20200120夢 楓ちゃん

楓ちゃん。行ったり来たりする意識。わたしが今、抱かれているのは恋人。わたしが今、夢の中で抱いているのは楓ちゃん。楓ちゃんは恋人かもしれないし、恋人ではないかもしれない。

狭い集落。家の前には神社。今日は祭りだから庭に集落中のいろんな人がいた。祖母はちゃぶ台を出して、ゴザを引いて、座布団をだして準備をしていた。家の中で話しているのは親族で、そこの会話に入るのは面倒で庭に出た。ゴザに自分の席を確保し、手持ち無沙汰で周りを見渡す。愛されないことを他人のせいにする人。無邪気に走り回る子ども。性善説を信じる人。人の造形を批評する人。他者の視線が気になった私は自分の顔を撫でてみた。何となく柔らかい毛が頬の辺りを覆っているような気がして、今まで気がつかずにいたのではないかと怖くなり、毛抜きと鏡を探すのに席を立った。

戻ったら、確保しておいた席に男が座っていた。私のことをこの男はきっと好きなのだと思った。なんでそこに座ってるの、とその男を小突いた。小突かれた男は満更でもないようだった。私はその男と向かい合わせになるように男のあぐらの中に座った。男は私と触れているのが嬉しいみたいで、少し私をからかうような褒め方をして私の腰のあたりに掌を優しく下心を持ってあてがったり、手のひらの大きさを測るフリして握ったり、鼻を私の耳の裏に擦り付けたりしていた。私はその男を男としてしか知らないし、その男は私のことを女としてしかみていなかった。

楓ちゃんがみていることに気がついた。気まずくなって男の膝から降りた。呆れたような笑いを浮かべて、楓ちゃんは私に、好みの男がいるとそういうことしがちだよね、と言った。汗が止まらなかった。楓ちゃんをどうにか怒らせたくなくて、嫌われたくなくて、傷つけたくなくて、楓ちゃんに少しずつ近づいて、手を握った。拒否されなかったから楓ちゃんの膝に座った。向かい合わせで、さっきの男にするよりもぴったりと楓ちゃんの体に自分の体を委ねた。男の体と女の体の柔らかさはやっぱり違った。贖罪みたいに、すきだよ、とささやいた。楓ちゃんは黙っていた。楓ちゃんは私にちゃんと好かれていると実感したら悲しく無くなってくれるのかなあと思った。楓ちゃんを、ちゃんと愛せるだろうか。不安になりながら、楓ちゃんの感触に癒されていた。

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