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一日一つ機械の小ネタ 八粒目「ボルト」

機械の小ネタ八粒目は「ボルト」です。
サムネイル画像はAston Martin Red Bull RacingのYoutube動画から拝借しています。

めちゃめちゃカッコよくボルトの誕生から機体に組み込まれるまでを描いているので、ぜひ見てください。

小ネタ七粒目で「ネジ」について取り上げましたが、今回は「ボルト」です。ネジとボルトの違いはナットの有無なのですが、ここでのボルトは締結部品としてのネジの総称ということにしておきます。(細かい区分の話はめんどうですので)

さて上に貼ったF1のボルトの動画ですが、このボルトは単品設計の特注品です。そして一本毎に鋼材から切り出してNC機材で削り出し、さらに表面処理や熱処理を施しているボルト界のエリート中のエリートボルトといえるでしょう。非常に高貴な生まれのボルトです。

が、すべてのボルトがこのような生まれをしているわけではありません。
だいたいの身近なボルトは転造という技術で製造されています。

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転造の概要図(株式会社ヤマシナさんより拝借)

転造というのは溝のついた板や円筒でボルトの元となる金属の棒を押しつぶしてネジの溝を作り出す技術です。削るのではなく押しつぶして形を作るので、非常に高速に、しかも連続的に製造できるので、大量生産大量消費の今の時代に適した製造方法といえます。
しかも押しつぶして成形する技術(広義には「圧延」といいます)は押しつぶしたときに金属が硬化するので、旋盤などで削りだした部品より表面を硬く仕上げることが出来ます。
全く持って大量生産のために生まれたような素晴らしい技術です。

かといって、F1のボルトが無意味に面倒な手順を踏んで生まれてきたわけではありません。そもそもF1のような場面では規格品のボルトでは長さが最適化できなかったりするので特注することも多いでしょう。さらにいうと、NC旋盤などの工作機械で製造されたボルトは非常に精度がよろしいですし、表面処理や熱処理を自前で行うと非常に安定した品質で仕上げることが出来ます。(確かな工業力が必要ではありますが...)
F1などのレースやラリーといった競技は機体に高い負荷のかかるので部品には高い品質が求められます。品質のムラでボルトが折れてしまったりしたら人死に関わりますからね。そういった場面では削り出し+熱処理のボルトが使用されます。

きっとボルト界でも生まれによるバトルがあるのでしょうから、身近なボルトさんにも是非「君は転造生まれ?」などと聞いてみてください。

主観と偏見に満ちた今日の一言:
「転造ボルトはコンビニの饅頭、削り出しボルトは三ツ星レストランのケーキ。」

八粒目は「ボルト」についてでした。
非常にざっくりとしたnoteではありますが、機械や製造の分野に興味をもっていただければ幸いです。


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