2023年7月の「コロナ」(COVID-19)の状況をどう解釈するか

コロナ(COVID-19)について、現状がよくわからないと感じます(2023年7月10日現在)。そこで、この現状の解釈について、気付いたことを以下にメモします。この推論のどこかで間違っていれば、ご指摘をお願いします(宛先:twitter @y_mizuno)。


2023年5月8日にCOVID-19が5類に移行して以来、統計の発表が止まってしまって、数字がわからなくなりました。

実は私は1年前に、統計数字の連続性をチェックしてから、サンプリングに切り替えるべきだと主張していました。でも誰も気にしなかったような気が...。(残念)
https://togetter.com/li/2156350

しかし唯一、モデルナ社だけが、私と同じ判断をしていたようです。さすがでございます。モデルナ社だけが、1類から5類への切り替えの前後で、サンプリングの連続性がわかる形で、データを公開しています。

まず、それをご参照下さい。
https://moderna-epi-report.jp/



ここで、このページ内の「タブ」を切り替えて「新型コロナ・季節性インフルエンザ」を見てください。すると次の図のように、感染者数について、コロナの推移と、インフルエンザの推移を、比較することが出来ます.



ここで、1年前の2022年7月と、今とで、季節性インフルエンザ(青色)を比較します。次に、新型コロナ(橙色)を比較します。すると次の1)〜4)がわかります。従って、後半の推論A)〜C)が成り立つと思います。

1)インフルは去年より増えている。
2)コロナは増加しているが、増加率は大きく低下。
3)つまりコロナ感染は増えているが増え方は、以前より緩慢である。他方で、コロナのガードは以前より甘くなり、その結果、コロナもインフルも、同時に増えていることが分かる。
そこで、
4)この状況では、少し「注意を元に戻せば」、感染が減少に向かう可能性がある。

しかし。
A)しかし今の雰囲気では、「注意を元に戻す」ことは無理あるいは非常に困難。
B)従って、このままコロナ感染は増え続ける可能性が高い。
C)しかし増加もいつかは止まる。どこで止まるか、というと….(後述)。


この、どこで止まるか、という「後述」の推論を、以下に書きます。私の(感染症の素人としての)見方では、以下の通りです。

まず感染症の数理モデルで標準的な、SIRモデルの方程式を考えます。ここで、S = S(t) は非感染者数、I = I(t) は感染者数、R = R(t) は回復者数、t は時刻、βは感染確率、γは回復率とします。(SIRモデルの方程式そのものの意味の解説は、検索してください。例えばこの解説。)感染症の数理疫学のSIRモデルの方程式は、次のように書けることが知られています。

この第2式を、次のように変形します。

ここで

は実効再生産数です。

そこで、現状の非感染者数をNとして、Nをその(1-p)倍に減らして、感染の拡大を止められたとします。また、1人が何人に移すかを示す「基本再生産数」で、元々の感染が広がる確率βに比べて、みんなが注意して下げられる確率をβ(1-x)とします。
すると、実効再生産数の式は次のように書き換えられることが分かります。


そこで、次に、必要なpとxを求めます(あるいは推定します)。

まず、この場合の流行を止めるための条件は、微分係数が負つまり
        


となることが分かります。ここで、

 
の部分は基本再生産数です。この値は、現状において、


くらいだとします。(なぜなら、新型コロナ感染症の発生当初は R0 = 2.5くらいでしたが、変異株の出現のたびに何度も値が上がったため、現状で近似的に 仮に R0 〜 4 程度だとします。)

すると、流行を抑えられる条件は、


つまり、


となります。

仮に何もしない時のβに比べて、現在は半分くらいになっていると仮定します。すると、(1-x) = 0.5ですから、
        (1-p) < 0.5 
となります。つまり、pが半分以上(つまり残りの人が半分以上、感染する)とすれば、収束に向かう、と言う計算結果が得られます。

つまり、コロナ流行はまだまだ続く。現状での非感染者数が半数になるのは、まだまだ時間がかかる、ということのような気がします。

以上です。

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