見出し画像

なぜ友人のS君はOculus Questを使わなくなったのか

…っていうタイトルの記事を下書きだけ作って放置していたら、いつの間にかS君がめっちゃVRにハマっていたということが起きてしまったので、これは前編ということにして、今度別に「なぜS君はやっぱりOculus Questを普段使いするようになったのか」という後編を書きます。(前説終わり)

僕はVRが大好きで、みんなにもVRを好きになってもらいたいと常々思っているので、ちょっと素養がありそうな人を見つけるとすぐ軽率にVRヘッドセットの購入を勧める傾向があります。
幸いにも僕の友達はちょろい、ではなく理解がある人が多く、何人かの方にヘッドセットを買わせることに成功してきました

ところが、最近気がついたのですが、実はみんな買ったは良いものの使っていないのです、VRヘッドセットを
これは悲しい。胸が痛い。使わないものにお金使わせちゃった罪悪感でいっぱいです。そんなに安い買い物じゃないですしね。

ただ、ただですよ、これ僕の友達だけの問題なんですかね。実はそもそもVRヘッドセットって、買った人ほとんどタンスの肥やしにしてるんじゃないかという疑惑、ありませんかね。
VRChatなどに入り浸っている一部の人を除いて、一般の方々がVRヘッドセットを定期的、日常的に使っている図があまり想像できないのです。

僕らVR界隈の民はよく「VR HMDなかなか普及してなくてー」とか言いますが、普及の前に「いま持ってる人が使うようになる」っていうのが結構大事なのでは?と思ったりします。ユーザー獲得も大事だけど、リテンションしないと意味ないよみたいな話。

実際、VR HMDを持っているVR界隈では無い友人に聞いてみたところ全員即答で「一切使っていない」と言っていました。
そこで、彼らに色々とインタビューしてみた結果をみなさんにも共有したいと思います。n=4なので一般的な意見かは不明ですが、なにか示唆があれば幸いです。

そもそもなんで買ったのか?

VR HMDを買った理由は大きく2つあるようでした。

ひとつが新しい技術として面白そうだったから。もうひとつがゲームをしたかったから。
前者がいわゆるガジェット好き・アーリアダプター的な思考で、後者がゲーマー的思考です。VR HMDを買う動機としてはこの2つである人がかなり多いのではないかなと思います。

今回インタビューした人たちはPlayStation VRを持っている人、Oculus Goを持っている人、Oculus Questを持っている人など様々でしたが、いずれも共通しているのは「買ったばかりのときは少し使ったけどもう全く使ってない」という点でした。なぜなのか。

なぜVR HMDを使わなくなってしまったのか

話を聞いたところ、VR HMDを使わなくなった理由は大きく3つに分かれるようです。

「生活が適していない」「準備がめんどくさい」「やりたいものがない」というものでした。

生活が適していない - これは、家族と一緒にいる場合や同居人がいる場合、自分だけVR HMDをかぶって別世界にいるのが気まずい、あるいはそれを同居人が嫌がる、というものです。
テレビでゲームをする分には「何をしているのか」を共有できるので問題ないが、VRの場合何をしているのかも見えないのがなんとも居心地が悪いと。また、小さい子供がいる場合などはVRで視界が覆われてしまうのは子供の様子がわからず危険を伴うという意見もありました。
やはり現在のVR体験の大半はひとりで行うものなので、共同生活との相性は悪いようです。

準備がめんどくさい - これもよく言われることです。特にスタンドアローンでない場合、セットアップの段階で心が折れそうになります。また、ある程度広いスペースが必要なので、毎回リビングのソファーを移動しないといけないという方もいました。たしかにそれはめんどくさそう…
スタンドアローンでも、いざ使おうとすると充電が切れているという意見がありました。これは私も何度も経験がありますが、普段から充電しておかないとたまに使うとき充電が切れていて、充電が終わった頃には使うモチベーションが無くなっているということはよくあります。

やりたいものがない - まさにです。ただ、これに関してはもっと深堀りして聞いてみたところ、やりたいものがないというよりやりたいものがあるのか知らないという感じでした。VRに関する情報が全く入っておらず、そもそもどういったソフトがあるのかを知らないということです。

こういった結果として、Netflixなど他の簡単な娯楽に流れてしまう、PS4を起動してもVRじゃないゲームで遊んじゃう、という結果になるようです。(ちなみにVR版のNetflixに関してはログインがめんどさくてやめたという意見がありました)

また一部、酔うからやりたくないという意見もありました。やはり、一度でもVRで「酔ってしまう」経験をすると、またお金をだしてVRゲームを買っても酔ってしまうのでは?という懸念が生まれて手を出しづらくなるようです。これは全部バイオハザード7が悪い。

何があれば使うと思うか

使ってない理由が分かったので、逆に何があったらVRヘッドセットを使うようになると思うかを聞いてみました。

色々な意見を聞きましたが、まとめると2つ。「リアルのきっかけと紐づく」「新しい話題性のあるコンテンツの情報を知る」
これらを満たしていると、上に挙げた様々なハードルを乗り越えて「しゃーない、HMDかぶるか」となるようです。

リアルのきっかけと紐づく - リアルでの行動・きっかけにVRが紐付いていればやるのでは?という話です。具体的には、例えば友達が遊びに来たときにVR体験させたいという意見が複数ありました。
普段遊んでいないとはいえ、VRがすごい体験であるという共通認識はみな持っているので、ぜひ友人にも体験してほしいということです。さらに言えば、せっかく買ったVRヘッドセットを自慢したいという気持ちもあります。
ただ、実際には普段使っていないため、いざ友達がきたときに何をさせればよいのかが分からない、セットアップの方法を思い出せない、といった感じで使えていない事が多いようです。(結果として、短時間でできるコンテンツとしてPSVRでKITCHENやらせたりしてVR嫌いをまたひとり生み出すのです)。
これ以外にも、こういうときにVR使うんだよ!っていうリアルのライフスタイル内でのトリガーを見つけてあげる、そのときにすべきことを教えてあげるというのが鍵になると感じました。

新しい話題性のあるコンテンツの情報を知る - これは単に「良いコンテンツがあればやるよ」ということではなく、「新しい話題性のある」コンテンツの「情報を知る」とあえて書いています。どういうことでしょう。
まず今回話しを聞いていて感じたのは、現在VRヘッドセットを買っている層は割とミーハーであるということです。よく言えばアーリーアダプター。なので、「新しい」「話題になっている」ということ対して感じる価値が高い。もちろんコンテンツ・体験自体の質も大事ですが、それ以上にTwitterで話題になっているものは最低限体験しておきたいみたいな感覚があるかと思います。
あと話題性の種類として「超大作ゲーム」みたいな話題性よりも、「学術的に新しい」みたいな方が刺さる印象があります。実際、今回話しを聞いた方のひとりがBeat Saberを知らないのに「けん玉できたVR」を知っていたりしたのは驚きでした。

もうひとつ、「情報を知る」というほう。これが今回話しを聞いてもっとも衝撃だったのですが、VR界隈じゃない人には驚くほどVR界隈のアップデートが伝わってないです。想像の1000倍くらい。具体的な例として、上にも書きましたが、「PSVR持ってるけどBeatSaber知らない」「Oculus Go持ってるけどOculus Quest出たのを知らない」みたいな人が普通にいました。

今回インタビューした方の一人に言われて衝撃だったのは、「VR界隈の外の人からしたら、この二年間VR業界でのアップデートなんてひとつも聞いてないよ」という意見。まじかよ、って思いました。VR界隈のひとはほぼ毎日新しいニュースなんかしらあると思いますし、そのたびにTwitterのTLが盛り上がるので「世界中の人がVRのニュースで盛り上がっておる!!」と思いがちですが、界隈の外側には思ったよりも大きな溝があるようです。
ただ、逆に僕も「ここ2年間のブロックチェーン業界のアップデートって何があった?」って聞かれたら、「ビットコインが上がったり下がったりしてた、ような…?」っていうくらいでなんも分からないので、それはそんなもんなのかもしれません。

まとめ

そんなわけで、一般人にはVRヘッドセットを使うハードルはめちゃくちゃ高い。ハードルを乗り越えるきっかけが無く、乗り越えたいと思うコンテンツがあることを知らない。という現状です。

僕はVR(もちろんAR/MRもですが)は単にゲーム楽しいという以上に、新しいメディア媒体としてライフスタイル全体を変えていく存在であると思っているので(ここらへんの話は別のnoteでいつか書きたい)、「日常生活の中でVRが活躍する場面」というのをもっと探っていきたいです。

前説に書いたように、近いうちにこの続編を書きたいと思います。

おしまい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?