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ICC 世界商業会議所の役割

WTOの設立よりも30年前に第一次世界大戦からの復興と自由な国際通商の実現を目指して設立されたのがICC(International  Chamber of Commerce)である。現在本部はフランスのパリにある。1919年10月、米・英・仏・伊・ベルギーなどの産業人4,000人が米国アトランティック・シティに集まって開催された「アトランティック国際通商会議」をもって嚆矢とし、1920年5~6月パリに於いてICC創立総会が開かれ、以来民間企業の世界ビジネス機構として活動している。世界130カ国以上の国内委員会等及びその直接会員である企業・団体より構成される。設立当初日本からは各務鎌吉氏が「アトランティック国際通商会議」に出席。藤山雷太氏がパリの「ICC創立総会」に出席。1922年に欧米視察団(団長:團琢磨氏)がICCパリ本部を訪問。 帰朝後、日本のICC加入準備に着手し1923年に正式加盟をする。奇しくもスペイン風邪が流行した時期に設立された団体であった。日本委員会の会長は斎藤保(株式会社IHI代表取締役会長)が務めており会員は85社、団体会員は22社と日本の貿易量からすると意外と少ない印象である。ICCの活動は下記の通り多岐にわたっているが、我々トレードファイナンスの人間にとって大切なのは二点目のルールとICCから発信される様々な情報である。リンクはhttps://iccwbo.org/ 

1.WTO、UNCTAD、UNDP、UNIDO、UNEP、 UNCITRAL、 WIPO、 EU、 OECD/BIAC、 WCO、 IATA、 FIATA等の国際機関、各国政府特にG8およびG20サミット参加国首脳に対し、民間の立場からの積極的な意見具申/政策提言を続けている。
2.国際取引慣習に関する共通のルール作りを推進。「インコタームズ(貿易取引条件解釈の国際規則)」「信用状統一規則」「取立統一規則」「銀行間補償統一規則」「仲裁規則」「友誼的紛争解決規則」「契約保証証券統一規則」「請求払保証に関する統一規則」「UNCTAD/ICC複合運送書類に関する規則」等々。
3.国際商事取引紛争に関する情報提供活動を推進
4.商事犯罪や海賊事件等に関する情報提供活動の推進

ここ数ヶ月の間、COVID19に関連した様々な議論や情報共有がICCの本部であるヨーロッパを中心になされており、多くの方々が毎週行われている無料のwebinarなどを通してCOVID19における通商問題の把握や貿易取引規則対応に関する最新情報を入手している。トレードファイナンスファンドにおいて関心が高いのはIncoterms(貿易取引条件解釈の国際規則)におけるForce Majeure(不可抗力)条項の適用解釈や取引信用保険市場への影響などである。日本においてはメディアにも取り沙汰されない様な団体であるが世界的には影響力が大きいため、貿易取引やトレードファイナンス関係者は心の片隅にでも入れて頂けると今後お役に立つであろう。


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