飛先の歩交換のメリット(角換わりと相掛かりのちがい)

こんにちは、みずたまです。

今回は飛先の歩を交換することの得について、相掛かりの将棋と角換わりの将棋のちがいを題材にして考えてみます。この比較を通して、「飛先の歩を交換することが攻め筋の幅をひろげている」ということをわかっていただければと思います。(級位者を対象として想定します。)


●序論●

まず、居飛車の戦型は大まかに4つに分けられます。矢倉、角換わり、相掛かり、横歩取りですね。

これらの分類法は様々ですが、私は(1)飛先の歩を交換する/しない、(2)角を交換する/しないの4パターンに分けて考えるといいよと説明することが多いです。

つまり、飛先の歩交換も角交換もしないのが矢倉の将棋。

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飛先の歩を交換し、角を交換しないのが相掛かりの将棋。

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角を交換して歩は交換しないのが角換わりの将棋。

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最後に、歩交換も角交換もするのが横歩取りの将棋。厳密には下に示した局面では角交換はしていないのですが、お互いに角がぶつかり合っているのでいつ交換になってもおかしくないという意味で広義に交換しうると見ます。

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そういう意味では相掛かりの将棋も同じく角交換している将棋になるのですが、便宜上このように分けるときれいなのでこうしておきましょう。実際のところ、相掛かりでも角交換は頻繁に行われます。


●本論●

前置きが長くなりました。今回は角換わりと相掛かりの将棋を比較するのでしたね。この二つの戦型の大きな違いは飛先の歩を交換するかどうか。

まずは角換わりの将棋を見てみます。今回は腰掛け銀の将棋を選びました。


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手なりですすめた図ですが、ここで先手から攻め筋をみつけるのが大変なのではないでしょうか。今回の図では▲45歩と4筋の位をとってゆっくり指す展開にしているせいでもあるのですが、ここからの先手の構想としては▲46角(図)と打って▲47金~▲35歩の歩交換を目指すのが一番早いでしょうか。▲47金は▲35歩△同歩▲同角としたときに桂頭を守っています。

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どうやら角換わりには、一歩を交換するのにも難儀する展開があるようですね。

似た局面を相掛かりの将棋としてみてみます。今回はおたがいの2筋、8筋の歩が交換されているかどうかのみが違います。

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ここでは先手からいくつかのスムーズな攻め筋が見えるのではないでしょうか。まずは▲75歩(図)からの桂頭攻め。

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△75同歩には▲74歩(図)で攻めが続きます。

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この▲74歩という手は先手の25歩がワープしてきたものであることに注意しておきましょう。飛先の歩交換の効果その1として、「歩を手持ちにして好きなところで使うことができる」ということがありましたね。


それから、▲46角(図)と打って後手の64歩を狙う指し方もできます。

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後手は△63金として歩を守りますが、そこで盤面全体を広く見て▲15歩(図)という手が好手。

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△15同歩には▲13歩(図)が継続手。この歩も▲25歩が移動してきたものでした。

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後手も△13同香くらいのものですが、つづいて▲25桂(図)と両取りをかければ端攻めが成功しています。

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さりげなく気づいておきたいのが、この▲25桂という手。飛先の歩を交換していなければ、この2五の地点には自分の歩がいるので桂がはねられないところでした。これは飛先の歩交換のメリットその2「歩がいた地点に自分の駒が進める」でした。棒銀の攻めをする時なら▲25銀とできるわけですね。


飛先の歩交換のメリットその3としては、▲25歩がいなくなることで飛の利きが敵陣に直射するというものがありますが、この点は確認するまでもないでしょう。


●まとめ●

・相居飛車の将棋でよく出てくる格言「飛車先の歩交換3つの得あり」

 歩を手持ちにする、駒がスムーズに進める、飛の利きが敵陣に直射する

・角換わりの将棋と相掛かりの将棋は、展開によっては似た陣形になることがある。概して、飛先の歩交換をしていることによって攻撃のパターンが増えていることに気を付けよう。

(※厳密には、飛先の歩交換によって下図のような局面で△85桂と逃げる手も生じているので必ずしも攻めたほうが勝つわけではないことに注意。)

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