宮坂昌之大阪大学名誉教授の私のチラシへの批判への反論
https://www.facebook.com/100003403973006/posts/4786718511451567/?d=n
宮坂昌之大阪大学名誉教授が2022.3.13のFacebookで私のグラフ画像の批判を行いました。以下それに対する反論です。
はじめまして。宝塚のある眼科医、宮澤大輔です。(総合診療科経験もあり現在喘息診療もしておりますが)反論申し上げます。
▼コメント欄での宮坂先生の発言:この図はもとのものではなくて、ポスター作成者がデータの一部だけを抜き出して作ったものと思われます。
➡データの一部だけを抜き出したのではありません。論文のこのグラフを表示方法を変えただけで、データはこのグラフと全く同じです。
▼このポスターは宝塚のある眼科医が自作して各家庭に配布している
➡いえ、配布はしておりません。ツイッター等で公開しているだけです。
▼ニューヨークの保健当局によるものだと言い、あたかも公共性があるかのようにうたっていますが、そうではなくて、そこに属する研究者が出しているデータであるものの、当局の意見を反映しているものではありません。
査読前論文であり、このデータが広く認められているわけでもありません
➡公共性があるかのようにうたってはいません。しかしNY保健局に属する研究者が発表したことは信ぴょう性に関して参考になるものであると思います。
▼この論文は査読前論文であり、このデータが広く認められているわけでもありません。
➡私は上記米NY保健局研究者からの論文であることをふまえ、査読前であってもリスクとして十分認識する価値のあるデータだと考えております。逆に査読済みなら良いという訳でもないと思いますので。(例えばhttps://bit.ly/3CDUbjK)それに、ワクチン2回接種2週間後から家庭内の二次感染予防効果が逆にマイナスの論文 https://bit.ly/3MQ3JNs
3か月後に感染予防効果が逆にマイナスになる論文はあと2つhttps://bit.ly/35O7DWr https://bit.ly/3tT8FIz
プレプリントで出ていますが、いずれも査読は完了していません。恐らくこの論文も社会的影響が大きいことから今後何か月も査読は通らないと思います。いま査読もワクチンの安全性に疑義を呈するようなものは通りにくいように偏っていると聞いています。
▼勝手に論文の一部を切り出して、論文著者の意図とは違うメッセージを作り上げている
➡論文著者の真の意図は分かりません。著者は5-11歳のコロナワクチンが1か月で効果がほぼゼロになることは示したかったのでしょうか?わざわざゼロになった以降のマイナスのデータも最後に出したのは何故でしょうか。最初から何かの意図があったというより、観察をして結果をまとめただけではないのでしょうか。論文著者の意図は考察をそのまま和訳して皆さんに読んでもらうのが一番だと思います。少なくともデータはそのまま使って私はグラフを作ったのは間違いないし、原因がADEなのか気の緩みによる行動変容なのか、あるいは統計上の問題なのかは分からないにしても、5-11歳で感染予防効果が接種後1か月以降マイナスになったのも事実ですので。それを国民に知らせてもいい、いやむしろ知らせるべきだと思います。
▼これは科学者としてはあるまじき行為です。
➡大御所の宮坂先生に言われてしまうと反論もしにくいですが、データに忠実に、「感染予防効果が1か月以降逆にマイナスになった」ことを警告する態度の何が科学者としてはあるまじき行為なのか分かりません。
▼このポスターによると、5~11歳児においては2回のワクチン接種から35日以降ではワクチン有効率が-10%、42日以降では-42%と大きく下がるだけでなく、かえって感染が広がるようなことを示唆しています。
➡かえって感染が広がるとはどういうことでしょうか。ワクチン接種した小児自身が逆に感染しやすくなることは示唆していますが、二次感染に関しては言及していません。
▼当該論文の著者らは、このデータのすぐ下の部分に「この数字は不確かで、他の交絡因子があると思われる」と明記しています。つまり、信頼性の低い数字であることを認めていて、論文のDiscussionの中でも一切これについて触れていません
➡Negative VE values observed in later timepoints likely reflect estimator instability and/or residual confounding , as opposed to true relatively-increased risk for those vaccinated.
「後の時点で観察された負のVE値は、ワクチン接種者の真の相対的なリスク増加とは異なり、推定量の不安定さおよび/または残留交絡を反映していると考えられる。」
がグラフの注釈の正確な記載ですが、
まず、まさか論文のデータ自体が信頼性の低い数字であることを認めてはいるわけではありません。感染予防効果が1か月以降逆にマイナスになった原因の考察として、「推定量の不安定さ」を可能性として述べているだけです。この件は統計学に詳しい人に確認します。
「他の交絡因子があると思われる」と述べているのではなく、「他の交絡因子を反映していると思われる(likely恐らく)」と述べています。またそのlikely(~だろう)の論拠も一切示されていません。つまり論拠のない主観的推論だと考えられ、「明記している」などと胸を張って言えるようなものではなく、宮坂先生のおっしゃるように、このままでは査読に通らない、蛇足の様な注釈だと思います。なぜ、わざわざそのような蛇足注釈をつけたのでしょうか。私は、そのような注釈をつけないと大騒ぎになるから苦し紛れにつけたのだと思います。
▼当該論文の結論は、日本語に訳すと次のようです。「オミクロン流行のもとでは子どもにおけるファイザーワクチンの有効性が下がり、特にこの傾向は5~11歳児で顕著である。しかし、この年齢の子供たちにはワクチンは重症予防効果があるので接種をすることが推奨される」というものです。
➡長くなりますが論文の最後の考察をすべて抜粋します。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.02.25.22271454v1
Discussion
During Omicron variant predominance, VE against infection declined rapidly for NYS children 5-11 years, with low protection by one month following full-vaccination. Among children 12-17, protection declined substantially, albeit more slowly than observed among younger children. These results complement early findings of reduced primary series VE for ≥12 years during the Omicron era and the dual effects of the variant and waning protection against infection with sustained protection against severe disease.1,8,10
The finding of markedly-lower VE against infection for children 11 years compared to those 12 and 13 years, despite overlapping physiology, suggests lower vaccine dose may explain lower 5-11 years VE. Children 12 years had the highest VE of all ages, potentially due to being small size relative to dose and more recent vaccination (by 6 weeks on average) than those 13-17 years. This gap suggests a threshold effect between the two BNT162b2 vaccine doses and need for study of numbers of doses, amount per dose, dose timing, and/or antigens targeted for children 5-11 years.
The findings in this study are subject to limitations. First, home testing, whichis not reported and increased during the analysis period, would impact conclusions if testing practices differed by vaccine status. This potential bias would not impact hospitalizations. During this highest-incidence period, including for severe disease, for children, there were still relatively few children admissions. Additional data are needed to fully-understand VE trends against severe disease.2,9 By the end of January, 12.5% of vaccinated children 12-17 years had received a booster, likely adding protection to that group, although the time-since-vaccination analysis had no boosted children. This analysis compared early vaccinators in the younger age group withlater vaccinators in the older age group, who may differ in test-seeking or exposures. Similar conclusions regarding relative VE declines between children 5-11 and 12-17 years using open cohorts suggests this trend is robust.
Our data support vaccine protection against severe disease among children 5-11 years, but suggest rapid loss of protection against infection, in the Omicron variant era. Should such findings be replicated in other settings, review of the dosing schedule for children 5-11 years appears prudent. At this time, efforts to increase primary vaccination coverage in this age group, which remains <25% nationally, should continue. Given rapid loss of protection against infections, these results highlight the continued importance of layered protections, including mask wearing, for children to prevent infection and transmission.
考察
オミクロンの変種が優勢な時期には,ニューヨーク州の5~11歳の小児の感染に対するVEは急速に低下し,完全接種後1カ月までに低い防御率となった.12~17歳の小児では,若年層よりも緩やかであったが,防御力は大幅に低下した。これらの結果は、オミクロン時代に12歳以上の一次系列VEが減少した初期の知見と、重症化に対する持続的な防御を持つ感染に対する変異種と減衰の二重効果を補完するものである。
11歳児の感染症に対するVEが12歳、13歳児に比べて著しく低いという結果は、生理学的な重複があるにもかかわらず、ワクチンの用量が低いことが5-11歳のVEの低さを説明している可能性がある。12歳児は全年齢の中で最も高いVEを示したが、これは13-17歳児と比較して、接種量に対して体格が小さく、ワクチン接種がより新しい(平均で6週間)ことが原因であると考えられる。このギャップは,BNT162b2ワクチンの2回接種の間の閾値効果を示唆しており,5-11歳の小児に対する接種回数,1回接種量,接種時期,対象抗原の検討の必要性が示唆された.
本研究で得られた知見には限界がある.第一に、報告されていない家庭での検査は、分析期間中に増加しており、検査の実施状況がワクチンの接種状況によって異なる場合、結論に影響を与えるであろう。この潜在的なバイアスは入院には影響しないであろう。小児では、重症化を含め、この最も発生率の高い時期には、小児の入院はまだ比較的少なかった。1月末までに、12~17歳のワクチン接種を受けた小児の12.5%がブースターを受け、このグループに予防効果が加わったと考えられるが、ワクチン接種からの時間分析ではブーストされた小児はいなかった。この解析では,若年層の早期接種者と高年層の後期接種者を比較したが,これらの人々は,検査希望や被曝の程度に違いがある可能性がある.オープンコホートを用いた5-11歳と12-17歳の間の相対的なVE低下に関する同様の結論は、この傾向が強固であることを示唆している。
※我々のデータは、5-11歳の小児における重症化に対するワクチン防御を支持するが、オミクロン変異種時代には、感染に対する防御が急速に失われることを示唆するものである。このような知見が他の環境でも再現された場合、5-11歳児への投与スケジュールを見直すことが賢明であると思われます。現時点では、全国的に25%未満であるこの年齢層の一次接種率を高める努力を継続する必要があります。感染に対する防御力が急速に低下していることから、今回の結果は、小児が感染と伝播を予防するために、マスク着用などの二重の防御を行うことの重要性を引き続き強調するものである。
さて、宮坂先生のおっしゃる通り、「オミクロン流行のもとでは子どもにおけるファイザーワクチンの有効性が下がり、特にこの傾向は5~11歳児で顕著である。しかし、この年齢の子供たちにはワクチンは重症予防効果があるので接種をすることが推奨される」と要約するのが適切でしょうか?
それこそ「科学者としてはあるまじき行為」である「論文著者の意図とは違うメッセージを作り上げていること」「曲学阿世」(真理を曲げて世の人の気に入るような説を唱え、時勢に投じようとすること)の傾向が無いでしょうか。
私は※我々のデータ以降をそのまま読むことが論文著者の意図を正確に理解できるように思いますし、著者は小児ワクチン接種の見直しなど、むしろ警告をしたいように感じます。
>一方、このポスターでは「オミクロン株に対する効果の客観的証拠が無い」、「自分にも他人にも感染を予防する効果は期待できない」と、まったく当該論文とは違うことを言っています。
➡これは第29回ワクチン分科会の内容を注釈付きでポスターに記載したものであり、当該論文とは関係ありませんが、この点に関しまして宮坂先生は異論がおありでしょうか。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23914.html
▼この査読前論文発表の後にアメリカCDCがもっとしっかりしたデータを出しています。そして「子どもたちにおけるワクチンの感染効果は一定期間しか続かないが、感染を促進するようなことはなく、重症化予防効果が高い」ことを示しています。
➡その「アメリカCDCの週間レポートのデータ」も査読済みのデータでは無いと思いますが、査読の有無は信ぴょう性に関係ないということですか?また、そのご説明だと一定期間しか続かないこと、一定重症予防効果はあること、の2点はNY保健局の論文と同じではないでしょうか。
またそのCDCレポートのタイトルは「5~17歳の非免疫不全の小児および思春期におけるCOVID-19関連救急部および緊急医療受診および入院を予防するためのCOVID-19 Pfizer-BioNTech BNT162b2 mRNAワクチンの効果-VISIONネットワーク、10州、2021年4月から2022年1月にかけて」です。
先生のお示しになっている5-11歳の救急搬送に対するワクチン有効率51%はオミクロン期(2021.12-)のデータですが、入院に対するワクチン有効率はデルタ期(2021.6-)とオミクロン期の合計であり、期間からほぼデルタ期のデータと言えます。そのことを理解しておられますか? 同じ表に載せるのは不適切ですし、入院予防効果がNY保健局論文の48%に対して74%と高いのはデルタ期が大半なのですから、当たり前のことなのです。それを説明もなく「CDCのデータは査読済み(木下氏)しっかりしている(宮坂先生)だし効果が高く出ている」などと、こびナビの「手を洗う救急医Taka」木下喬弘氏と全く同じことを宮坂先生は主張されておられるわけですが、
▼サイエンスというものは、都合の良いデータをだけを切り出して勝手な議論をするのではありません。客観的なエビデンスに基づいて行うものです。
➡このCDCレポートの宮坂先生と「手を洗う救急医Taka」木下喬弘氏の解説に関しては、そっくりそのままお返しします。不適切な解説をされているのですから。
▼このような自分勝手なポスターを作ってあたかも専門家のような顔をして配布するというのは悲しいことです。ポスターの作者は小さな文字で「News23で専門家としてコメント」と付記していますが、なんとも言葉を失います。
➡これもそのままお返しします。このような自分勝手な表を作ってあたかも大御所研究者が言っているから間違いは無いという風に流布されるのは悲しい事です。大阪大学 IFReC 招へい教授が「宝塚のある眼科医」に以上の様な指摘をされるようでは、なんとも言葉を失います。