Bitwig Studio The Gridの良さをRing Mod Sidechainingから理解する
Bitwig StudioのThe Gridはすごい、と言われても簡単にその凄さを理解するのは難しい。普通にDAWを触っている分なら、大抵はDAW付属プラグインや市販のプラグインの組み合わせだけで十分なことが出来てしまうからだ。サインオシレータとノイズオシレータを組み合わせてスネアシンセが作れてしまう、と言われてもドラムシンセくらい大体のDAWに付いてるし、何なら何百何千ものスネアサンプルをすでに所持していることの方が珍しくないだろう。
実際、The Gridの凄さはモジュラー機能そのものよりも、それがDAW(Bitwig)の内部と密接につながっていることにある。その便利さを、Ring Mod SidechainをThe Gridを用いて組み上げていくことで紐解いていきたい。
ちなみに、そのRing Mod Sidechainってなんやねんという向きについては下記を参照してください。
このサイドチェインを行うにはいくつかの段階が必要で、
① ドラムの波形をBusなどに引っ張り出す
② ①の波形を負方向に折りたたむ(!)
③ サイドチェインをかけたい音と②で作った波形でリングモジュレーションする(!
!)
④ ③の波形と元のかけたい音をミックスする
⑤ ④の波形と元のドラムの音をミックスする
という手順を踏むことになる。当然障壁となるのは②と③の段階で、上記の動画ではサイドチェインを説明するために複数のチャンネルを作成し、わざわざ波形を書き出している。Ableton LiveなどのDAWを使っても、複数チャンネルにまたがって処理を行わなくてはならないので、日々の制作の中にこの手法を取り入れるのははっきり言ってダルい。
しかし、The Gridを使えば、DAW内部のルーティンまで踏み込んだ形で上記①〜④の処理をプリセット化することが出来るので、
① サイドチェインをかけたい音にプリセットを読み込む
② サイドチェイン元となるドラムのチャンネルを指定する
③ 元のドラムとミックスする
でRing Mod Sidechainingが完了する。
やり方
Ring Mod Sidechainingの各手順の処理は、The Gridで下記の通り対応可能。
① ドラムの波形をBusなどに引っ張り出す
I/O > Audio Sidechainを挿入して、ドラムのチャンネルを選択する。
② ①の波形を負方向に折りたたむ
Math > MinMaxというモジュールを使えば、波形から正の値と負の値を個別に取り出せる。正の値にマイナス1(Math > Constant)を掛け算(Math > Multiply)すれば、負の方向に折りたたむ処理が完了する。
応用: Shaper > Rectifierというモジュールで-と+両方の値を"-100%"にすることで、モジュール一つだけで折りたたみ処理が可能。
③ サイドチェインをかけたい音と②で作った波形でリングモジュレーションする
そのままAM/RMという名前のモジュールがあるので、かけたい音をCARRIERに、②の波形をMODULATORにかければOK。
できたのがこう
これを保存すればいつでもRing Mod Sidechainingが使えます。任務完了。
注意点
*Audio SidechainのSourceは読み出すごとに再設定が必要なので注意
*実はThe Gridを用いた処理はRing Mod Sidechainingとして完璧には機能しない。その原因はThe Grid自体の仕様(?)となっている、内部処理にバッファをかけるための0.5msのレイテンシーによるものと思われ、上記の通りGridを組み上げただけでは処理は失敗する。苦肉の策として上記スクリーンショットではFX Gridの"Post FX"欄にBitwig内蔵のユーティリティプラグイン"Time Shift"を挿入し、「-0.28ms」の逆ディレイを入れている。ここの数字は環境によって変わる可能性があるので、The Gridで調査用のモジュールを組んで調査してみてください!
(作業のヒント: ある音とその逆位相の音は、ぴったり重なると打ち消しあい、無音になる)
おわり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?