元祖 巴の龍#60
すっと丈之介が、菊之介の腕を取った。
「もう、やめるのだ、菊之介」
「しかし、父上。父上も母上を・・・」
「わかっている。桔梗のことは信じている。だが菊之介、失礼なことを言ってはならん」
丈之介はそう言うと、また洸綱に手をついた。
「洸綱様、申し訳ございませぬ。この菊之介は姫様育ちゆえ、武人のことはまだよくわかりませぬ。
これから、しっかり息子として育て直しますゆえ、お許しください。
菊之介、頭を下げるのだ。」
そう言って丈之介は、洸綱に頭を下げた。
大悟も一緒に頭を下げていた。菊之介は不服ながら父と兄に従い、しぶしぶ頭を下げた。
洸綱は不愉快そうにしていたが、久々の再会なのだと、思い直した。
「兵衛に会ったのであれば、今頃葵が何か手料理を作って待っているやもしれぬ。
子供の頃はおてんば娘だったが、兵衛と娶せてからは、お針子の仕事もし、今日も出来上がったものを届けに出かけたのだ。じゃが今頃戻っていることだろう」
洸綱の言葉は、もちろんそばにいた芹乃にも聞こえた。
菊之介と大悟は、そっと芹乃を見た。
芹乃は案の定、青ざめて震えている。
洸綱は、これから再会の祝いをするため、洸綱の家に来るように言った。
丈之介はもちろん、菊之介と大悟も行くことになった。
「わ・・・私は留守番しております。一族の皆様うち揃うて祝われるのがよいかと存じます」
そう言って芹乃は丁重に断った。
菊之介は芹乃が心配だったが、大悟はそれより兄・兵衛に怒りを感じていた。
なんとしても、兵衛の本心を聞かなければ、収まらない気持ちになっていた。
洸綱の家に連れだって行くと、すでに祝いの席が用意されていた。
葵の心づくしの手料理が並んでいる。皆再会を祝って、和やかに宴が流れていくかと思われた。
洸綱と丈之介は酒が入り、葵はその相手をしている。
大悟は静かに席を立つと、兵衛を庭に誘った。菊之介もそっと後をついていった。
「兄上、聞きたいことがあります」
大悟が口火を切った。兵衛は覚悟していたように頷いた。
「葵殿とは、祝言をあげて一年になりますね。
兄上には、葵殿という妻がいる。
芹乃のことはどうするつもりだったのですか」
「芹乃はなんと?」
続く
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「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
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