川澄ファイト2019

1999年6月4日の『Kanon』の発売から、かれこれ20年の時が流れた。

その間、いろいろあった。

しかしそれはそれとして、今宵もヒロインたちの闘いは続いている。
「もぐもぐ」
川澄舞は夜の校舎で、今夜も食べていた。
確か牛丼ばかり食っていた気がするのだが、どうも書き手も記憶が定かではない。
何しろ20年だ。
「あははーっ、舞は相変わらずよく食べますねーっ」
これは舞の親友の佐祐里である。
だいたいこんな字だった気がするのだが、やはり記憶がおぼつかない。佐裕理だったかな……?
是非もない。何せ、20年だ。
まあとにかく、川澄舞は夜の校舎で何か食べながら、魔物と戦っているのだ。
20年も経つが、未だに舞シナリオの内容がいまいち腑に落ちていない筆者だが、だいたいそんなものだ。
そこへ通りすがりのヒロインたちが現れる。
「UGUWWW! ボクのたい焼きはあげないよ!」
そう雄叫びをあげるのは、食い逃げでおなじみ月宮あゆ……だったっけ? たぶんそうだ。
それにしても食い逃げが売りとは、今だったらコンプラ的にいろいろ大変だったことであろう。
20年だ。
「起きないから奇跡って言うんDEATHよ!」
続いて推参したのは、ストール姿の病弱そうな少女である。
……えーと、名前なんだったかな。しおり……詩織? うん、たぶんそうだな。
なんかこう、アイスとか食べながらの参上である。
「わたしは水瀬名雪!」
わざわざ名乗りながら登場したのは水瀬家の娘のほう、名雪である。
まず名乗ったのは、どんな喋り方だったか筆者がいまいち記憶にないからに他ならない。
そして、どんじりに控えしは――
「AUUUUU! 肉まん! 肉まんンンンン!」
奇声と共に出現したツインテールの少女である。
やべーわ、全然名前も話し方も出てこないわ。
「そういうこともあるでしょうね」
とフォローするのは天野美汐である。なんでサブヒロインの方覚えてるんだよ。
……真琴? 真琴だった気もするな。
まあとにかく、あゆ・栞・名雪・真琴らが四人がかりで舞を包囲する。
なんでそんなことをするのかというと、この話の元ネタが『ウルトラファイト』であり、登場人物は意味もなく闘わなくてはならないからだ。
「――ぽんぽこたぬきさん」
舞が呟く。
意味はよくわからぬが、とにかくすごい自信だ。
「UGUWWW! その牛丼も食い逃げしてやるメッシャアー!」
「そんなこと言う人、ド畜生DEATHウウウゥ!」
「DAAAAAYOOOOOMOOOON!」
「AUUUUUU!」
思い思いの奇声を発しながら舞に襲い掛かるヒロインたち。
「私は――」
手にしていた牛丼弁当を置いた川澄舞が、ずんばらりと剣を抜く。
なお原作では抜き身の剣だった気がするが、そんなことは些細なアレであるから気にしてはいけない。
「――魔物を狩る者だから」
――閃き。
――断つ。
――突く。
――抉る。
――殴る。
「AYUUUUU……!」
あゆたちはことごとく斃れた。
俗に剣道三倍段といい、得物のある方が有利なのは自明である。
これにて決着、かと思いきや。
「あらあら」
水瀬家の母親のほうが現れた。
「どうぞ、召し上がれ?」
母親が手渡したのは、当時たいへん人気だった謎ジャムである。
「もぐもぐ」
牛丼にジャムをかけて食べた舞は、ふと止まり、音もなくその場にくずおれた。
「ジャムは剣よりも強し――うふふ、名言ね、これは」
微笑む秋子さん。そう、秋子さんだ。ここに至ってやっと名前を思い出した。
「はちみつ……くまさん――」
ともあれ、この話はここで終わる。
とりあえず最後は謎ジャムで締める、というのが往年のKanonSSの王道だった気がするからに他ならない。
「あははーっ、舞は食いしん坊ですねー」
佐佑理さんの笑い声が夜の校舎にこだまする。
それでは、また30周年でお会いしましょう。

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