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まんがタイムきららMAX2021年12月号のごちうさ。帰る場所がある、ということ。笑顔のお返しと、ココアちゃんの「サプライズ」について

きらマ最新号掲載のごちうさについて書いていきます。

今月のごちうさは前回の引きから、ココアちゃんが卒業後にどのような道へ進むのかが気になるところ。ラスト数コマで衝撃的な終わり方をしただけに、一体どんな話が来るのか不安な回ではありました。

けれど蓋を開けてみれば、いつも通りのごちうさだったので良かったです。

それどころか、普段以上に感動的なお話で、もう途中から涙があふれてあふれて止まりませんでした…!

原作10巻収録の最終話ということで、10巻全体を通してのテーマが意識された回でもありましたね。今回は、そんな点に触れつつ、ごちうさ最新話を改めて振り返っていきたいと思います。

注意:本記事は、まんがタイムきららMAX2021年12月号掲載のごちうさに関するネタバレを含みます。

■ 作品紹介はナナラビ!?

まず今回は、作品紹介の時点で驚かされました。ごちうさ公式が4月1日になると毎年やるエイプリルフール企画。その2021年版である「Seven Rabbits Sins」、通称「ナナラビ」が紹介されています。まさかこんなに早くナナラビが登場するとは思わなかったのと、前回のことが頭にあっただけに結構混乱しましたね。

何があったかといえば、ココアちゃんが卒業後に木組みの街を離れることが明かされました。これがどれくらい衝撃かというと、チェスに強いあのチノちゃんがココアちゃんにチェックメイトを取られるほどです。今までの流れを踏まえれば、この展開は納得っちゃ納得なんですが、ごちうさという作品の行方を左右する重大な情報であるのは事実。

そういうわけで、今回の告知もココアちゃんの進路について何かしら言及があると思っていたんですが、完全にスルーでしたね(笑)。

もちろん、本編はスルーではなく、このナナラビもフユちゃんが見ていた夢ということで終わります。よく考えればあの引きの後で進路をスルーするのはあり得ないことですが、最初見たときは驚きました。こういうサプライズを持ってくるあたり、Koi先生は流石だと思います。

■ 卒業後のココアちゃんの進路は「都会でパン修行」

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さて本編ですが、ココアちゃんの卒業後の道がついに分かります。都会でパン修行。その目的は、モカ姉とは違う道でパン作りを極めること。前回のシャロちゃんに続き、ココアちゃんまで街を離れるのは驚きですが、一方でどこか納得感もありました。旅行編での出会いを考えれば、ココアちゃんがいずれ街を旅立つのは時間の問題だったと思います。

ポイントとなるのは、「お姉ちゃんとは違う道で」の部分でしょう。ココアちゃんにとって、モカ姉というのはやはり大きな存在のようです。

容姿端麗な美人さんでありながら、努力することを怠らない性格。街の人からも人気が高く、小さい子からも慕われています。そんな完璧なモカ姉の隣に並び立つ存在であるためには、ただ単に背中を追っているだけは不十分だとココアちゃんは考えます。

だから、モカ姉が「田舎」なのに対し、ココアちゃんは「都会」でパン作りの修行に励むことにしました。旅行から帰る際、ココアちゃんは「ここに残るよ」と冗談を言いますが、ひょっとするとあの時にはもう気持ちは固まっていたのかもしれません。

街の国際バリスタ弁護士というカオスな職業を目指していたココアちゃん。とにもかくにも、現実的な路線に着地してくれて良かったです。都会といえば、シャロちゃんも都会の国立大学を目指していることが前回の話で分かりましたね。二人の絡みが今後は増えていきそうです。

■ チノちゃんの心

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正直に言うと、今月のお話は前半読むのがしんどかったです。ココアちゃんが街を離れるとあって、やはりチノちゃんが要所要所で寂しそうな表情をしてるんですよね…。

チノ・エンヴィちゃんがココアちゃんを見つめる表情でまずやられました。これはフユちゃんの夢で終わりますが、現実のチノちゃんも夢と同じようにどこか上の空であることがフユちゃんの回想から分かります。おにぎりを食べながら「このパンおいしいです」と言っちゃうのはだいぶ重症ですね。

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ココアちゃんが都会に行くと宣言する場面では、いよいよもってフユちゃんから強がってない?と指摘されてしまいました。

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実際、チノちゃんが強がっていないのは半分くらい本当なんでしょう。いろいろな経験を経ることでチノちゃんが成長してきたのは事実です。

しかし、それとココアちゃんのことが大事であるのは別問題。素直になれないチノちゃんは中々ココアちゃんのことを姉とは呼びませんが、心の中では本当の姉のようにココアちゃんのことを慕っているはずです。

もちろん、チノちゃんもココアちゃんの進路は応援していると思いますが、それ以上に寂しい気持ちが勝ってしまっているのでしょう。

つらい。胸に穴が空いた、という慣用表現がありますが、今のチノちゃんはまさにそんな気持ちを抱えているんじゃないでしょうか。

そういうわけで今月のごちうさは前半、どうなるのかハラハラしました。ただし、これはあくまで前半の話で、後半はちゃんといつものごちうさに戻ってくれて良かったです。むしろ、前半でチノちゃんの寂しさを大きく描き出したからこそ、後半はキャラクターの温かさがより鮮明に感じられました。

特に青山先生とフユちゃん、そしてココアちゃんの三人の行動はもう涙なしには語れませんね。

■ 帰る場所がある、ということ。

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お久しぶりです、青山先生。実は都会から帰還してました。最後に登場したのが確か9巻の中盤あたりですから、ほぼ単行本1冊分くらいの間いなかったことになります。どことなく外見が少しおしゃれになったように見えるのは、都会の雰囲気に影響を受けたせいでしょうか。

それはともかく、青山先生はここぞというときに良いことを言うからズルい。「どんなに離れてても、皆さんはここに戻ってくるはずです」の台詞。別離の時が迫ってきているココアちゃんたち皆にとって、これほど胸に強く響く言葉というのもないでしょう。

旅行編の終わりに皆で作った「We Are Family」のマグカップが思い出されます。家族って、別に一緒にいるだけが家族というわけじゃないですよね。いつでも帰ることができる場所。「ただいま」と「おかえり」を言い合える関係。心の拠り所にできるのもまた、家族の良さの一つです。旅行編で描かれたのが「一緒にいる」形の家族だとしたら、これからのごちうさは「拠り所」としての家族が描かれる気がします。

帰る場所がある、ということ。それだけで、きっと人はどこにでも、どこまででも飛び立っていけます。シャロちゃんとココアちゃんが上京を決めたのも、心の中に確かな拠り所があるからではないでしょうか。

■ 笑顔のお返し

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今月号のごちうさはこのフユちゃんで涙腺が崩壊しました。チノちゃんに対するフユちゃんの思いがたくさん詰まった笑顔。人と接するのが苦手なフユちゃんが、たどたどしい言葉で伝える優しさと思いやり。どれを取ってもフユちゃんらしい温かさに満ちています。何より、チノちゃんからもらった笑顔を今度はフユちゃんがチノちゃん自身に返すという流れが最高。

フユちゃんといえば、最初は本当に笑顔を浮かべるのが苦手な子でした。生まれつきの目つきの悪さと、人見知りからくる無愛想さで、人を無意識に威圧してしまうのがフユちゃんの悩みでしたね。

チノちゃん自身も、笑顔については過去に悩んだことがあり、そういった経緯からフユちゃんの悩みに力を貸したことがありました。

積み重ねてきたチノフユの文脈が結実するシーンは、泣けます。単行本10巻に収録される話をもう一度読み返してみると、ちょうどフユちゃんが笑顔のことで悩む話から始まるんですね。笑顔にはじまり、笑顔で終わる。この構成も、ちゃんとKoi先生は考えてやっていると思います。10巻通してのテーマがはっきりと描かれたシーンでしたね。

■ ココアちゃんの「サプライズ」

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そして最後にトリを飾るのは、やっぱりおなじみココアちゃん。ココアちゃんはいつだって最後には全てを持っていってしまいます。今回も、たった一コマでチノちゃんの心をさらっていってしまいました。

このシーンの素晴らしさに関しては、もはや語るまでもないでしょう。チノちゃんの耳元で内緒話をするココアちゃん、尊すぎます!

前半でチノちゃんの寂しさが描かれていたことによる落差も相まって、なんだかいろんな感情がこみ上げてしまってボロボロに泣きました…。

ココアちゃんが予定しているサプライズの内容も気になります。パン修行が終わったら、とココアちゃんが言っているので、パンに関係する何かをしようとしている可能性は高いと思います。とびっきり美味しいパンを作ってラビットハウスに持っていくのか、あるいは都会でパン祭りを主催してチノちゃんを招待するつもりなのか。

いずれにせよ、今後のごちうさがますます楽しみになってきました。サプライズ予告を受けたチノちゃんが、「ココアさんは強欲です!」と、ナナラビネタの台詞に着地する最後の一コマまで含めて、今回のごちうさは完成度の高い内容だったと思います。

■ おわりに

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最後に全体の所感になりますが、今回のお話は単行本10巻を締めるのにふさわしい神回でした。いかがでしたか?

ごちうさ展の東京会場がいよいよ今週から始まります。ごちうさ展の前にこんな素晴らしい話を読めるとは思いませんでした。おかげで、最高のモチベーションでごちうさ展を楽しむことが出来そうです。

またね!

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