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元祖 巴の龍#78

朱欄から蛇骨へは、邪虚川(ジャッキョガワ)を超えて平地を歩いていく。途中、小物の妖怪が次々襲ってきたが、もう巴の龍の相手ではなかった。
菊之介一行は、やすやすと蛇骨にたどり着いた。

蛇骨はもう町の様相を呈していなかった。
町に入った途端全体が薄闇に覆われており、古木が生い茂り、その古木が人や獣の姿で菊之介たちを襲ってきた。
菊之介たちは、足止めをくらったように難儀した。
目の前の蛇骨城。そこのたどり着くためには、桐紗の妖術に頼らざるを得なかった。

蛇骨城は、大きな門に両脇から龍が絡みつき、城へ入る道筋も龍の彫り物、置物、敷物で囲まれていた。
また三つ口定継の玉座に向かうまでには、かつての敵のように黄龍、赤龍、青龍、緑龍と、手強い妖怪たちが待っていた。

巴の龍は戦う度に強くなるのと、桐紗の妖術や的確な助言によって辛くも勝利を収め、最後の玉座にあと一歩と近づいた

三つ口定継の部屋の前で、桐紗は入るのを躊躇った。
「義姉上、もう良いのです。定継は義姉上の父君であることは変えられないことです」

菊之介が桐紗にそう言うと、大悟も
「桐紗殿、今までのことは感謝いたす。だがこれは我らの戦い。三人で参ります」
と言い、兵衛も
桐紗殿は、こちらでお待ちください。そして我らが負けたら、定継のもとに戻るがよい」
と言った。菊之介は微笑んで桐紗に向かって強くうなずいた。

桐紗は体を硬くして、その場に留まろうとした。そして、大悟が部屋の扉に手をかけようとした時だった。恐ろしい、そして聞き覚えのある声が響いた。

巴の龍よ、よくここまで来た。褒めてつかわそう。
ふふふ…、桐紗、隠れても無駄じゃ。わしは何もかも見えているぞ

部屋の扉がひとりでに開き、部屋の中が見えた。
広間の奥に玉座があり、そこに座る三つ口定継。そしてのその左腕には、やつれきった桔梗を抱えていた。

「母上!」
菊之介が最初に走り出し、大悟、兵衛が後に続いた。
定継はカッと目を見開くと、稲妻が走り、玉座を前にして菊之介たちの足が止まった。桔梗はうつろな目でゆっくりと菊之介たちを見廻した。

続く
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「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ

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