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エンドレスヒールⅡ-3.11 #25あさみの場合

「開館の日、決まったみたいよ。」

4月7日(木)の震度6強の地震から、約2週間が経過していた。
毎日 毎日 落ちた本を書棚に戻し、並び変えをした。
2階の書庫は翌週には修理が終わり、次の週から本を戻し入れる作業に入っていた。

「4月31日、火曜日から開館します。」
朝礼で、リーダーが決定事項を伝えた。
ベテランの赤城の言っていたことは、リーダーの言葉で現実のものとして入って来た。

「不安なんです。」
毎日の並べ替えの作業の中、一番若いまだ二十代のバイト、浅海と一緒に4月からバイトを始めた御手洗(みたらい)だ。

「私も、すごく不安。いっそ、当日からお客様の前に立てば、やるしかないから流れで仕事してたでしょうね。」

「初めての仕事だし、ずっと整理だけだったから。もう一ヶ月って言われても、お客様と話したことないし。」
「わかる。ドキドキだよ、私も。カウンターでパソコンで処理するって言っても、ワードやエクセルと違って、特殊なソフトでしょ。」

「そうなんです。教えてもらったと言っても、相手がいるのといないでは、違いますよね。」
「違うよ。客のニーズに答えるということは、市の仕事といっても客商売みたいなものでしょ。あくまでお客様本位でないといけないわけで・・・。」

「水月(みずき)さん、御手洗さん、最初はサポート付くから、大丈夫よ。」
赤城と唯野が、口をそろえた。
しかし、そう甘くはないことを、浅海は肌で感じていた。

とはいっても、若い御手洗を不安にさせるようなことは、あまり良いこととは言えない。
日々、本を書棚に戻し並べる、を繰り返しながら、開館まで一週間と迫っていた。

2011年6月25日(土)
続く

エンドレスヒールⅡ-3.11 #25あさみの場合

私は泣いていない。理屈で理解しても、感情では納得していない。
私はもう一生、大丈夫にもならないし、落ち着くこともないだろう。

次回 エンドレスヒールⅡ #26はこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/na53568fcc4c1

前回 エンドレスヒールⅡ #24は こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n5f6ee827fa0e

②エンドレスヒールⅡ あさみの場合 最初からはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n799a32079029


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https://note.com/mizukiasuka/m/m3589ceb09921


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