「台風だって心を痛めてさよならするだろう」

台風のニュースを見ていて、待ちに待った“地元に帰って大好きな人たちに会う計画”が壊れそうになり、毎年のように大事な時に限ってやってくる台風を恨んだ。ニュースを見ていると同じ心境の人達は沢山居そうだ。
はぁ。ほんとにもう。そんなこと思いながら夜の散歩に出かけようとイヤホンを装着しプレイリストをシャッフルすると、星野源さんの「ドラえもん」が流れた。 テンションが下がっていて、やっぱり今日は音楽はいいやとも思いながら何となく止めずにに聞いていると、今まではさらっと流していた、というか、ちゃんと聞いていなかった歌詞が心に入ってきた。

〈 台風だって心を痛めてさよならするだろう〉

何故か、台風が少し可哀想に思えた。よく考えてみたら台風だって嫌われたくはないし人の命を奪いたい訳でも最高な計画の最悪な邪魔な仕方はしたくなかっただろう。そして台風はこの歌詞の通りずっと居続けることはなく必ず去る時がくる。顔を出してみたものの誰にも喜ばれず嫌われ罵声をあびて世界中どこへ行っても悪目立ち。地球上に居場所がない。どんな気持ちなのか。
とんでもない被害が多く出た中で加害者側の台風に寄り添うような文章は大変不謹慎になってしまうが、今夜は少し、悪役な台風を想っている。

さて、わたしは自分の周りに被害が及んでも、わたしの計画が見事に崩れて友達にも家族にも会えなくなっても、他人事じゃなくなってもそんなこといっていられるのだろうか。

坂口有望さんの「おはなし」という曲の
〈 いつもと同じ時間に流れるニュースは悲しい出来事ばかりで少し真面目に見たんだけど
心の奥の何処かでそっと思っているんだ
あぁわたしじゃなくてよかった
あぁここじゃなくてよかった〉という詞が浮かんだ。

まさにわたしの心境はこっちなんじゃないだろうか。

散歩ルートの折り返し地点。「ドラえもん」が終わり「おはなし」を口ずさみながら帰る。
家に帰ったら、キャリーバッグに荷物を詰めよう。

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