YOASOBIの『三原色』について

今回はYOASOBIの『三原色』についての考察。原作小説は『RGB』。NTT docomoの『ahamo』のCMソングに起用されている。

まずは小説の概要を。この小説は、子供の頃に仲の良かった男2人、女1人の幼馴染の話。大人になるにつれていつのまにか疎遠になっていたものの、ふとしたきっかけから再会を果たす話。タイトルの『RGB』は小説内ではそれぞれの登場人物の名前代わりに使われている。イニシャルともとれるが、そこまでの説明は特にない。また、光の三原色の赤・緑・青になぞらえているものと考えられる。歌のタイトルは『三原色』となっているのはここからきている。

いざ歌詞の方へと言いたいところだが、この歌の歌詞は原作の特定の景色を表現している部分はあまりない。あるとすれば『架かる七色の橋』で虹の表現をした事と、最後の方に朝日が出てきて徹夜で遊んだ事ぐらい。但し、歌詞全体の流れとしては、子供の頃遊んでいた事、いつの間にか疎遠になった事、再会するに至った事という様にこの原作の大まかな流れはきちんと押さえている。そして待ち合わせまでの高揚感、再会して一瞬にして当時の記憶が蘇る様子、そしてあっと言う間に時間が過ぎ去って朝まで過ごした事もまた原作の流れを踏襲している。

原作では個々の思い出や再会の際の話などこと細かに描かれているが、それは歌詞には一切出てこない。でもこの歌詞で幼馴染の再会のエピソードだという事はしっかり伝わってくる。Ayaseさんが原作をあまり描きすぎないのは今までにも取っている手法で、それは今回も健在だ。また、今回の原作の話は、誰にも経験しうる話なだけに、聴き手のそれぞれのイメージに委ねているのだとも思う。但し、MVの方ではしっかりと原作のエピソードになぞらえて、幼少時の思い出、再会するまでのシーン、再会してから時を忘れて朝まで遊ぶシーンと表現されているので、是非原作を読みながら楽しんで欲しい。そして、RGBと3色に振り分けられた3人が重なり合う事で白になる表現は歌詞にも存在し、この歌のタイトルの『三原色』そのものである。MVの最後も同様に締めくくられている。

この曲が最初に公開された時は、ahamoのCM開始に合わせてで、その際は2番の部分がカットされていた。そして後にフルバージョンが公開された時にビックリ。2番の通称『ikurap』の部分は、ikuraちゃんがラップで物凄い速さで歌っている。ちょうどここは3人が再会して話に花を咲かせている部分だ。疎遠になっていても一瞬にして時が戻り、時が経つのも忘れるぐらいあっという間に時間が過ぎる様を表しているものと私は解釈している。

私には幼馴染と再会というシチュエーションは今までも今後もないけれど、同窓会の際には似たような体験をした。学校を卒業してから一度も会っていなくても、一瞬にしてその当時に戻れる、何か不思議な魔法にでもかかった気分だった。きっとそれぞれの人が似たような経験をするであろうことを想定して、この曲の歌詞は具体的な表現をしなかったのだと思う。

人によってはこれからこういう経験をする人もいるだろうし、もうこういう思い出を作れない人もいるだろうし、機会に恵まれても参加したくない人もいるだろうし、それぞれの立場でいろいろな思いに浸れる名曲だと思う。

#YOASOBI #三原色

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