project_三河材おもちゃ
この記事では、「三河材の普及を目的とした木育プロジェクト」と題した地域材を用いたおもちゃづくりプロジェクトについて紹介していきたいと思います。
このプロジェクトは豊橋市が募集する「若者が企画し実施する、地域課題を解決する事業」を支援する豊橋市市民協働推進補助金(わかば補助金)を活用し、水谷研究室学生が主体となって2019年度、2020年度と取り組んできたプロジェクトです。
1.プロジェクトの発足
豊橋技術科学大学水谷研究室では、地域材の利用促進を目的とした椅子作
りプロジェクトを進めてきました。そこで私たちプロジェクトチームは、より多くの人に地域材の良さをプロダクトの製作・配布を通じて伝えていこうという想いから、この椅子づくりプロジェクトから派生し、2 0 1 8 年から学生主体で豊橋オリジナルの木製おもちゃを開発する「三河材の普及を目的とした木育プロジェクト」を発足しました。
2.プロジェクトの目的
本プロジェクトの目的は以下の3つにまとめられます。
①地域材の今を知る
日本の国産材・地域材が抱える問題を把握してもらうこと
②ものづくり技術の普及
レーザー加工機などのデジタル工作機を用いたデジタルなモノづくり技術
の普及により、ものづくりにおける関係人口の増加を図ること
③木育(※1)の推進
おもちゃを実際に手に取り、触れることで、幼少の頃から地域材と触れ合
う機会を創出すること
※1 木育
幼少期から木材との関わりを体験することで、豊かなくらしや社会、森づくりに貢献する市民の育成をめざす活動
おもちゃというプロダクトを選択した理由については、より多く、幅広い年代の人の興味を引くことができるプロダクトは何か?と考えたうえで、親と子、祖父と孫といった、より幅広い年代が注目する可能性が高い「おもちゃ」というプロダクトを選択し、製作・配布活動を行いました。
3.日本の木材利用の現状
日本は国土の2/3が山林地帯である森林国ですが、近年は輸入木材の増加や林業の採算性の低下を背景に、国内の木材自給率は低迷していました。
(直近9年は増加傾向にあり、建築分野を中心とし、国産材を見直す流れが生まれ、37%程度まで回復:林野庁 木材供給量及び木材自給率の推移)
国産材利用の減少が続くと、採算が取れず、森に人の手が行き届かないため、健やかであったはず森は、みるみるうちに荒廃していってしまいます。 日本の美しい森を守るためには、より多くの人がこの問題を意識し、国産材の魅力に触れ、国産材利用へのきっかけを生み出すことが重要です。
4.奥三河で生産される「三河材」
愛知県の三河地方、特に長野県や静岡県との県境がある奥三河は愛知県で最も森林の多いところです。そこで育った三河杉は光沢のある赤味と美しい木目から高級材として、住宅建具に用いられ、三河桧は狂いの少ないことが特徴で建物の柱等の高品質な構造材として用いられています。
本プロジェクトで製作したおもちゃの原材料には三河桧を使用しており、特徴であるさわやかな香りや、その耐水性からお風呂や水場などでも遊ぶことができます。
5.おもちゃができるまで
ワークフロー
本プロジェクトにおけるおもちゃの製作では、原材料である三河桧を株式会社杉生様に製材(650×120×7mm)していただき、材料のサイズに合わせた動物のイラストデータを作成した後、レーザー加工機を用いて切り出しを行いました。
切り出しでは、市内にある最新のデジタル工作機械を集め、「ものづくりの場」を提供する「メイカーズ・ラボとよはし」を使用しました。
「メイカーズラボとよはし」はものづくり初心者でもラボツアー(見学会)やものづくり講座、ワークショップを通して0から最新のものづくりを学べる施設です。
また、イラストデータ作成の際には、市内に位置するのんほいパークや自然史博物館の方々にアドバイスをいただきながらデータ作りを行うことで、両施設に由来する動物や恐竜の特徴を捉えたかわいらしいイラストを作成することができました。
完成したおもちゃ(動物シリーズ(上)及び恐竜シリーズ(下))
6.おもちゃの配布
完成したおもちゃは市内の施設をお借りしながら、2019年度、2020年度の2年間を通して、総勢200名程度の市民の方に無料で配布を行いました。
展示スペースでは、プロジェクトの背景や目的を示した展示パネルの展示や内容にまつわるアンケート調査を行い、プロジェクトの目的を市民の方にお伝えしたうえで配布をすることができたと感じています。
左:2020年度の配布会場(道の駅とよはし) 右:配布の様子
7.まとめ
この記事では水谷研究室の学生が取り組んだ三河材おもちゃのプロジェクトについてお話をさせていただきました。
このプロジェクトでは、材料の発注や費用の管理、加工データ作成、そして配布といった、全ての工程を学生のみで行う必要があったため、いつもの研究活動とはまた違った計画性や行動力が求められる、プロジェクトを遂行する上でのノウハウを学ぶ大変貴重な機会であったと感じています。
水谷研究室ではこうした学生を主体とする産官学が連携するプロジェクトを継続して行い、地域の方々と共に「学びの場」を得れればなと考えております。
最後となりますが、この記事をお読みいただいた方々、また、配布したおもちゃを受け取った子供たちがこのプロジェクトを一つのきっかけとし、ものづくりや三河材に興味を持ってくれることを心から願っております。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
--------------------------------------------------------------------------------------三河材の普及を目的とした木育プロジェクト
※本プロジェクトは若葉補助金事業において採択された水谷研究室学生が構成する学生団体【三河材の普及を目的とした木育プロジェクトチーム】によって行われたものです。
協力
補助金支援:豊橋市 市民協働推進課
材料発注:株式会社 杉生
イラストデータ作成へのアドバイス:のんほいパーク、自然史博物館
材の加工:メイカーズ・ラボ とよはし
配布会場提供:豊橋市保健所・保健センター ほいっぷ、道の駅とよはし
アピタ向山店、豊橋市こども未来館 ここにこ
記事編集者
水谷研究室 修士2年
三河材の普及を目的と木育プロジェクトプロジェクトリーダー
徳原 崚人
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