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恋供養 ~1983年頃~ 珈巣多夢(カスタム)にて 飛鳥薫(17歳からのペンネーム)

女は腰をかがめて 川へ燈籠を近づけた
女の肩には そっと置かれた 夫の手があった
女はその手のぬくもりを全身で感じながら
無表情に燈籠を川に流した
流れに身をまかせ 燈籠の火がゆらゆら揺れた


あなた・・・
女は口の中でつぶやいた もう一度
あなた・・・
女が呼びかけた   夫ではない・・・男に



夫は妻の肩を いつしかしっかりと握っていた
そうしないと 妻がどこかへ行ってしまいそうな
言いしれぬ不安が 彼をそうさせていた
燈籠を見つめる妻の顔
かつて彼の知らない冷たく悲しい横顔
妻はいったい何を供養しようというのだ



女の頬に熱いものが流れた
さようなら・・・あなた
さようなら・・・わたしは この人と生きてゆきます

やがて燈籠は小さくなって見えなくなった



夫は”何を・・・”と 小さく言って 口をつぐんだ
女には 夫の言いたいことがすぐにわかった

”こ・い・く・よ・う”

女は心の中でつぶやいた
失われてしまった・・・わたしの心の恋供養と


by飛鳥薫(あすか かおる)1982~1983頃



仙台市青葉区 定禅寺通りに 珈巣多夢(カスタム)という カフェがある

かつて BOBO というカフェをやっていたマスターが

引っ越して 珈巣多夢という店を開いたのは

おそらく1980年代初めだったと思われる

初めて珈巣多夢に行った時

「BOBOのマスターですよね?」

というと 間違いなく同一人物だった

そこで POEMLAND という同人誌を作っていると言うので

この「恋供養」という詩を 「飛鳥薫」の名前で投稿した

ところが、この詩が本に載る前に 

私は結婚して 他県に行ってしまった

完成本を見ることなく時は過ぎ

15年ほど前 久しぶりに珈巣多夢を訪れた

マスターは留守で、同人誌のことを聞いたが

もう 店には無いと言う

永遠に 私の詩が載った本を見ることは無いと思った

最近(2015年) facebookを始めた

今回の本 出版社を紹介してくださった方さんから

珈巣多夢のページに飛び

懐かしくてコメントした

マスターから

BOBOの 珈巣多夢のマスターからfacebookにメッセージが来た

私は「飛鳥薫」という名前で 詩を投稿した話をした

そうしたら なんと

マスターが 探してくださったのだ

そして、写真を メッセージに貼り付けてくださった。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。

この原稿は 私の手元に無く

失われた作品であった

それが facebookを通じて もどってきたのだо(ж>▽<)y ☆

見ることのなかった掲載ページを

今 この目にするとは。゚(T^T)゚。


マスターは 定禅寺店は息子さんにまかせて

今は 柏木店に いらっしゃるとのこと

今度行って 見せて頂きたいとお願いしたm(_ _ )m

マスター ありがとうございますm(u_u)m

それにしても 出版社を紹介してくださった方

あなたは 福の神だ

結婚と同時に私は筆を折り 書かなくなった 

この作品を最後に

そして約20年後に再度筆を取り

やがて 私が初めて出版した この本と(初出版「虹を紡ぐ人びと」)

点と点を繋げて線にしてくださるとは*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


「血の繋がりって なんだろう。
・・・もっと違うものでつながっているのよ。」
小説「虹を紡ぐ人びと」より


事実は小説より奇なり


人との繋がりは

一言では語れない

深い深い物語が

ずっと ずっと 繋がれていく

ありがとうございます(_ _。)m(_ _ )m


※この出来事も9年も前になりました。
その後、私はマスターから当時の同人誌をいただき、宝物になりました。


初出版「虹を紡ぐ人びと」



虹を紡ぐ人びと・千に咲く・白龍抄・ミチビキビト逝導師佐鴈・ミチビキビトヒカリオン・駒草コマクサ・炎の巫女/阿修羅王


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