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中小企業診断士 森健太郎シリーズ⑦小さき者たちのArk※中小企業経営・中小企業政策(後編)

はじめに

この記事は中小企業診断士一次試験合格のため、試験範囲の論点を記憶する目的で執筆した記事です。私は受験前ですので中小企業診断士の資格は取得しておりませんし、登場する人物および会社はすべてフィクションです。
中小企業診断士の有資格者の方や専門分野の知見をお持ちの方がご覧になられていたら、内容の齟齬や間違った理解をしている箇所についてご指摘、ご指南いただけると幸いです。
試験後に時間があれば記事にしたいと思いますが、私は認知特性タイプが言語優位(言語映像型)で文章の読み書きによる記憶や理解を得意としています。ストーリー法とプロテジェ効果を利用した学習の一環として記事を執筆しております。


小さき者たちのDuty

熊川味噌本舗の味噌はさわやかな口当たりで、スッキリとした香りの味噌だった。味噌汁や西京焼きなどの和食以外にも、和洋折衷で使えるのではないかと思いながら、森は一気に平らげた。

「社長、お昼までご馳走になってしまってすみません。味噌にあまりこだわりがないのですが、いろんな料理に使えそうなさわやかな味噌ですね。大奥様にもよろしくお伝えください。」

「お口に合ったようで何よりです。宮城県は海産物も豊富ですので、うちの味噌はどちらかというと引き立て役のような存在です。」

熊川社長は笑顔で答えた。

「地域の特徴を理解されているからこそできる仕事ですね。では、お腹も満たされたことですので、中小企業の税制などについてお話したいと思います。この内容は社長もよくご存知かと思いますが、今一度頭に入れて頂いて見落としがないか点検していただきたいと思います。」

食器の片づけを終えた熊川が席につく。

「まず、中小企業に適用される税制は法人税法と言って、中小企業基本法とは異なります。」

「資本金1億円以下の法人は法人税法の適用になるんだな。どんな施策があるんだ?」

「主な措置としては2種類ある。その1:①支出した交際費等の年800万円までの全額、②支出した接待飲食費の50 %(上限なし)のどちらかを選択して損金算入可能(令和6年3月31日まで の時限措置。ただし、2年間の延長要望が出されている)。その2:年所得800万円以下の部分について、法人税の軽減税率が適用される。

「法人税の軽減税率はありがたい制度だな。他ににはどんな制度があるんだ?」

熊川が身を乗り出して質問する。

「特徴的なものをいくつか紹介していくが、中小企業庁から中小企業施策ガイドブックというものが発行されているんだ。時間がある時に見てみるといい。」

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/g_book/2024/download/04keiei.pdf

「次にエンジェル税制についてだ。エンジェル税制というのは個人投資家のリスクを軽減し、中小企業への資金供給を円滑化させ、新規産業の 創出・発展を図ることを目的とした税制措置制度だ。個人投資家は、対象となるスタートアップ企業へ投資した年に受けることができる所得税減税として、①スタートアップ企業への投資額の一定額をその年の総所得金額から控除し、課税を繰延、②スタートアップ企業への投資額全額をその年の他 の株式譲渡益から控除し、課税を繰延、などの支援策の中からいずれかを選択でき る。 また、対象となるスタートアップ企業株式を譲渡した年に受けることができる所 得税減税として、未上場スタートアップ企業株式の売却により生じた損失を、その年の他の株式譲渡益と通算(相殺)できるだけでなく、その年に通算(相殺)しき れなかった損失については、翌年以降3年にわたって、順次株式譲渡益と通算(相 殺)することができる。  なお、民法組合・投資事業有限責任組合経由の投資、クラウドファンディング事業者経由の投資も、本税制の対象となる。」

「つまり、スタートアップに投資する人を支援して、企業が資金調達をしやすくする制度というわけですね?」

「その通りです。この制度の要件は以下の通りです。1 )創業(設立)10年未満の中小企業者(大規模法人(資本金1億円超等)の 子会社等を除く) 2 )外部(特定の株主グループ以外)からの投資を一定以上取り入れている会社 3)未登録・未上場の株式会社。この制度は投資家が見つかっている前提での話なので、企業側で使うのは難しいかも知れませんがスタートアップにとっては有効な手段になり得ます。」



「次に少額減価償却資産の特例についてです。取得価額が30万円未満の減価償却資産を導入した場合、合計額300万円を限度 として、全額損金(または必要経費)に算入することができる(令和6年3月31 日までの時限措置。ただし、2年間の延長要望が出されている)制度です。」

「これは中小企業に嬉しい制度ですね!条件はどのようになっているんですか?」

熊川社長は目を輝かせた。

「条件は以下の通りです。」

「これも中小企業にとって嬉しい制度ですが、欠損金の繰越控除という制度があります。 青色申告書を提出した事業年度において欠損金(税務上の赤字)が生じた場合、 その事業年度の後の事業年度以降に繰り越して、後の事業年度の所得から欠損金を 控除することで、法人税の負担を軽減できる。  中小法人(資本金1億円以下の法人等)は、各事業年度開始の日前10年以内(原則)に開始した事業年度において生じた欠損金の金額を、各事業年度の所得の金額 の計算上、損金の額に算入することができる(損金の額に算入する金額は所得の金 額が限度となる)」


「続けざまに申し訳ないですが、次は御社が使用する可能性がある制度です。中小企業向け賃上げ促進税制と言います。これは青色申告を行う中小企業者等(資本金1億円以下の法人または常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人等)が従業員への給与等の支給額を増加させた場合、 増加額の一部を法人税等から税額控除できるというものです。具体例を挙げると、雇用者全体の給与等支給額を前年度と比べて1.5%以上増加させた場合、増加額の15%を法人税等から控除できる。また、教育訓練費の額を前年度と比べて10%以上増加させた場合、税額控除率をさらに10%上乗せできるんです。適用期間は令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度です。」

「教育訓練費も控除できるのか。うちも使わない手はないな。何の教育をするのかは森先生に相談が必要ですが…。」

「もちろん、そのあたりもご相談いただいて結構ですよ。企業向けの研修をしている会社もつながりがあります。これも御社の今後関連してくるかも知れませんが、先端設備等導入計画制度です。中小企業等経営強化法に基づく先端設備等導入計画制度による固定資産税の特例が講じられている(令和7年3月31日までに取得した設備が対象)という制度です。」

「計画ってことは実際に導入しなくても優遇があるってことなのか?」

熊川がPCの画面を凝視しながら質問した。

「そういうことじゃない。要するに購入する前に申請が必要だということだ。そのためには、導入する設備によってどのような変化が期待されるのかを計画書にまとめなければならない。これはかなり細かい試算が必要になってくるから、中小企業診断士にお願いした方がいいと思うぞ。」

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/seisansei/01_gaiyou/1-1_02_tebiki.pdf



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