YOASOBIの『群青』について

今回はYOASOBIの『群青』についての考察。この曲の原作は漫画の『ブルーピリオド』。今までは小説が原作だった事からすると少しだけジャンルが違う。ただし、Ayaseさんが作るYOASOBIの世界であることに何も違いはない。

『ブルーピリオド』がどんな話なのかと言うと、何にも打ち込む物のない高校生の主人公が、美術の時間に描いた絵を褒められた事がきっかけで、絵を描く事の楽しみを知る。しかし、娯楽程度でも絵は描けると感じつつもその魅力に引き寄せられ、ついには美大に進むべく真剣に絵と向き合うようになる。これは単行本の1巻の部分で、実は私はここまでしか読んでいない為、その先の話まではわかっていない。ただし、群青の世界観を味わうにはここまででも十分だと思う。

歌詞の1番の部分はまさに主人公が何にも打ち込めず鬱屈とした日々を過ごしているさま。『渋谷の街に朝が降る』は、友人たちと徹夜で遊んだ後の朝の渋谷の景色だ。後に美術の授業で彼はこの渋谷の景色を描く。そして彼はこの渋谷の景色を青い世界と感じ、青一色の濃淡で渋谷の景色を描く事となる。そしてこの絵を美術部の幼馴染や、美術の担任であり美術部の顧問でもある先生に褒められ絵の世界への扉を開き始める。

1番のサビの後半、『好きなものを好きだと言う怖くて仕方ないけど』の部分は、友人らに絵が好き(しかも絵を褒められたのがきっかけ)だとまだ知られたくない、また両親にもそれを打ち明けられずにいる主人公の気持ちが良く表されている。また、絵を描くのは別に趣味でもできるし、まだ真剣に向き合うか決めかねている、その葛藤する気持ちの表れでもあるように感じる。

2番の歌詞は、原作では主人公が美術部に入った後の情景のようだ。夏休みの課題にデッサンを出され、デッサンとは何?と聞いたところ実際に部員全員で書いてみる事に。いざその評価と言う時に、先生がみんなには向上を促す厳しめの批評をするのに対し、入りたての自分には優しめの批評。明らかに自分が一番下手なのに別枠で評価された事に悔しさをにじませる。また、まだ入部前の事だが主人公が絵を描くだけなら趣味でもできるのでは?と先生に訊ねた際の先生の言葉はとても心に響く。主人公は結局この時の先生の言葉に絵の道を選ぶ事を決めた。ここで私の陳腐な解説では届けられないので、是非原作を手に取ってその感動を味わって欲しい。

『何枚でもほら何枚でも自信がないから描いてきたんだよ』の部分は主人公が美術部に入部後の夏休みの課題をやっている風景が思い出させる。高校で美術部デビューした主人公にとって部内でも自分の実力が一番舌なのは歴然。ただひたすらに毎日絵を描く事で自身と実力をつけるしかない。毎日絵と向き合い、ただひたすら描き続けた結果、美術部員でも3人しか達成できなかった夏休みの課題を見て、その成長を部員どころか先生までも驚かせる事となる。

残りの後半部分の歌詞については具体的な原作の風景と言うよりは、この物語を通じての総括のようなもの。きっとAyaseさん自身もYOASOBIとして突然脚光を浴び、目まぐるしく過ごしてきた自分達自身にも語り掛けているのではないかと思う。Ayaseさんもikuraちゃんも、好きな音楽を続けてきて、なかなか芽の出ない不遇の時期を過ごしてきているし、その時の苦労もあるだろうし、いざ売れたら売れたでまた別の苦労もあるだろうし、そんな二人の歌だけに余計にこの歌の歌詞は胸に刺さる。

この歌の『知らず知らず隠してた』の合唱の部分、実は最初はあまり好きではなくて(ikuraちゃん以外の多数参加だったので)微妙な気持ちだったのですが、歌っているのがぷらそにかだと知って、またThe First Takeで一緒に歌っている姿を見てからは自分の中の評価が一変。YOASOBIのikuraちゃんとして世に羽ばたいたとしても、苦楽を共にしたぷらそにかは彼女にとって特別な場所だろうし、そんなみんなとこの歌で一緒に歌える事はどれだけ特別な想いなんだろうと思うと、胸が一杯になり大好きなパートとなりました。楽し気にみんなと一緒に歌うikuraちゃんの姿は最高です。

#YOASOBI #群青


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