YOASOBIの『優しい彗星』について

今日はYOASOBIの『優しい彗星』についての考察。この曲は、『怪物』と同様、アニメ『BEASTARS』第二期のEDテーマとしてに書き下ろされたもの。原作者の板垣巴瑠先生が『獅子座流星群のままに』として原作より抜粋したエピソードより作成されたもの。

以下、エピソードの概略。裏市の犯罪組織シシ組のボスに迎えられていたアカシカのルイは、食殺犯を突き止め決闘をする事となったレゴシにそれを見届けてもらうよう懇願され、組織から足を洗い見届ける事を決意する。一方、組を抜ける事を告げられた部下のライオンのイブキは、ルイの覚悟の程を見ようと試みる。話はイブキが運転する車の助手席にルイを乗せて走る所から始まる。

1番の歌詞はイブキ目線で始まる。これから起こる事は、どんな決着になろうとボスであるルイとの別れを意味する。助手席に座るルイを見ながら、彼との思い出を巡らせている。ライオンである自分は虚勢を張って自分を強く見せて生きてきた。そんな中現れたルイの眼差しは真の強さであり、そんなルイの為に生きる事がいつしかイブキには生きがいとなっていた。『深い深い暗闇の中で』からの歌詞で、そんな生活がイブキの幸せであり、彼を暗闇からも救ってくれた事を窺わせる。

次のシーンからはルイの視点に変わる。『わずかな光を捉えて輝いたのは』からのシーンは、トンネルに入り暗闇で目の利かないルイがイブキの流れ落ちる涙を見たシーンだ。『不器用な命』とは、心酔しているルイが組を抜ける事に対して、イブキは組のナンバー2であるが故に許す事はできず、落とし前をつけようとしているという事だろう。『強く大きな体に秘めた優しさも』からは、ルイがこの期に及んで間近で見つめたイブキについて感じた事。イブキがルイを想うように、ルイもまたイブキがかけがえのない存在となっていたという事。

次の瞬間起こる『無常に響く銃声』とは誰のものなのか?ルイが組を抜けるには、ルイかイブキを殺すか、イブキがルイを食べて阻止するかの選択しかない。ルイは銃をイブキに向けてはいたものの、引き金を引く事はできなかった。ルイに襲い掛かるイブキ。しかしこの時に『無常に響く銃声』が突如鳴る。銃を撃ったのは同じくシシ組の配下のフリー。実は予めイブキがフリーに、もしも自分がボスを襲いそうになったら撃ってくれと頼んであったのだ。最初からイブキはルイの命を奪うつもりなどなかったのだ。先に出た『不器用な命』はここにもかかっている。

『祈りはただ届かずに消えた』とは、ルイの気持ち。自分がイブキを殺せない以上、イブキが自分を食べてくれと願っていた。イブキの死でそれが叶わなかった事を意味する。最後の歌詞は、自分の手の中で動かなくなったイブキの亡骸に触れるルイの様子である。切ない幕切れと共にこのシーンも歌も完結する。

この曲のMVは、原作と歌詞からくるこのエピソードのシーンを見事に再現している。特にラストのイブキが亡くなるシーンは涙なくしては見れない。あと、この曲の歌詞に『類のない日々』や『別れの息吹』のように、登場人物のルイとイブキが歌詞に織り込まれているのはなかなかお洒落である。

#YOASOBI #優しい彗星

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