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エンドレスヒール#25 -3.11

本日で震災より一ヶ月です。
思い出したくないほど、つらい現実を目にした人々、現実に今も先が見えず、避難所で生活されている方々がたくさんいます。
こんな時に、こんなものを書いて、何を考えている、とのご批判も受けました。
しかし、素人ではありますが、今だからこそ、この体験を書き残さなければと思って書き続けています。
ただ、私はライターでは無く、ノベリストです。ですから、フィクションを加えた小説と言う形でしか表現できません。
だんだんと書いていきますが、焦りがあります。
なんとしても書きあげたい、今は一身に批判を浴びてでも書くこと、これが私のできることなのです。
不適切な表現がありましたら、お詫び申し上げます。
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(上記当時のままの文章)

3月11日(金)19時近く

和美は、コンビニで帰るだけ買って家に戻った。
もとより電気がつかないので真っ暗だ。
やはり食器の破片を片付けておいて良かった。
玄関に用意してあったスリッパを履く。

掃除機で吸ってないので、いくら拭いたといっても、不安が残る。
こんな時に怪我などしたくない。
薄暗いキッチンの食器棚の上に、長方形の箱がある。
和美が20年以上前に、結婚式のキャンドルサービスをした時、使ったものとして式場からもらったものだ。

今まで、まともに使った事は無かったが、その箱にたくさん入っているロウソク、心強い。
捨てても良いと思える小皿を出し、ロウソクに火を付けた。
昔の人は、ロウソクをたらし、その上に立てていたはず。
子供の頃で うろ覚えだが、親がやっていた気がする。
しかし、最初に立てたのは安定感が無く、危なく倒れるところだった。

ロウソクを溶かしたものを、たっぷり小皿の底に敷くようにたらさなければならないのか。
もう一度 チャレンジ。
白い 全体にねじりの入った結婚式用ロウソクは、なんとか小皿に立った。

電気・水・ガス・ライフラインの切断。
何で暖をとろう。
外は、雪。かなり冷え込んでいる。
しかし、灯油は節約したい。
こんな時、ガソリンや灯油がすぐに無くなることも、二度の震災で経験済だ。

和美は、いつも来ている服の上に、さらにセーターとカーディガンと、綿入れハンテンを着て、ネックウォーマーをつけ、家の中で帽子をかぶり、腰に大きめのカーディガンをまきつけ、ひざかけの代わりとした。

反射式ストーブは、この時のために用意してあったが、灯油が惜しかった。
午後6時には日が暮れて、真っ暗になる。
家の中は、ロウソク一本。
火の気は、他にない。

そう、余震も続いている。
もし、大きな余震が来た時、一人でストーブとロウソク、両方を消す自信も無い。
今は、着れるだけ着て、ストーブはつけない。
体のことを考えると、風邪は絶対にひけない。
和美は、買ってきたお菓子を食べて夕食とし、喘息の薬を飲んだ。

宮城沖地震の時も、地震当日夕方買い物に行ったな。
和美はひとり、ロウソクの火を見つめながら、若かりし日の震災を思い出していた。

続く
2011年4月11日(月

エンドレスヒール#25 -3.11

※当時、某ブログに書いていた、この作品。この時期、批判を受け、考えた末に「書き続ける選択」をしたようです。
批判のブログには誹謗中傷のコメントがたくさんありました。
今、冷静に考えると、そのブログを書いた人や誹謗中傷のコメントを書いた人は、実際の沿岸部や原発等で避難・避難所にいる人ではなかった、と推察されます。
一番被害のあった方々は、たった1ヶ月で、避難所から出られたり、誹謗中傷のコメントを書いたりできるほど余裕はなかったと考えられます。
私が批判されるとしたら、それは本当に被害に遭った、もっともっと大変な方々です。もし、そのような方々が、私のこの作品をご不快に思われていたら、お詫び申し上げます。

かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね

次回 エンドレスヒール#26 へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n0094c8e9d63c

前回 エンドレスヒール#24 はこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n0f4b4ec85c55

エンドレスヒールをまとめて読めるマガジンは、こちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/m3589ceb09921

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