元祖 巴の龍(ともえのりゅう)#66(相関図付)
三週間の後、桐紗の病も徐々に回復の兆しを見せてきた。
熱も下がり、少しずつ粥なども口にできるようになっていった。
一方芹乃は、親方の許しを得て、桔梗の太刀を打ち直していた。
刀に心があるように、打てば響くという感触に芹乃は感動していた。
名刀というのものがあるとすれば、このような刀のことではないのか、と日々感じていたのだ。
大悟は芹乃の親方に頼んで、望みの鋼の矢を作ってもらっていた。
今の大悟は、太刀より弓の魅力にとりつかれていた。また、的に確実に当てられるように、毎日の精進を忘れなかった。
兵衛は自分を奮い立たせるように、太刀の稽古に余念がなかった。芹乃を心から払拭したことで、またひとまわり大きくなったようだ。
葵は変わらずお針子をし、丈之介は鍔作り。
洸綱だけが焦りを感じていた。
せっかく三兄弟がそろったというのに、三つ口定継征伐になかなか出かけようとしない。
それというのも、あの定継の娘がいつまでも臥せっているからに違いない。
すべては桐紗のせいなのだ。
四週目に入るころ、やっと桐紗は起き上れるようになった。食欲も出て、顔色もよくなっていった。
菊之介は桐紗を看病しながら、サライで熱を出した時、大悟が看病してくれたことを思い出していた。
見知らぬ村でたったひとり、菊之介にもしものことがあったら、と心配しながら看病した四日間は、きっと今の菊之介の四週間にも相当するのではないか、と思った。
今、菊之介は心配してくれる身内の中で、桐紗のことだけを考えられることに感謝した。
「菊之介、皆様にお礼をさせて下さい」
起き上れるようになって、桐紗は世話になっている人たちに会いたがった。菊之介は、ゆっくり桐紗のことを紹介していないことに気づいた。
その夜、家族が食卓に揃った時、菊之介は桐紗をともなって出て来た。
皆口々に回復を喜んだが、桐紗はきちんと手をついて、挨拶をはじめた。
「私は三つ口定継の娘、桐紗と申します。この菊之介が菊葉と呼ばれていた頃、十三年に渡って、姉妹として育ちました。
桔梗様にも真の娘のように育てていただきました。ですからどうか、義母上と呼ぶことをお許しください。
父・定継が皆様の敵であることは承知しております。
義母上を人質にとって、様々な国を脅かす父を、もう父とは思いません。
私も義母上を救うため、手助けをさせて下さい」
続く
ありがとうございましたm(__)m
※相関図、写真が下手で、曲がってて、すみません。2001年作成。
「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
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