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一日一つ機械の小ネタ 十粒目「溶接」


機械の小ネタ十粒目は「溶接」についてです。
サムネイル画像は日本財団図書館から拝借しました。

溶接は金属材料を融かしてくっつける技術です。ですが融かす方法にもいくつか種類があり、融接・圧接・ろう付けの3つに大別されています。
ちなみによく見る溶接(お面を持ってバチバチやってるやつです)は融接(材料をドロッと融かしてくっつけるヤツ)に分類されます。

さて溶接の技術が開発されたのは1900年代ごろとされています。
詳しい歴史は引用リンク先を参照されたいのですが、日本での導入当初は海軍などでの研究が行われ、その後戦艦などの艦艇に徐々に用いられることとなります。
因みに呉海軍総監部(今の海自呉地方総監部)の古い鉄鋼製の防爆扉なんかをよく見ると、リベットと溶接が一つの扉に使われているのを見ることが出来ます。溶接技術が熟する前の製品らしく、荷重がかかるところにはリベットが、そうでないところには溶接が使われています。そういったところから1920年代くらいの扉だというところまで想像することが出来てしまうのですが、これってすごく面白くないですか??
ふとした機械要素からその部品たちが歩んできた背景まで推測できると、部品一つ一つに歴史を感じて何ともほっこりした気分になります。

ところで同じころアメリカでも同様に溶接技術の開発が行われ、船舶の分野でも溶接が利用されるようになり、同時期に採用されたブロック工法(ユニットごとに作って最後に合体させる方法)とも相まって、船の建造時間の短縮に貢献しました。

が、事件が起こります。
溶接&ブロック工法で作られた大量生産船であるリバティ船が冬の海で突如として真っ二つに割れるという摩訶不思議事件が起こります。

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真っ二つになったリバティ船(Wikipediaから拝借)

詳しくは引用した記事を参照されたく思いますが、ざっくりいうと当時の鉄と溶接材料の品質の問題でした。
溶接するとき必ず熱を加える必要があります。熱が加わると鉄は融け、冷えると固まってくっつくわけですが、この時一度融けることで材質が変化してしまいます。そしてこの変化した鉄は低温状態で脆性破壊しやすい(=クッキーみたいにパキッと割れる)性質を持ちます。
この性質のせいで、冬場に突如として船が割れるという不思議事件が起こったとされています。

今では溶接用の金属材料の改質が行われたお蔭で、このような事件が起こることは無くなっていますし、航空宇宙などのより条件が厳しい分野でもなくてはならない技術として使われています。

もし船に乗る機会があったら、船体の溶接跡を探してみてください。
見つけたときは「溶接パイセンオジャジャッス」と歴史に思いを馳せながら挨拶していただければと思います。

今日の一言:
「製造痕や構成部品から歴史を辿るのは紳士淑女の嗜み。辿れた時はエモエモのエモ」

十粒目は「溶接」についてでした。
非常にざっくりとしたnoteではありますが、機械や製造の分野に興味をもっていただければ幸いです。



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