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2つの没入体験型イマーシブアートを比較してみる

この夏、たまたま2つの没入体験型イマーシブアートを見に行ってきました。
イマーシブアートについて思ったことなどの覚え書きです。

Immersive museum

ファン・ゴッホ ー僕には世界がこう見えるー

こういった演出が好きな方には申し訳ないのですが、私はそもそもオリジナルの作品を再解釈させるような演出はあまり好きではありません。
例えば、もとの絵画は作者の意図した構図があるはずですがそれらを再編集して見せることはこの映像を編集した人の解釈が色濃く出てしまうと思いますし
映像として次々見え方が変わってしまうことで絵画を前にして少し離れて見てみたりという鑑賞者側の自由も少ない。
それに大きな音でBGMが鳴っているのでそのBGMの印象も鑑賞者の感じ方に大きく影響するでしょう。

それでもこの2つのアートは話題性がありチケットも2500円程度と通常の絵画展や映画チケットより高額にも関わらず多くの人が訪れています。
なぜこういった展示が流行るのか?同時に開催されている2つの展示の違いなど(あくまで個人の意見ですが)記していきたいと思います。

なぜ没入体験型ミュージアムが流行るのか?

私が考えた理由は下記です。

・鑑賞より解説を好む人が増えている
・コロナ禍でライブやフェスなど見知らぬ人と感動を共有する機会が減っている
・インスタグラム映えな写真が撮れる

特に「鑑賞」視点が限定されるのが没入体験型型アートでは気になりますが
最近は各自が鑑賞して感想を言い合うより、解説を読む方が好きな人が増えているのではないかと思いました。
youtubeもInstagramも解説系アカウントで溢れており、正しい捉え方や解釈というものが確立されている印象を受けます。
本来は作者の意図や作品の背景は最低限の解説を聞きつつ鑑賞者が色々と考えたり見方を変えたりという余白があるはずですが、正解の見方を提供されることに抵抗が少ないのではないでしょうか。

2つの展示の違いとは?

基本的にこのような展示には疑問を持っていますが、この2つの展示のうちどちらが好きかと言われれば「ゴッホ」の方が好きでした。理由は3つあります。

・没入感が強い空間の作り方

immersiv museumの方は大空間の4面+床がスクリーンになっており、その中に人が座っているような形でした。
一方ファン・ゴッホの方は4面+床と追加して、4本の柱のようなものがあり、そこにも映像が写っています。
来場者が多く入っていることを考慮すれば、後者の方が鑑賞者が見えるスクリーンの面積が増えます。それによってより見やすく没入感も感じやすいです。

immersive museum 空間は人で埋め尽くされているので単純に前のスクリーンのみをみる感じ
ファン・ゴッホ 中にある柱にも映像が投影されている

・ただの作品の解説を超えた映像作者の表現が感じられる

immersive museumは印象派の画家たちの作品をトピックに合わせて解説的に流していました。
例えば、モネは同じモチーフを違う日、違う時間で何度も描いたことで有名ですがそれを次々流すことで表現しています。
一方でファン・ゴッホはゴッホの生涯を順に追う中で、このような景色を見ていたのではないかという作者の仮説の元、
ゴッホの作品どうしを切り貼りしたような映像がでてきたりします。
単に並べるのではなく映像を作った方の表現を感じられるので、名作を使って集客するイベントではなく、この試み自体を新しい作品として捉えることができます。

immersive museumは会場内の写真・動画撮影がOKでしたが、ゴッホは写真のみでした。
ゴッホの方はイマーシブインスタレーションで有名な方が映像を作成されているようなので、映像作品としても大切にされている感じがしました。

immersive museumは会場内の動画や写真撮影がOKなので、インスタレーションの中で記念撮影している人が多かったですが、
ゴッホの方は別で写真撮影スペースがあり、映像は皆真面目に見ている印象でした。空間の作り方もかなり考え方が違うのかなという印象がありました。

写真撮影ができるスペース

・きちんと解説がある

immersive museumは入口で各シーンの説明が記載されたリーフレットをもらえます。ただ、会場は暗く映像も投影されているのでよく見えません。
ファン・ゴッホの方はQRを読み込むことで解説音声を聴くことができます。
それに、映像を見た後にゴッホの手紙を元にゴッホの生涯を説明する展示画されているのでより作品の理解を深めることができます。
そう言った意味でも元の作品へのリスペクトが感じられます。

スマホで聞ける音声ガイド

美術展にはあまり来ない層も楽しめる没入体験型アートはもしかしたら今後もっと増えてくるのかもしれませんね。
新しい美術鑑賞のスタイルとして確立していくのか引き続き見ていきたいと思います。

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