妄想劇場 11話
第11話 「真夜中の訪問者」
「社長、あの人知り合いっすか?」男が訊ねた。
「うん…彼女の事は私の親友からいつも聞いていたんだ。今日、やっと訪ねてきたんだよ」
橋爪が嬉しそうに笑った。
「ひょっとして、例の…あの案件っすか?? 」
男がひっきりなしに訊ねた。
「うん、そうだ。ようやく彼女に辿り着き我々が出会った。西田がきっと、我々と会わしてくれたのかもな…」遠くを見上げ、今度は寂しそうに笑った。
「あれって、かなりヤバイやつっすよね?社長、どうしますか?あの人に…伝えるんですか?」
「うん…まぁ、いづれは伝えるつもりだったからね。今までは時期尚早で様子を見ていたけども…何か、西田がね。今だって言ってる気がするんだよ…」
橋爪が呟いた。
その姿を切なそうに男が見つめた。
ミユキは家に着いてから、色々と考えていた。
「橋爪さんが、何かを知ってるかも知れない。だとしたら、西田さんの突然の死も犯人も、見付けられるかもしれない…」
不安な気持ちに押し潰されそうになっていたが、一筋の光が見えたようで、ミユキは安堵していた。
「とにかく、橋爪さんからの連絡を待つしかない。今はそれしかないんだ…西田さん、あたし絶対に西田さんを死に追いやった犯人を見付けるから。だから、あたしに力を貸して…」
両手を固く握り、目を閉じた。
ミユキは久しぶりに湯船に浸かっていた。
「毎日慌ただしくて、こんなにゆっくりお湯につかったのって久しぶり…ふぅ…」
身体が芯まで温まるのを感じながら、近頃の出来事に思いを馳せていた。
「ガタン!ドン!ドン!ドタン!ゴトン!」
大きな物音が外から聞こえてきた。
「誰?誰なのー!!」
ミユキは湯船から出て、慌てて風呂場の窓を開けた。
「ガサッ、ガサガサササッ!!」
物陰から人らしき物が動くのが見えた。
「ちょっ、ちょっと!待ちなさいよー!」
ミユキはバスローブを羽織
り慌てて庭に出てみた。
しかし、物音がした方向には誰の姿も見えなかった。
一体…誰?こんな夜更けに…
ミユキは震える身体を抱き締めながら、その場に立ち尽くした。
脚本家 カザハナ