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「写真」の魅力からごちうさのテーマを読み解く

TVアニメ「ご注文はうさぎですか?BLOOM」の放送から、半年余りが経ちました。ごちうさの人気は衰えることなく、各種カフェとのコラボイベントや、ご注文はうさぎですか?展の開催が決定するなど、ブームはますますの盛り上がりを見せています。

ごちうさは非常によく作られた作品です。木組みの街の女の子たちが単に可愛いだけじゃなく、考察もできる深いストーリーには一定の需要があります。

今回は、そんなごちうさのテーマを、「写真」という観点から紐解いていきたいと思います。

簡単に言っちゃうと、ごちうさと写真って似てるよね?っていう話です。ごちうさには二つのテーマがあって、「変化していくもの」と「変わらないもの」という対比構造があるのだけど、その性質が写真と非常によく似てる。

きっかけは、「ごちうさって写真がよく出てくるなあ」と思ったことでした。

たとえばアニメ2期は「写真」が一つのキーアイテムになってます。1羽では写真を撮られるのを嫌がっていたチノちゃんが、驚くべきことに最終羽ではカメラにハマっています。橋本監督と脚本家のふでやすかずゆき氏も、アニメ2期の公式ガイドブックで次のように語っています。

橋本 チノとココアのケンカの話で終わろうという話はあったけど、それだけだと尺が足りないので、もう1エピソード何を足そうかで悩んでいました。半分オリジナルにしようかという話もしていたんですけど、書いてもしっくりこなくて。

ふでやす それで、写真で話が始まったので、写真で終わりたいという話になったんですよね。

劇場版「ご注文はうさぎですか?? ~Dear My Sister~」でも、OPムービーでココアちゃんが今まで撮ってきた写真を振り返りますし、BLOOM(アニメ3期)でも、チノちゃんが高校生組に写真をプレゼントしたり、チノママとココアママのツーショットが登場したりします。

こんなにも写真が出てくるということは、なにか意味があるような気がしてきませんか?

写真は人とつながるツールです。僕のフォロワーさんには写真が好きな人が何人かいて、高い機材を買い、珍しい場所に行って撮影するのを趣味にしています。そういう方の撮る写真はクオリティが高いものですが、そうでない人でも今は気軽に写真が撮れる時代です。

最近はスマホのカメラも性能が良くなってきました。みなさんも、お昼に食べた定食をスマホで撮ってツイッターにアップしたりしますよね?

楽しみを人と共有することで、自分の世界を広げていく。これはまさに「変化するもの」の一つではないでしょうか。

↑ココチノから写真を受け取って嬉そうなモカ姉

また、写真の楽しみは、人とつながるだけではありません。SNSが流行り始めたのはここ数年の出来事ですが、写真の歴史はそれよりもずっと古いです。それこそ僕が生まれた頃はSNSなんてなかったし、高性能なスマホもなければ、パソコンだって普及していなかった。それでも、コンビニで買った使い捨てカメラで日常の風景を撮ることはしていました。

それは誰かとつながりたい、というより、思い出を形に残しておきたいという気持ちがあったからだと思います。

デジタル化が進んだ今、写真を紙という媒体に残す人は減ってきているかもしれません。しかしながら、デジタルであれ、「残す」ということの大切さはいつの時代も変わらないと思います。思い出の写真。これもまた、「変わらないもの」というごちうさのテーマに含まれる気がします。

ここまで考えて、僕は気付きました。そっか、ごちうさと写真って相性がいいんだ、と。

ごちうさという作品のテーマを、まるで写真が象徴しているような形になっています。僕は写真に詳しくないので偉そうなことは言えませんが、少なくとも「変化するもの」と「変わらないもの」に関しては、写真とごちうさとの間に関係性が見られます。数学用語で「写像」というものがありますが、あれに近いような感覚といえば分かる人には分かるかもしれません。

ごちうさと「写真」は連動している。ということは、「写真」のもつ魅力を探っていけば、ごちうさの新しいテーマに気付くきっかけになるかもしれません。

そういうわけで色々と調べていたら、どうもごちうさ4期以降のテーマっぽいものが見えてきたので、ご紹介したいと思います。

■ ごちうさのテーマは「変化していくもの」と「変わらないもの」

その前に、まず大前提について確認しておきましょう。ごちうさのテーマは「変化していくもの」と「変わらないもの」だと最初に言った僕ですが、一体何を根拠にそう言ってるのか。

これに関しては、メガミマガジン2021年2月号に詳細が載ってます。ごちうさBLOOMのスタッフインタビューで橋本監督が語っている内容が根拠になってます。

千夜の生徒会長のエピソードとロゼのエピソードって一見すると何もつながりがないですけど、じつは第9話全体に「変化していくものと変わらないもの」というテーマがあって、それに沿った話になっているんですよ。

大学生らしく大人っぽくなりたいリゼちゃんを「変化していくもの」、生徒会長選挙を辞退した千夜ちゃんを「変わらないもの」として、その対比を描いているわけですね。

これはBLOOM9羽の話ですが、9羽だけじゃなく、他にもごちうさは「変化していくもの」と「変わらないもの」を描いた話が多いです。軽い検証も兼ねて、アニメ1期と2期、そして3期は9羽以外のところからそれぞれ一つずつピックアップしてみました。

・1期9羽「青山スランプマウンテン」

タイトルからBパートの印象が強い回ですが、Aパートはリゼちゃんが「オペラ座の怪人」のヒロイン、クリスティーヌを演じることになったというお話です。優雅でおしとやかな女の子になるために奮闘するリゼちゃんの姿は、まさしく「変化していくもの」。ラビットハウスのマスターから譲り受けた万年筆を大事にする青山先生は「変わらないもの」でしょう。二人の対比が描かれている回だと思います。

・2期6羽「木組みの街攻略完了(みっしょんこんぷりーと)」

アニメ2期の「変化していくもの」と「変わらないもの」といえば、保登家姉妹が思い浮かびます。チノちゃんの姉として少しずつ成長しているココアちゃんと、そんな妹を大事に思うモカ姉の姿。夕暮れの情景も相まって、心温まるエピソードでした。同時に、二人の対比が鮮明に描かれていたシーンでもあると思います。

・3期4羽「あったかもしれない日常」

BLOOMは感動的なお話が多くて、何回も泣きました。4羽もその一つで、素晴らしい完成度のお話だったと思います。当初はチノちゃんが進路を決めたシーンに感動していたんですが、高校生組の絆もすごく良かった。学校が違ったってこれだけ仲良しなんですから、これから先、何年経っても、四人の関係は変わらないと思います。変化を臨むチノちゃんと、高校生組の変わらない絆。「変化していくもの」と、「変わらないもの」は、ここでもしっかりと描かれています。

■ 写真からごちうさのテーマを読み解く

そういうわけでごちうさには二つのテーマがあるわけですが、伝わったでしょうか?伝わりましたね?

それでは、いよいよ調査に移りましょう。図書館に行ったりするのは面倒()なので、Googleを使います。

ググる。ググる。ひたすらググる。今は大抵の情報は調べればネットで出てきますから、便利な時代です。文明の利器を駆使しましょう!ツイッターのシュパシュパが加速する…!

↑文明の利器を駆使するチノちゃんの図

写真は人の記憶でもあり、記録でもあります。人は時間が経つと共に記憶が薄れていきます。幸福や不幸なできごとでも時が経てば、その当時を思い出せたとしても同じ感情になることはありません。

しかし、写真を見るとどうでしょう。その時の記憶が鮮明によみがえり、感極まってしまうこともあるでしょう。そういうことを考えると、人生において残しておきたい記憶があるようでしたら、写真を撮ることをおすすめします。過去に撮った写真を振り返り、ご覧になることで、記憶のよみがえりと同時に、写真の大切さを感じることができるでしょう。

これは先ほど冒頭で語ったことと一緒ですね。写真、残すの大事。

海外でもそれは一緒。「写真を撮らせてください!」「写真をWEBにアップしてもいいですか?」それだけを伝えるために、片言の英語や中国語で話しかけることも。そこから生まれる小さなコミュニケーションこそ、言語の壁を越えた瞬間だったのではないかと勝手に考えています・・・!

いいこと言ってる!けど、ごちうさのテーマとのつながりを考えると、少し弱いような…。コミュニケーションの大切さもごちうさの中では描かれていますけどね。

写真を撮影するにあたり、色々な項目を細かく調整することが出来ます。
例えば「ISO感度」「絞り」「シャッタースピード」が代表的な項目ですね。その他にも「WP(ホワイトバランス)」「露出補正」「フォーカスエリア」等々、細かく設定しようと思ったらキリがありません。
全部を全部いじる必要はありませんが、動体(動く被写体)や夜景をきれいに撮るなら少しばかり調整してあげなきゃいけません。

ISO、絞り、露出補正…。

カメラに詳しくない僕にはもう何のことだかさっぱり分かりません。暗号だ…!解読班はどこだ!

自分のイメージ通りに撮れる時もあれば、「全くイメージと違ってこんな感じではなかったはずなのに……」などと自分の想像していた画像と実際の撮影画像とのイメージにギャップがあることも最初のうちは多い。でもこれも写真の面白さの要素の一つでもあるのでガッカリせずに楽しむ。実は僕たちプロでも思うようにいかない場合はあるし、逆に想像以上の結果が生まれることもある。

とりあえずざっと調べた中で、一番ごちうさとのつながりを感じたのがこの文章でした。思うようにいかないこと、失敗も含めて楽しむというのは、ごちうさの中でも何度か描かれていることです。

マヤメグとリゼちゃんが歌う「ショコらびゅサバイバル♪」の歌詞なんかは、お菓子作りに失敗してますけど悲壮感は全然なくて、三人とも楽しそうですよね。

ただ、「これだ!」と強烈に感じるものが見つからない。僕自身、考えすぎるきらいがあるので、考察するときは誇大妄想にならないよう注意してやっているつもりなのですが、今回もひょっとしたら悪い癖が出たかもしれません。写真とごちうさのつながりから、ごちうさのテーマを読み解く。面白い試みだと思ったんだけどな…。

僕はよくカメラを片手に街に繰り出します。向かう街はその時よりで、渋谷とか下北沢に繰り出す日もあれば、家や実家の周りを散歩したり、あ、こないだ中野新橋って全く知らなかった街をカメラを持って散歩したときなんか楽しかったです。僕は「面白い」を拾い集める感覚で街を歩きます。

あきらめかけていたところで、一つのサイトに行き着きました。東京工業大学の、写真研究部のホームページです。

四部構成で写真のもつ魅力について解説しており、なるほどなあと思いながら読み進めていたのですが、このホームページには他の記事にはないテーマがありました。

「世界を見る目を養うことができる」

要約すると被写体を探しながら町を歩くことで、普段は気にも留めないような町の様子が見えてくる。今流行っているコンテンツとか、ちょっとおかしな店の看板とか。特別なことをしなくても、自分の見方を変えることで、今そこにあるものの面白さが見つかるかもしれない。それを、筆者は「『面白い』を拾い集める感覚」と呼んでいます。

僕は写真を撮るといってもせいぜいお昼に食べた定食を撮るくらいで、被写体を求めて町を歩き回ることはしません。それでも、「面白い」を拾い集める感覚はなんとなく想像できる気がします。

なにより、僕はこの文章を見てハッとしました。

言われてみれば、ごちうさにも「世界を見る目」の話が出てきます。もちろん、「世界を見る目」という言葉が直接出てくるわけではありませんが、ごちうさ原作7巻以降の話は、身の回りのものの良さに気付く、という内容が多いです。

急いで原作を読み返し、改めて確信しました。「世界を見る目」は、ごちうさのテーマです。最後にその話をさせていただけたらと思います。

■「世界を見る目」を変えること。今そこにあるものの良さに気付くのが得意な女の子たち

改めて思うんですが、ごちうさのキャラクターって本当に「目」がキレイですよね。誰かの良いところや、何気ない日常の面白さを見つけてくるのがとても上手い。

原作7巻以降の話はまだほとんどアニメになっていませんが、アニメにするとしたら、この「世界を見る目」が一つのテーマになるかもしれません。「変化していくもの」と「変わらないもの」が、今までのごちうさのテーマだとしたら、この「世界を見る目」は今までにない、第三のごちうさのテーマとも呼ぶべきものでしょう。先の二つと語感を合わせるなら、「変わらないようで変わるもの」といったところでしょうか。

原作7巻から2つ、8巻から1つのエピソードをピックアップしました。

・周りの人のいい所が見えているメグちゃん

原作7巻第5話ですね。スケートに行く話。「私が憧れてるのは何でも出来る完璧なお姉ちゃんじゃなくて、ココアちゃんみたいな、なんでも『楽しい』に変えてくれる人」っていう、メグちゃんの台詞がポイントです。なんでも「楽しい」に変えてくれる人という、ココアちゃんの良いところが、メグちゃんには見えてたわけですね。

・お嬢様学校の楽しさに気付いたシャロちゃん

同じく7巻6話。シャロちゃんもまた、お嬢様学校の楽しさに気付いています。シャロちゃんは特待生ですから、入学した当初はお嬢様学校の格式高さに馴染めなかったのでしょう。リゼ先輩のおかげで、その楽しさに気付くことができた。シャロちゃんの「世界を見る目」が変わった瞬間だと思います。

・旅先の景色の輝きに気が付いたチノちゃん

8巻の旅行は、初っ端からチノちゃんとココアちゃんがメンバーとはぐれるところから始まりました。コミュニケーションが得意なココアちゃんはともかく、内気なチノちゃんは知らない街で気が気じゃなかったと思います。せっかく旅行に来ているのに、チノちゃんは周りの景色に目を向ける余裕すら失っていました。それでも、ココアちゃんに手を取られた瞬間、チノちゃんの世界はキラキラとした輝きを帯び始めます。「世界を見る目」が変わったから、チノちゃんは世界の輝きを見つけることができたのです。

■ まとめ

いかがでしたか?

今回ご紹介したのは、あくまで僕の私見です。これが絶対に正しい!というものではありません。人の数だけ、見方がある。それが、ごちうさの一番面白いところだと思います。

本記事が、みなさんのごちうさライフに少しでも貢献できれば幸いです。

またね!

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