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南山城 豊岡柿

とりわけ柿が好きという訳ではない。
ところが今年は柿が美味いと思う。
しみじみ美味いと思う。
歳を重ねたせいかもしれない。

9月末、奈良興福寺に詣でた帰り阿修羅像の存在感に未だ酔いながら参道の道端で柿を買った。その熟し具合が何とも言えず絶妙で滅法美味かった。

秋も深まって訪れた京都南山城の当尾(とおの)でご当地名産の豊岡柿に出会った。

岩船寺側の露店で母より年上の老婆が点ててくれた珈琲を頂きその老婆に樹齢200年の木から採れたものだ、お金は要らない、「食べてみよし。」、と勧められるままにほおばったずくし柿。

子供の頃柿と言えばこういうずくしを野原でほおばっては種をプッと吹き飛ばしていたのだと遠い秋の風景を思い出す。

それとは知らずに訪れたが、この当尾(とうの)はかつて興福寺の別所であったらしい。奈良時代から南都仏教の影響を色濃く受け、数多の僧侶が穏遁の地として草庵を結び、念仏に専心した土地なのだそうだ。山道に点在する磨崖仏の数々もまたその記しだ。

古寺巡礼で柿が繋がったのは興福寺のパワーではなかったのかと有り難くまた少し不思議な気持ちになった。

今年は柿が美味いと思う。
しみじみ美味いと思う。
歳を重ねたせいかもしれない。
しかしこのように歳を重ねるのならそれは悪くはないと思う。

#南山城 #豊岡柿 #当尾

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