇な論理構築をして、自分にとっての答えを導き出してその答えを信じようとしてしまうのは当然と言えます。
こういう時にオッカムのかみそりは役に立ちます。自分が出した答えはシンプルな思考で導き出しているかどうか?という問いを自分にぶつけてみることです。こうした場合、「シンプルとはどの程度のものなのか」という疑問もまた同時に湧いてきてしまいますが、そこは「確証バイアス」のことを頭に入れつつ、自分の中での「シンプル」のレベルをその時々に合わせて作っていくほかないでしょう。

ミナツドの活動全般にとっても同じことが言えそうだな、とお気づきの方もいらっしゃるかと思います。
ミナツドの活動も割と複雑になってきています。
動画のシリーズも増えてきましたし、それに伴ってゲームのルールも複雑なものが増えてきました。視聴者様との関わり方についても、YouTubeだけでなくTwitterや今ご覧いただいているnote、ツドコミュメンバー様向けのDiscordなどたくさんあります。
ミナツドの活動の本質は、プレイヤーである私たちが楽しんで高校時代の放課後の延長を続けられるかどうか、という点にあります。複雑になってきている活動についてご意見やご指摘のある方もいらっしゃいましょう。私共としても「どういった活動であっても応援してください!」と申し上げるつもりは微塵もありませんし、むしろどういった活動があれば視聴者さんに楽しんでいただけるか、という観点を一番大切にしているつもりです。そのためにはYouTubeだけでなく、noteやDiscord、Twitchなどなど、どうしてもプラットフォームの数が増えていってしまいます。

いろいろ書き連ねましたが、要するになにか楽しいことをやりたいですね。
帝国は楽しかったです。
Mくん帝国再開のお話をたくさんいただいておりました。ご意見どうもありがとうございます。
形にできるように頑張ります。


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