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(創作・詩)平良くんの秘密

平良(たいら)くんの家で出される紅茶は
いつもちょうどいい温度で、
少しだけ甘くて、
たまに、ショウガの味がして、
たまに、ハチミツの味がする。

ある日曜日の昼下がり、
平良くんは
電車を乗り継いで、
「秘密の特等席」に連れていってくれた。


二月なのに緑のある屋上庭園。
ビルや大きな神社の鳥居が見える。
空には雲一つない晴れた日和。

そこで出される紅茶は、
ローズヒップや
レモンジンジャーもある。
アイスティーもホットティーも
たくさんの種類がある。
紅茶に飽きたら珈琲も。

三段重ねのお茶菓子は
どのお菓子も小さなお城みたい。
果物でお化粧されて、
キラキラまぶしいんだ。


平良くんは
おうちでも紅茶を入れる時、
空気の匂いをかぐという。
その日が雨か晴れかで
お茶の温度をかえる
茶葉もかえる。

平良くんは
わたしにキスをするときも、
そんなふうにやさしい。
いつもやさしいから、
幸せなのに、涙がなぜか浮かぶんだ。


(これはもちろんフィクションの詩です。
 写真は九段会館です。)


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