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転生したら「女神様」のパシりだった件 その十一

姫草の公表していたプロフィールは、ほとんど嘘だった。

投下された過去が、写真付きで拡散された。

ひどいいじめっ子で素行不良。地元の高校は半年で中退。

夜業を転々としながら、怪しい勧誘や販売を伴う会社にいて、現在に至る。

そこはいい。

嘘をついていて申し訳ないと謝罪すれば構わない。

問題は、姫草の両親が、当時、弱小カルトの信者で、生活のリソースのほとんどを活動につぎ込んでいたらしい。結果、家庭は機能せず、そのせいで姫草が不良化した事や、現在の「ビジネス」のやり口を学んだと詳しく書かれていた所だった。

この辺りは虚実織り混ぜてあるらしかった。

パソコンの画面を見て、姫草は最初、真っ白な顔をしていたが、数秒後は真っ赤になって怒り出した。

「わ、わたしは被害者なのよっ!

毒親のせいで貧乏で、まともな生活もさせてもらえずに!

それを『やり方を学んだ』なんて!」


最初は法的処置も辞さないと息巻いて書き込みしていた姫草だが、証拠として添えられた写真は雄弁だった。

ボロボロの服装で遠足に参加している、小学生の姫草。

イキッて仲間と腕組みしている、中学生の姫草。

キャスター付きのカートを引っ張って、ゴミみたいな日用品を売り歩く姫草。

華やかな夜嬢の中、ひっそりと目立たず座っている、キャバ嬢の姫草。


それだけではなく、戸籍の一部や、通信簿の一部までアップされている。


パソコンの画面をスクロールさせていると、佐伯が聞いた。

「史生さんは知ってた?」

「学歴や職歴の詐称は知ってました。けれど、ここまでは。これ、調べるとしても、すごくお金がかかるだろうし」



しかし、こうした過去が姫草の行動原理なのだろう。

金持ちになり、ブランドで飾り、取り巻きを従えて、その姿を見せたかったのだ。

役割を果たさない両親に、冷たい学友に、無関心な同僚に。


早くも誰かが、まとめサイトを作りアップしている。

SNSの発言は、かなり昔の物まで掘り起こされ、少しでも矛盾があると面白可笑しく注釈がつけられている。

「書き込みは複数。文章が上手い人間を雇ってますね」

クセや、同じ言葉の多用など、文章にはわりと人間性が出る。

佐伯は画面を見ながら言った。

「俺もそう思う。夜中に一斉に始めてる所なんかも、プロのやり口っぽい」

佐伯はこうした事態に慣れているようだ。

どうなるのか見ていると、姫草が法的処置云々をブログに書いた後、やはり夜中に、追加で新しい情報が書き込まれ始めた。

最初の頃より踏み込んだ、あるいはきわどい写真まで晒された。


プライベートで撮られたらしい、姫草の若い頃の下着姿、ラブレター、職歴の詳細だった。


大きなニュースもなくて、みんな暇だったのだろう。

この話題に飛び付いた。


炎上は続いた。

リアルにまで。


続く



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