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自転車ばっか乗ってる奴は・・・

昨日、横断歩道で轢かれかけたときのことを思い出しながら、いろいろなことを考える。横断歩道を青信号で渡っている僕のところへ反対側から右折する自動車が猛スピードで突っ込んできた。急ブレーキを踏んでちょっと浮き上がりながらぶつかる1メートル手前で止まったとき。漫画のように車が前屈するようにしなってバウンドしながら止まるまでがスローモーションだった。なんとなくぶつからない確信みたいなものはあって、けっこう冷静にその様子を観ていたが、ふと我に返ってから怖くなった。そこまでなら良かったのかもしれない。俺たち、ぎりぎりセーフだったじゃん! って、ハイタッチして別れても良いくらいの幸運だ。
しかしその後、その場に立ち空くした僕は「なにすんの!?」と運転席を覗き込む。そしたら相手が手の甲をこっちに向かってチャッチャって「そこを退け」の仕草。それでブチ切れちゃったのね。

さて、ここで起こっていること、運転手サイド。
なんらかの事情で非常に急いでいる。信号が青に変わったとき、対向車がなにやらグズグズしている、これは先に右折するチャンスだ。アクセルを踏み込んだら、横断歩道の自転車を見落としていた。急ブレーキで止まり、冷や汗。見ると相手は、ダサい防寒着を着こんで背中のリュックから長ネギがはみ出している60手前のオッサンだ。いつまでそこに突っ立ってんだよ! 対向車が来ちまうじゃネエか。下がろうにも後の右折車線にはすでに後続車が居る。気がつくと、このことが原因で動けず固唾をのんでなりゆきを見守っている他の車たち。こんなとこで騒ぎになったら間に合わないんだよ! だいたいオマエら自転車乗ってる奴はいつも邪魔くせえんだよ!!!
自転車側からすれば、もう信じられないくらい理不尽な話だが、もし逆の立場だった場合、ここまでではないにしても自分の中に似たような感情が芽生えはしないだろうか? こちらは、車のフレームに守られた世界。目線も相手より上。敵は、もし殴り合いになっても勝てそうなジジイ。なによりもこっちの方が圧倒的にスピードが速い。最悪、ひき殺して逃げてやる。
もちろん、そんなことは思わないが、信号のない横断歩道で車の流れが途絶えるのを待っている子供や老人が居るとき、必ず止まっていたか。横目で見ながら通り過ぎた後で、あ、しまった。止まるべきだった。と後悔したことは1度や2度じゃない。知らないうちに自分の方が優位である、優先されるべきであると思ってしまっているのではないか。

もし乗っているのが戦車や装甲車だったら、どんな心理状態になるのだろう?・・・・

続いて、自転車サイド。
このスーパーで買い物して帰るとき、家までは非常に近いのだが、そこまでの歩道がどこもギタギタ。たぶんお金のない地方都市なのだ。朽ち果てかけた橋の欄干さえ治せない。そうでなくてもあちこちで崖崩れが起こっていて、それを治すので手一杯。歩道の舗装など出来るわけがない。かといって、車道を走ろうとすると、路肩もガタガタ、片側一車線な上に交通量の多い車道を走るのは、まあ大人一人なら良いけど、子連れの場合、やはり危険である。ドライブスルー(ケンタッキー)の出口のところからやはり片側1車線の道路を横断して裏道の路地へ入れば、ほとんど車に出会うことなく家まで帰れるのだが、以前それをおまわりさんに注意され、あっちの横断歩道を渡れという。仕方がないので、道路右側ガタガタの歩道を50メートルくらいエッチラオッチラ行って、横断歩道を渡る。そこからは閉店したコンビニの駐車場を抜けて裏道までスイスイ。昨日は子供が一緒じゃなかったのだけれど(それも幸いだった)そのルートが買い物帰りの習慣になっている。信号が青に変わって、ようやくペダルを漕げる。と横断歩道に入ったところ、前方から右折の車が突っ込んできた。
こちらに落ち度は、ない。薄暗くなってきているので、かなり明るい前照灯をつけているし、うるさいくらいのテールランプも。「なにしとんじゃわれ〜」睨みつけると、手振りで「とっととそこを退け」・・・
明らかに相手がおかしいのだが、ちょっと待てよ。自分が怖い思いをしたのだから復讐しなければならない。相手が間違っているので、正してやらなければならない。無礼な奴は、ぶち殺しても良い。そういう心理状態の自分の中に燻っているその感情は、果たしてそれで良いのか? なにか大切なことを見落としていないだろうか。
激怒して睨み返した僕が、あのまま退かず車の前に立ちはだかり続けたらどうなっただろうか? 業を煮やして降りてきた運転手に自転車ごと投げつけ、ボンネットの上に乗り、SPDの靴底でボコボコの傷だらけにして、フロントガラスを蹴破っていたかもしれない。と思うと、ぞっとする。(もちろん、そんなことはしませんが)

もしその時、銃器を持っていたら、どうなっていただろうか?

あれからずっと頭の中で、先日ご一緒した あだち麗三郎さんから頂いたCDの最後に入っている「自転車ばっか乗ってる奴は〜」って言う曲がエンドレスで鳴っている。

歳をとって、だんだん判断力が鈍く、反射のスピードも落ちてくるだろう。自転車に乗るときも、車を運転するときも気をつけよう。

明日から交通安全運動が始まるらしい。捉えず、近所の警察署まで、あそこのドライブスルー出口あたりに信号機つき横断歩道の新設と(道を挟んだ向かいにスーパーの駐車場もあるので、需要は、かなりありそう)問題の交差点に時差式の右折信号増設をお願いしに行ってこよう。そうでなければ、きっとまた同じような事故が起こる。子供が巻き込まれなくて、本当に良かった。

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