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パネルディスカッションの開催! 『生成系AIが切り開く情報社会の新たな地平』

2023年9月28日(木) に筑波会議というイベントで生成AIをテーマとしたパネルディスカッション『生成系AIが切り開く情報社会の新たな地平』を開催します。

登壇者は、琉球大学の玉城絵美さん、東京大学の池上高志さん、筑波大の落合陽一さん、そして、私(岡瑞起)の4名です。

パネルディスカッションの登壇者

パネルでは、生成AIとは何か、生成AIは研究にどのような変化をもたらしているか、そして、私たちの生活をどのように変えるのか、などについて議論できたらいいなと思っています。

生成AIが研究にもたらす変化とは?

ChatGPTのような生成AIの登場によって、ビジネスにも大きな変化がもたらされています、それは研究の世界でも同じです。わたしの研究室でも、学生さんが取り組んでいるほとんどの研究テーマに、生成AIを使っています。

わたしが特に興味を持っているのは、ネットワークの成長やダイナミクスをシミュレーションする、これまでのモデルに生成AIを取り入れた研究です。「生成エージェント(generative agents)」と呼ばれる、生成AIを搭載した複数のエージェントをやりとりさせると、どうなるのか?どのようなコミュニケーションが生まれるのか?そこから新しいアイディアが生まれ、タスクをこなすために協調的な振る舞いは生まれるのか、さらには、集団として新たな価値を生み出す仕組みが作られるのか、といったことに興味を持っています。

生成AI+エージェント

こうしたテーマで取り組まれている研究のひとつとして、このnoteでも以前に紹介した『Generative Agents: Interactive Simulacra of Human Behavior』があります。スタンフォード大学とGoogleの研究グループによる研究成果です。この研究では、25人の生成エージェントを仮想世界の中で相互作用させると、情報を伝えたり、ある人の意見が他の人の振る舞いに影響を与えたりするといった、まるで人間のような振る舞いが生成エージェントによって生み出されることが示されました。

この研究で使われたソースコードも公開されています。パネルディスカッションを想定して、登壇者のプロフィールをそれぞれ与えた4人の生成エージェントを走らせてみると、どうなるか試してみました(研究室のRegan Ciaranさんが設定してくれました)。

それぞれのエージェントに、各登壇者の専門分野やどういう研究を行っているかの簡単なプロフィールを設定しました。たとえば、わたし(岡瑞起)のエージェントに設定したプロフィールは次の通りです(英語を日本語訳して示しています)。

岡瑞起
innate(先天的な特性):分析的、先見的、協調的
learned(後天的な特性):筑波大学で人工生命とウェブサイエンスを研究。高度な計算技術と生物学やネットワークダイナミクスからの洞察を融合させ、人工生命愛好家やウェブサイエンスの専門家の両方と頻繁に関わり、自身の領域の知識のフロンティアをさらに広げている。
currently(現在行っていること):人工生命とウェブサイエンスの分野を発展させ、シミュレーションされたネットワークや実世界のネットワークから現れる複雑なパターンや行動を解読することを目指している。最先端の研究論文を積極的に発表し、世界的な会議やワークショップに出席して研究成果を発表するとともに、専門分野の最新の進歩を吸収している。
lifestyle: 11時PMころに就寝し、朝5時に起きる。夕食は5時ころ食べる。

同様に、他の3名の登壇者のプロフィールも設定してシミュレーションを実行。各登壇者のキャラクターへの割当は次の通りです(キャラクターの名前は変更できなさそうだったため)。

池上(Carlos Gomez;CG)・落合(Klaus Mueller; KM)・玉城(Isabella Rodriguez;IR)・岡(Maria Lopez;ML)

キャラクターが起きてから寝るまでのシミュレーションを1日分走らせ、どんな会話をするのかを観察してみました。

たとえば、落合エージェント(KM)と池上エージェント(CG)の間で交わされた会話を紹介すると、次のような感じです。仮想世界ではじめて会った二人ですが、すぐに意気投合してミーティングする約束をしています。

KM(落合エージェント)といCG(池上エージェント)の会話

このように、基本的に4人のエージェント間の会話は、お互いの研究について尋ねあって、一緒に共同研究できたらいいかもしれないといった相談をするというのが多くの会話の流れでした。また、ときには、その場にいない人の研究について情報交換し、みんなで共同研究するのはどうか、と提案しあっています。このシミュレーションでは、4人が同時に同じ場所で議論するという場面は見られませんでしたが、もっと長い時間シミュレーションを走らせれば、おそらくそうした場面を観察することができるはずです。

どうすれば創発がうまれるか?

論文の中でも示されているように、「人間らしい」振る舞いや会話をエージェントが実現している様子を見ることができます。ですが、同時に現在のシステムの限界点もみることができます。それは、生成エージェントの会話から何か新しい研究テーマや方法論が生まれてくるわけではないということです。そして、これこそが取り組むと面白いテーマでもあります。どのようにしたら、生成エージェント同士のコミュニケーションからemergentな(創発的な)アイディアや振る舞いが生まれてくるのか。

こうした研究のひとつのアプリケーションは、仮想世界で社会シミュレーションをすることです。新しい仕組みを社会にいれたときに、どんな風に人々に受け入れられるのか、どのような課題があるのか。社会という複雑系では、何か新しい仕組みを導入したときに何が起こるかを予測することは難しいことです。生成エージェントの研究は、そのような実社会の複雑性を捉えた社会シミュレーションの実現につながるかもしれないアプローチかもしれません。

今度のパネルセッションでは、こうした話題も含め、登壇者のみなさんが考える生成AIの可能性と未来について語りたいと思います。

興味のある方はぜひ参加登録(無料)してみてください。オンラインとオフラインのハイブリッド開催です。

それでは、また!ciao!

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