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『ハマのロマン砲』から『中日の救世主』へ……細川成也をヨロシク

 2019年6月21日。私は朝からひとり、横浜スタジアムにいた。当時は、まだ横浜スタジアムでファーム戦の試合をしており、年に2〜3回しかないそれを、おひとりさま観戦するのが好きだった。私のお目当ては、細川成也。現中日ドラゴンズの選手だ。

 ここまで読んでもらうとわかると思うが、私は横浜DeNAベイスターズのファンだ。今回、フレッシュオールスターに応募するにあたり、どうしても細川のことを書きたかった。中日に移籍したからといって、中日に鞍替えするつもりはない。だから、最後に書きたかったのだ。

 さて、話を2019年に戻そう。11時プレイボールで、夜には一軍の試合が組まれていたため、当時監督だったラミレス氏ら首脳陣も見守る中で行われた。試合が動いたのは、3回。打撃好調だった細川が、バックスクリーンへ2試合連発となる先制の9号スリーラン。さらに度肝を抜かれたのは、4回の打席だ。実は、3回のスリーランのことは正直あまり覚えていない。それは、4回の10号ツーランがあまりにも強烈だったからだ。白球は、左中間のナイター照明を飛び越えて、場外へと消えていった。(ちなみに、飛距離140メートル)当時20歳。ルーキーの頃から密かに応援していた細川が、めったにファーム戦を観にいけない私のために、成長を魅せてくれた瞬間だった。
 試合は、10-1で快勝。特大ツーランは本人も「プロに入って、一番感触が良かったです」と語っていた。この試合後の時点で、10号は安田(ロッテ)を抜いてリーグ単独トップ。打率.305、35打点と各部門で高い数字を残していた。
 視察したラミレス氏も高評価。「彼は将来、この球団を背負って立つ選手」とコメントしていた。ただ、現時点では1軍昇格の予定はなく、「(ファームで)試合に出て、4打席立つことが必要だ」とさらに実戦経験を積ませたい意向であった。
 開幕からファームで4番打者に起用され、6月にファーム月間MVPを受賞。規定打席未満ながら、チーム最多(リーグ3位)の15本塁打、打率.293という好成績を収めた。ちなみに一軍公式戦では36試合の出場で、打率.222、1本塁打を記録している。
 
 当時、子どもがまだ小学生で、自由が効かない横浜のおばちゃんは、平塚や横須賀のファーム戦に足を運ぶことはほぼ不可能。唯一、ハマスタに来てくれた時にしか応援に行けなかった。だから、早く一軍に昇格して、ハマスタでの活躍を観たかったのだ。
 今年こそ、一軍でブレイクする。そんな期待を胸に迎えた2020年。2019年末からの新型コロナウイルスの大流行で、プロ野球の開幕すら危ぶまれたが、そんな心配をよそに、イースタン・リーグ公式戦のほぼ全試合に4番打者で出場。10・11月のファーム月間MVPを受賞した。シーズン全体でも最終規定打席へ到達した末に、最多本塁打(13本)、最多打点(53打点)、最高出塁率(.448)のタイトルを獲得した。だからこそ、私は余計にモヤモヤした。いつまでファームの大将でいるつもりや。はよ、一軍で結果を出さんかい! と。
 そして迎えた2021年。帰国が遅れた新外国人オースティンの穴埋めとして、期待されての一軍入りを果たす。ついに来た! 今年、細川はブレイクするんや! と横浜のおばちゃんも期待した……が、期待に応えることができずに、横須賀に帰っていった。その年の冬、私は初めて横須賀に行き、たまたまこのポスターをみつけた。
 『見逃しません絶好球!』
 一軍では、ずいぶん見逃しているようだ。思わずポスターに「大丈夫か? 細川」と呟いた。
 2022年シーズンに入ると、ずっと『今年こそ、ブレイクする』と言い続けていた私が、ついに『今年あかんかったらヤバイ(戦力外)で』と言ってしまった。なんとか開幕一軍入りを果たしたが、4月21日には早くも登録を抹消され、本当に見納めかもしれない、と将来を不安視した。
 結局、一軍での結果を出せないままシーズンを終了した細川であったが、2022年12月9日、現役ドラフトで中日ドラゴンズから指名され、移籍することになった。ずっと追いかけていた選手の移籍ではあったが、ショックよりも拾ってもらえて良かったという、ホッとした気持ちが勝った。
 現在、細川は一軍でクリーンアップを任され、5月にはJERAセ・リーグAWARD月間大賞も獲得した。中日の某ベテラン選手のtwitterで『細川が、店のご飯を全部食べてしまった』と紹介されており、可愛がっていただいているようで、中日に移籍して良かった以外の言葉が見当たらない。やっぱり細川は、私がずっと期待していたような、素晴らしい選手だったのだ。ただ、昨日の友は今日の仇。ハマスタではお手柔らかに願いたい。
 good-by細川。『ハマのロマン砲』と呼ばれた男に幸あれ!

 

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