2019年新譜で好きだったもの

2019年の新譜で特に好きだったものを。全12枚。リリース日順。
旧譜は別カウントします。
また、ここに掲げたアルバムは全て購入しています。

When I Get Home / solange ; 1st Mar. 2019
前作を軽く越えてきました。Flying Lotusの新作と同様に、短く抽象度が高い曲を高密度で押し流す構成に聴こえたのですが、全体としてひとまとまりな印象を受けたのはこちらの方でした。
一つ文句を言いたいのは、CDもしくはAIFFで売ってくれない所です。

Hochono House / Haruomi HOSONO ; 6th Mar. 2019
先行シングルの「薔薇と野獣」だけなら2019年ベストなのに。近作のようなオールドタイミーなアレンジが残っている部分はどうしても是とできませんでした。特に「終わりの季節」のインストアレンジがアルバムに入っているのは積極的に残念です。これが「毎月1曲づつ、いろんなアレンジでリリースですよ」とされていたら受け取り方が違ったと思います。

steamroom 45 / jim o'rourke ; 26th Apr. 2019
今年リリースのsteamroomシリーズではこれが一番好みでした。何がどう違うのかと言われたら、最初に出てきた音色が好みかどうか、でしか選んでいないのですが。

Down the Valley / NOT WONK ; 5th June 2019
パンク、という触れ込みで聴いたけど「ネオアコじゃん、これは」と。80年代末期、こういう音はネオアコ扱いだったよなあとちょっとだけ遠い目に。エレクトリックギター(多分ストラト)の音が非常によいと嬉しくなりますね。

Across the Empty Lot / Shuta HIRAKI ; 9th June 2019
ミキサー車の動作音のフィールドレコーディングをほぼ音色加工無しで構成した、だそう。
反響音が印象の多くを占めるのだろうとは思うのですが、ここまで元を想像させない音色に変わるものなのかと驚きました。中域がうねる音像は個人的大好物ということもあり、本作を2019年のベスト1に掲げます。

Fear Inoculum / TOOL ; 30th Aug. 2019
個人的に10000 Daysが(その前2作と比較して)あまり好きではなかったのと、「大物の復活作」というものに対する冷めた感情が相まって、事前期待はなかったのですが、これはかなり好きになりました。
これも、全曲版の CD or AIFF売りをしてくれない所に文句を言いたいです。インタールードも含めて手元に置きたいのに。

mint exorcist / Final Spank Happy ; 1st Oct. 2019
ストリーミング版を聴いて後半を気に入ったならCD版を入手されることをお勧めします。未公開の2曲が入るとアルバム全体の印象が変わる、と評されているようですがその通りかと。未公開の内の1曲「共食い」が最も鬱々とした素晴らしい楽曲でありアルバム全体の重心をさらに下げていると思っています。

Ode to Joy / Wilco ; 4th Oct. 2019
アコースティック多様で地味だけどちょっと聴けば凝っているのが分かる、という親切な作り。

Scanning (10CD box)/ Roland Kayn ; 9th Oct. 2019
台風19号とその被害の記憶に強く結びつく作品になりました。
大作なので聴取時間を確保すべく車の中で聴くことも多かったのですが、被災した場所(堆積した泥、ひしゃげた金網、崩れ落ちたブロック塀、流された車、閉鎖された店舗、大量の廃棄家財などなど)を通る際のBGMとして荒涼とした音像があまりにもハマってしまい、ここまで自分は悪趣味だったのかと驚いたものです。本作もjim o'rourke関連ではあるのですが、本人の4CDボックスは温和な音色であるのが対照的でした。

エアにに / 長谷川白紙 ; 13th Nov. 2019
一聴してhoney oatに近い感触があったのですが、カンタベリー色は無し。「過不足ない」という表現よりも「飽和しない詰め込み感」という表現の方がしっくりきます。

To Magnetize Money and Catch a Roving Eye (4CD box) / Jim O'rourke ; 20th Nov. 2019
初回販売分を購入できず再入荷分待ちだったので2019年内に間に合うのかと思いましたが12月初旬に無事到着。
本人のスタジオ「steamroom」で録音された楽曲を集めたもの。未発表曲集というよりもsteamroomシリーズとして録音された素材を用いて丁寧に作り上げた別ヴァージョンという印象があります。
ボックスの方ではPt. 3が特に好きです。フィールドレコーディングによる音が多めなのが個人的好みなのかどうか。

WHO / the Who ; 22nd Dec. 2019
All this music must fade!
出だしで掴まれ、"what's yours is yours and what's mine is mine" のコーラスでとどめを刺されました。このアルバムを全肯定します。
あちこちにある元ネタ探しは詳しい方にお任せします。


M1グランプリは見ていないのだけど、TLでは「むやみに怒らない」「攻撃しない」というものが時代の気分なのではないか、という論が流れてました。Scanning (10CD box)/ Roland Kaynは過去録音なのでさて措くとして、今回あげたどのアルバムもどれかに該当しそうな気がしてます。TOOLですらガツガツと演ったりシャウト多用だったりという部分から一歩引いているように聴こえます。
また、こうやってまとめていて、solange、wilco、TOOLのそれぞれの新作に受けた印象が似ているのは自分でも発見でした。密度の高いものをじっくりと押し流していく感じですね。ストリーミングの時代とかアルバム単位というものへの懐疑的な見方というのはあるでしょうが、この感触はアルバムという単位でしか得られないのでは。

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