関西のコーラと関東のコーラ
「関東のコーラと関西のコーラ」
40数年前の秋の夕暮れ時。
中学に入っても小学生気分がまったく抜けないぼくらは近隣の田園風景の中を自転車で日中さんざん遊び回ってひどく喉が渇いていた。
ヒロマサ君の家は地元の本屋さんだった。ルネ・シマールのサイン入り万年筆がおまけに付いた旺文社の中一時代もヒロマサ君のお父さんが配達してくれた。
その本屋さんの前にあった自販機で瓶のコカ・コーラを買ってラッパ飲みをした。ラッパ飲みは行儀が悪いと母親に言われていたことはすっかり忘れていた。
誰が始めるのでもなく、いつの間にか一気飲みの競争をしていた。何本かで繰り返した。一番早く飲み干すのは何度やっても靴屋さんのユ~チャンだった。
そのうちヒロマサ君が、コーラの瓶の底のところにある丸い窪みを指差して、これは関西のコーラや。関東は四角いんや。味がちゃうねんで。甘いのと辛いのやで。などとしたり顔で解説してくれた。
真偽のほどを確かめることもなく40数年が過ぎたのだけれど、オトナになった今でも何となくその話をぼくは信じている。
コーラを飲み干すとすっかり夕闇が広がり始めていた。
ぼくはユキオちゃんと水鼻でズルズル音をさせてリズムを取り森田健作の若者たちを歌いながら低くなった夕日を背中に自転車で帰路についた。
ヒロマサ君の誕生日を同級生のLINEグループで祝いながらそんな出来事を思い出した。
ヒロマサ君の髪はいつもサラサラしていてちょっといいシャンプーの匂いもして、女子のようだった。あの髪が今はもう一本もないのがちょっと寂しい。
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