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元祖 巴の龍(ともえのりゅう)#16

ロンの母親は恐縮しながらも喜んで獲物を受け取ってくれた。
いつのまにか食事を共に摂るようになり、菊之介と大悟はロンの家に泊まり、そして住むようになっていった。

逃避行を続ける菊之介達にとって、村はずれのロンの家は格好の隠れ家でもあった。
大悟は毎日狩りに出るのが仕事となり、菊之介はまだ教えてもらえない、カンフーを見るのが日課となっていた。

大悟は、しかしこの生活も悪くないと思い始めていた。
なぜなら彼は母というものを知らなかった
ロンとその母を見るにつけ、母というものの愛情の深さ、優しさにふれ、心が安らぐのを感じていたのだ。

また菊之介は、ロンと行動を共にするにつれ、いつのまにかロンのことが弟のような気持になっていた。それはロンにも言えることだった。

 
「菊之介、カンフー教えてもいい」
 ロンと知り合って二か月目、やっとロンはそう言った。

 「マーマには秘密カンフー他国の人に教えられない掟。でも菊之介なら教えたい
ロンは亡くなった父親から幼き日より訓練を受けていた。

体で覚えたその技は、今ではロンと母親の生活の糧となっていた。
しかしもう帰れないであろう祖国では、カンフーは門外不出であり、決して他民族には教えてはならないものだった。

「ロン、教えてはもらいたいがもしマーマに知れたら、ロンが叱られるだろう」
 菊之介はロンを気遣ったが、ロンは大丈夫と胸をはった。 
その日から菊之介は、人知れずカンフーを習い始めた

 
大悟はサライに来て初めてお金というものを見た。
それが欲しいものを手に入れるのに、とても便利なものであることも学んだ。
そしてそのお金で弓を買い、日々稽古に励んだ

そのおかげで、山鳥などを遠くから狙って撃ち落とすことにより、ますます狩りがしやすくなった
生来の武人である大悟は、太刀のみならず弓もこなすのに、たいした時間はかからなかった。


その日も大悟は、山で獲れたいくつかの獲物を、港近くまで売りに来ていた
この村はたくさんの渡来人がいたが、また違う土地の人間旅人や商人であふれていた。
道を人が行き交い、いろいろな国の言葉が飛び交っていた。

その中で大悟は耳に止まる声を聞いた。

続く
ありがとうございましたm(__)m

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そして、またどこかの時代で

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