見出し画像

ALIFEと『The Good Place』から考える、LIFEの新しい定義とは?

数日前にインフルエンザにかかり、熱にうなされながら寝込んでいました。

といっても、熱にも波はあるもので、ただ寝ているだけなのはもったいないので、スマホの画面がみれる程度に回復したときに、友人から最近「何にも考えずに楽しめる」と勧められた「The Good Place」というNetflixオリジナルドラマをみることにしました。

ドラマのストーリーは、主人公のエレノアが死んだ後の世界「The Good Place(良い場所)」での出来事が描かれています。このドラマには、人間を助けるために設計されたAIロボットであるジャネットが登場します。ジャネットは、どんな質問にも答えることができ、欲しいものもすべて作り出すことができます。

ジャネットに話したり聞いたりしたことは、誰にも伝わることなく、かならず約束も守られるという設定です。その結果、ジャネットはドラマの中で唯一の信頼できるパートナーとして扱われるようになります。

「AIが最も信頼できるようになる世の中」という設定は、ほんの数年前まではあまり現実味がないと思っていました。ですが、技術の進歩をみていると、そんな世界も遠くないかもしれません。

実際、英会話を勉強するのには相手が人間よりもAIの方がいいという話も聞きます。相手が人間だとなんだかジャッジされている気がすることがありますが、AIだと基本的にジャッジされるということはないからでしょうか(その裏で学習データとして蓄積されているかもしれないわけですが)。
ジャネットをみながらそんなことを考えていました。

あるとき、ジャネットがある事件を解決するためには、自分が破壊されることが一番の解決策だという提案をします。しかし、もちろん、これまでの苦難を乗り越えてきたジャネットを殺すことはできません。

ALIFE(人工生命)という分野を研究していると、そもそも何がLIFE(生命)で何がLIFEではないのか?

LIFEの定義をはっきりさせないと、ALIFEが実現できたかどうか分からないのではないか?という質問を受けることがあります。

もっともな質問です。ですが、この問題に答えることはとてもむずかしいのが現状です。実際、生命科学者の中でも生命の定義について合意していることは、細胞膜をもつこと、代謝できること、自己複製できること、ぐらいではないでしょうか。

ですが、現在のAIの進展を考慮すると、ALIFEに必要な定義について再考すべきだと思わせるものがあると感じます。たとえば、ジャネットをみていると、AIの進化の先には、LIFEの定義に関する異なる視点があるのではないかと思います。

ALIFE研究者の池上高志さんは、「実は私はロボットだった」と3年間交際しているパートナーにある日、告白されたらどうするかという問いに対し、
「ああそうか。じゃあ、中身は機械なんだ。どうなっているのかみせて」と聞く人はいないだろうと言います。代わりに、「なぜ言ってくれなかったのか?」と尋ねるのではないでしょうか。

つまり、相手がロボットであれ人間であれ、相手との信頼関係が築けており、愛情を育めるコミュニケーションが取れる場合には、それはLIFEと考えることができるのではないかということです。

ALIFEは「あり得たかもしれない生命(Life as it could be)」を研究する学問です。それは同時に、LIFEの定義を新たに作るということにもつながるはずです。

ベッドに横たわりながらときどきTwitterを覗くと、数日前に公開されたChatGPTを使ったさまざまなサービスがタイムラインにたくさん流れています。ALIFEの実現が近い未来にあるのかもしれません。

では、また!ciao.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?