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絵を描き始めて1年半の間にやってきた事


はじめに

絵を描き始めて早いもので1年半が経ちました。
そこで私がこれまでやってきた事や心掛けてきた事を自分への確認も兼ねてまとめていきます。
学生時代はクラスで一番下手なレベルで絵心が乏しく絵を描く事にコンプレックスだらけだった私の見解をよろしければご覧ください。


1.1枚のイラストに時間をかける

この記事を読んでいる99%以上の絵描きさんは『さいとうなおき先生』の3ヵ月上達法についてご存じだと思います。
1枚の絵を全力を描き、問題点を洗い出し、その問題点を潰すための練習をするというサイクルを続けていくという練習法です。
私もこの練習法を実践し続けました。そこで実感したのが1枚の絵に時間をかける大切さです。

2021/07/07に初めて完成させたイラスト

今見ると笑ってしまうぐらい下手くそですが、このイラストでも3日かけて描きました。
形もうまく捉えられず色遣いも塗り方も全くわかりませんでしたが、お手本をじっくり見て足りない画力を振り絞ってどうにかこうにか描き上げました。
わかっていても形にならず、どう頑張っても描けなかった悔しさは今でも覚えています。

その後も何枚も描いている内に気づいたのはラフを2回描く重要性でした。
真っ白な画面から描いたラフよりも、そのラフを参考にしてより丁寧にもう一度ラフを描くことです。
雑な線では潰れていたところもしっかりと描き、線画を描いているつもりで2回目のラフを描く事で絵が鮮明になりました。
下書きの作業を2回繰り返すことでおのずと1枚にかかる時間が長くなってしまいますが、絵のクオリティアップには欠かせないと実感しました。

最初に描いたラフ
ラフを元に線をきれいにしたラフ2(通称:下書き)
下書きを元に線画+着色で完成


2.ポモドーロ・テクニックを活用する

ポモドーロ・テクニックとは「25分の作業+5分の休憩」を1セットとしてそのセットを繰り返すことです。
私は集中力を持続させることが難しく、このポモドーロ・テクニックには非常に助けられています。

このテクニックを初めて知った時には「いちいち時間を計るのはめんどくさいなぁ…」と思っていたのですが、今ではアプリなどが充実しているため簡単にスマホでこのポモドーロ・テクニックを始めることができました。
『ポモドーロタイマー』と検索すればすぐに引っかかると思います。
私もこれを活用し始めてからまだ2か月ほどですが明らかに作業ペースが上がっているのを実感しています。
そのためかこの記事を書いている時も活用しているほどです。

やり始めてみると25分というのは思ったより短く、自分の作業スピードを計れるのも副産物だと思っています。
しかし何より大事なのは作業の後にある5分間の休憩にあるというのが私の持論です。
この5分間は目と脳を休ませることに集中した方が次の25分の作業効率がアップしました。
5分間を越えて休憩したりSNSを眺めてしまうと休めるはずだった目や脳が次の作業に切り替わらないことが多いです。
私も不意にSNSを眺めてしまって時間を無駄にしてしまったことがあるため、今後も気を付けたいところです。

休憩の間に水分補給やトイレを済ませたり、糖分補給をするのが理想的ですね。
私のおススメは休憩の5分間じっと目を閉じて瞑想することです。
何もしないで目を閉じていると5分間というのは思ったより長く、休憩を長く取れた気分になれました。


3.1日30体以上のクロッキーをしていた

していた』なので過去形です。今はこれほど多くやっておりません。

絵を描き始めて何もかもわからない私はすがるようにクロッキーを始めました。
人体モデルを参考に次々に速写していくことでお馴染みの練習法です。

私は最初、90秒で一体の人体モデルを描く『90秒ドローイング』に手を付けました。
ですが当時の私は90秒あっても人体を描く事が全然できませんでした。
90秒あって出来上がるのは奇怪な線の塊でした。


クロッキーを始めたばかりの頃の当時の絵
2021.08.16

90秒では足りないと考え、1つ描き上げるまでは何秒使ってもいいとクロッキーのやり方を変更しました。(長くても5分以内で完成させる)
人体1つ描くのに時間をかけるようにしましたが、それでも目の前のモデルの形を追うのがやっとで線の意味を全く理解できていませんでした。
時間をかけてもモデルに寄せることができず絶望しましたが、始めたばかりだからしょうがないと自分に言い聞かせてとにかく続けました。

その時、私に言い聞かせていた言葉は『引いた線の長さで地球を一周させる』というものでした。
これまで絵を描いたことのない私が引いた線の長さなど微々たるもので、とにかく数をこなさなければならないと考えました。
描けないのなら描いて覚えるしかないと毎日30体以上のクロッキーをしていました。


しかし、半年以上クロッキーを毎日続けていた時にふと気づきます。
「あれ?これはただ漫然とやっているだけじゃないか?」と。
当時はクロッキーでの成長を感じれず、行き詰まりを感じていたんだと思います。


毎日クロッキーをしていた最終日
2022.3.31

流石に始めた当初と比べれば成長は見られますがそれでもまだ人体をうまく捉えられていません。
このままダラダラと続けても効果は薄いと感じ、この日を最後に毎日やみくもにクロッキーをすることを止めました。

「毎日クロッキーをすることに意味がないのか?」と問われればそうではなく、続けていくうちに多少ですが人体の把握ができるようになり、白紙に線を引く恐怖感が薄れたのが一番大きな点でした。

私は絵を描き始めた当初は白紙に線を引くことが怖く、動悸を起こしてしまうほど絵に対して恐怖心とトラウマを抱えていました。
それが払拭できたのは何より大きな収穫です。


では、今はどうクロッキーと向き合っているのかと言いますと、前述のポモドーロ・テクニックを始める最初の25分でウォーミングアップとして活用しています。

久しぶりに何気なくクロッキーをした時に感じたのは物の見え方の変化でした。
当時は人体の外枠でしか捉えられなかったものが、今では人体を簡略化した立体として捉えられるようになりつつあります。
簡略化を覚えたことで、今では90秒で一つの人体を描き終えられるようになりました。
これは漫然とクロッキーを続けていた状態から一度離れたことで得られたものだと思っています。

クロッキーは確認作業として考える

絵を描いているとどうしても人体のわからない部分が出てきました。
そんな時にクロッキーでわからない部位を注視しながら行うと何かが得られる時があります。
アレもコレもと欲張るより「今日は肩回りを中心に確認しよう」と考えた方が効果が高いかもしれません。


4.月に1度、完全模写を行った

何も見ないで絵を描くより参考にするイラストがあった方が良い絵が描けるのはご存じだと思います。
素敵なイラストを参考にする中で好きな絵描きさんが出てくると思いますが、私はその好きな絵描きさんのイラストを線から色、背景まで全て模写をすることを行いました。

クロッキーもままならない私が模写をするのはとてもハードルが高く、どうにか完成させても参考のイラストとの仕上がりの違いに打ちひしがれました。
「模写でもこんなに下手なんてやる意味あるのかな…」と気落ちしましたが何かいい手はないのかと考えました。

そこで思いついたのが参考のイラストをキャンパスに読み込み、同じサイズのキャンパスを作って模写をすることでした。
慣れない内は頭の輪郭だけをトレスしてからスタートしました。
すると、何もないところから始めるよりも基準があることで模写のしやすさが格段に変わりました。

参考のイラストを舐めるように見て、「キャンパスの左下に足がきているからここに線がないとおかしい」などと自分の模写した絵と見比べながら空間を埋めるように地道に進めました。

その後、線が描きあがったら見本と同じように色を塗りました。
これも最初は参考のイラストからスポイトで色を取っていました。
完成されたイラストは色調補正などがかけられているため、鵜呑みにするのは良くないですが参考にはなるはずです。
慣れてきたら自分で色を作って見本の色と近づけるように試行錯誤もしました。

色が決まって下塗りを終えたら次は参考のイラストを元に同じように塗りました。
私が選んだイラストはとても緻密に描かれたイラストで何がどうなってるのかわかりませんでしたが、それでも見よう見まねで塗りました。
力技で模写の絵を完成させた最後にやったのは元のイラストの不透明度を下げて上に重ねることです。
そうすると自分がどこを理解できていないのか一発でわかるので次の学びに繋がりました。

また、個人的に完全模写をする上で一番重要なことは『参考にする絵描きさんは1人に絞る』ことでした。
美麗なイラストを模写したところでそのイラストに散りばめられた数えられないほどの技術を一度に吸収することは到底無理でした。
ですが1人に絞った絵描きさんのイラストを何度も何度も模写をすることで規則性のようなものを発見できました。
その発見した技術を自分の絵に取り入れてみることで技術の向上に繋がりました。


と、ここまで偉そうに言いましたが私も最近はこの完全模写を行えていないので、近いうちにまた実行したいですね。
完全模写はかなりの労力を使いますが効果は高いと思っています。


5.自分の絵柄を持たない

絵を描いていく上で感じたのは初心者の自分は絵柄なんて持ったところで意味がないということでした。
技術が拙いうちは自分の経験則など全く参考にならないので、常に自分を疑うことが大切だと感じました。

前述に『参考にする絵描きさんを1人に絞る』と言ったようにその絵描きさんの絵柄を完全にコピーする気持ちで私は描きました。
自分の絵の中の常識より圧倒的に上手な絵描きさんのイラストの方が遥かに情報が詰まっています。
絵を描いていてわからない部分が出てきたらその絵描きさんのイラストを参考に真似てみました。

しかし、どんなに真似ても同じ絵柄になることはないので、参考にした絵描きさんとのズレが自分の絵柄になるのだと思います。
絵柄は作るものではなく、なっていくものだと考えています。

とにかく自分の中の常識を捨てることを意識しました。
そうすれば新たな発見を受け入れるのも難しくありませんでした。
固定概念は敵』ぐらいの気持ちで今後も絵を描き続けていきます。


6.上手くなったら描きたいではなく今描く

「上手くなったらこういう絵を描きたいなぁ…」という頭の中で構想を練っている絵があると思います。
私も当然ありますし、実現させた絵もありました。


ぼんやりと描きたいと思っていた絵を無理やり捻出しました
2022.02.21(絵を描き始めて7か月半の頃)

上手くなったら描きたいという絵はもう既に構想ができているはずなのでそれを強引に描きました。
『今の技術では表現できないから上手くなったら描きたい』となっているのは、裏を返せば『強引に描けば足りないものが見えてくるのではないか』と考えました。
私は上記の絵を描き上げた時に実感したのは背景のコントラストの弱さとキャラクターが感じている力量の差をうまく表現できていないことでした。
もっと構図の工夫したりもっと背景を荒廃させたりと改善の余地はいくつも出てきました。

描きたいと思った絵は1度描いたら2度と描けない訳ではないので、1年後にリメイクするのもいいかもしれません。
その上、描きたいと思っている絵は仕上げるならクオリティを高くしたいという気持ちが出てくるので1つの上達法になると思っています。

少し話は反れますが、描いたことない構図にどんどん挑戦することも心がけました。
今後の自分の引き出しを増やすのと同時に、描いたことのない構図のため新たな問題点も自然に出てきます。
そこでまた調べることによって新たな発見や技術に気づけました。

また、没にせずに最後まで描き上げる重要性にも気づきました。
上手く描けずに投げだしそうになる時もありますが、そこで折れずに完成までもっていくと次の課題が見つかることが多かったです。
ラフ、下書き、線画、着色と行程が進むごとにつまづきましたが、進めていくと問題に気づけて解決に繋がることもありました。


とにかく重要なのは失敗を恐れず挑戦する心構えだと思っています。
初めて描く構図やキャラクターなのだから上手く描けなくて当然ぐらいの気持ちで挑戦を恐れないことが大事だと自分にも戒めています。


7.月に1度同じキャラを描き続けて成長を確かめる

日々の成長を確かめるにはこの方法が最もわかりやすかったです。
同じキャラを描くということは以前描いた絵の経験が生きているので、よりキャラの掘り下げやブラッシュアップができるだろうとの狙いがありました。

2021.07.07から1年間の月に一度同じキャラを描き続けた記録

描くと決めたキャラを月に1度と限定する必要はないかもしれませんが、私の場合はその月に学んだことを全てぶつけるための機会と考えていました。

描いていく毎にキャラの特徴の出し方や描き方のコツを覚えることができたため、この方法は成果がありました。
その上、「前の月より下手な絵は描けないな」と奮い立たされたのでモチベーションにもなりました。

ふと自信を無くした時も過去の絵を見ればこの時よりは進歩しているという明確な足跡にもなってくれたので、精神的な支えにもなるかもしれません。


8.時には6割ぐらいのクオリティで描く

私は1枚の絵を描く事に毎回毎回120%の力で描き続けました。
今までに描いたことない構図や物や手法を取り入れて前回よりもっと良くなるように試行錯誤を繰り返しました。

しかし、そのため1枚の絵を完成させるのにとても時間がかかってしまうのが悩みでした。
そこで行き着いたのが肩の力を抜いてラクガキをすることでした。

見出しには6割と描きましたが本当は4割以下でもいいかもしれません。
ですが私は力の抜き方が下手でどんなに力を抜いても6割ぐらいまでしか肩の力が抜けませんでした。


ラクガキのメリットは本気絵とは違い新しい要素を盛り込む必要がなく、自分が覚えた技術を確かめる場として活用しました。
本気の1枚絵には1週間以上かかってしまっても、ラクガキなら筆の遅い私でも2日で完成させられました。
息抜きの場でもあり、絵の簡略化を覚える場にもなったので今後も上手に使い分けていきたいです。


9.最後に必要なのはメンタル

長々とこれまでやってきたことを書いてきましたが、結局はメンタルが一番大事だと感じました。

Twitterを見ていれば自分とは比べ物にならないほど綺麗なイラストが滝のように流れてきます。
思ったように描けなくて悩み苦しんだこともあります、今も悩みが絶えません。
時間をかけて描いた絵に対して反応が全然ないことも日常茶飯事です。
今後はAIの発達によりイラストへの価値観が変化していく可能性もあります。
それでも折れずに描き続けられる精神力を持っていたのは幸いでした。

有償依頼を受けることで自らにプレッシャーをかけたのも良かったのかもしれません。
半年前からskebで依頼を受けることを始め、ありがたいことに何件かご依頼を頂けました。
絶対に失敗できない責任感とより良いものにしようというこだわりで一つ成長できたと思います。

ですが、時には綺麗なイラストを見て回っていると食傷気味になることもあります。
そんな時は一度距離を置いて気持ちを整理した方がいいことも学びました。
インプットとアウトプットのバランスが大事だと言われるように、どちらかに偏りすぎないことも私自身も心掛けたいです。


おわりに

ここまでお読みいただきありがとうございました。
私自身まだまだ未熟で学ぶべきことが山のようにあります。
これから先も絵を描いていく上でぶつかる壁もたくさんあると思います。
もしかしたらどこかでポッキリと心が折れる時があるかもしれません。

それでも絵を描く楽しさを知ってしまった以上、これからも絵を描くことがやめられないです。
今後は書籍を読むなどの新たな情報や技術の吸収もしていきたいです。
同人イベントへのサークル参加もする予定なので、またどんどんと新たなチャレンジをしていきます!






蛇足

完全な蛇足です。読まなくていい独り言です。

私が絵を描き始めたきっかけは知人のプロのイラストレーターでした。
その知人は長年プロで活躍しているだけあって技術も筆の速さも並外れていました。

私もその知人に憧れて絵を描く事を始めましたが、最初に描いた絵の通り下手な絵しか描けなくて知人との計り知れない力量の差に絶望しました。
それもそのはずで、私は学生時代クラスで底辺レベルの絵心のなさでした。
授業中ではあまりの絵の下手さから教師からバカにされたことが何度もありました。
その影響で絵に対するトラウマが出来上がり、白紙に線を引くことすら怖くなっていました。

話を戻しまして、全く絵に知識のない私は最初に知人から絵の描き方を教わろうとしました。
しかし、知人の返答は「絵の描き方をどう教えたらいいのかわからない」とのことでした。
聞けば「絵は勢いで描いたらできる」や「適当に描いているだけだよ」と凡人には理解しがたい言葉ばかり出てきました。
私は資料を見なければまともに絵が描けないのですが、知人は資料もなしにスラスラとペンを走らせて絵を描いてしまうので魔法を見ているようでした。

何故資料を見なくても描けるのかと尋ねれば「一度描いたものだからもう覚えてる」や「前に見たからもう見なくても大丈夫」などとやっぱり理解しがたい言葉しか出てきませんでした。
作業の様子を見せてもらった時もざっくりと描いたラフからいきなり線画作業に入って何も見えないところに次々と線を引いていく様は同じ人間とは思えないほどでした。
着色作業に入っても筆のスピードは衰えず、迷いなく次々に塗り進めてあっという間に完成させてしまうプロの業は今でも忘れられません。

当時は「こういった人でなければプロにはなれないのか」と思いましたが、実際はプロの方が資料を良く見るということを知りました。
ラフも着色まで済ませて完成と遜色ないレベルまで仕上げてから線画に入る人も少なくないと知って作業方法は1つではない知らされました。
どうやら知人は少数派であるマジモンの天才だったようです。

天才は自分の感性を言語化できないと聞いたことがあります。
知人も例に洩れず自分の技術を言語化することができませんでした。
ですので凡人の私にできることは、こうして言語化することで自分への確認を含めて誰かの手助けになれたらいいな、と思います。


今回は練習法やメンタル面について主に語りましたが、次の機会があれば小手先の技術面なんかも言語化したいですね。
絵柄の流行り廃りなどもあるので難しいかもしれませんが、自分の勉強も兼ねてもっと知識を蓄えたいと思います。

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