プロ雀士M子
あくまでも一般論だが、歳を重ねると共に概ね男はパワーダウンし、女は逆にパワーアップする。
さて、M子はぼくの高校時代の大親友Yの彼女だった。
最近迄はそう思っていたが再会したM子は、「あれはY君が勝手にそう思い込んでいただけやわ」、とぶっきらぼうに言い放った。
おまけにM子は「Y君はKさんが好きやったんやわ。」と言い、「同窓会に全然出て来やへんのんはきっと頭が禿げ上がったんに違いないわ。」とも言った。そんなことを言うM子は本当は今でも少しYが好きなのだと思った。
そのM子も今では世界をまたにかける一流商社マンの夫を持つ妻であり、母親でもある。
ところでそのM子に卒業以来初めて再会したのは大学4年であったかあるいは大学を卒業仕立ての頃であったかと思う。
近鉄大阪上本町駅の地上ホームでばったり出くわすと、いきなりM子は身の上話を始めた。M子は、「ワタシ、不倫してんねんよ。」と何食わぬ顔をして言い、何やら理解不能なややこしい訳あり話をぼくに向かって滔々とした。
未だうぶな青年であったぼくは何と返答していいのか皆目検討もつかずに困惑しつつただただ頷くだけだった。
今聞けばM子はそんなことはなかったと言い張るがぼくは確かに記憶がある。ひょっとすると当時の純粋なぼくをからかってM子はそんな作り話をしたのであったのかも知れない。
次に再会したのはそれから20年も経った頃だった。
海外駐在生活から帰国したばかりのM子はいかにも洋行帰りといった風情で赤毛のロングのカーリーヘアで現れたかと思うと、「ワタシ、陶芸のセンセーをしてるのよ。」と言った。見た目の派手さと同じくらいM子が陶芸家になっていたことに驚いた。
最近、同窓会で再会した。今度は、「ワタシ、プロ雀士になったのよ。」と言う。一瞬耳を疑ったが確かにプロ雀士の試験に合格したのだと言う。「小学生の頃から家庭麻雀してたし、別にムズカシないねんよ。」とまた事もなげに言った。ぼくは開いた口がふさがらなかった。
歳を重ねると共に概ね男はパワーダウンし、女は逆にパワーアップする。
刺激的な友人を持って刺激的な話を聞けるのはしかし実に有り難いことだと思う。
次に会う時、M子は何になっているんだろうか?
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