六本木交差点点描

 2月18日17時15分。
 六本木交差点。アマンド前。

 寒さは未だ冬本番でも、日が長くなり、明るさだけにも、どこか春めく夕刻の六本木。
 放課後の解放感に包まれた下校途中の東洋英和の女子中高生たちと、黄色い笑い声。
 早めに宴会に繰り出すのか、タクシーを降りる、やや高揚したビジネスマンの四人組。
 アマンド前で待ち合わせていた、学生のカップル。仲良く手をとり、芋洗い坂に消えていく。
 そんな雑踏とは無関係に、酔いつぶれ、歩道に眠りこけるジャージ姿の男性ひとり。
 同伴出勤の客と食事にでかけるのか?淡いラベンダーの、春色ワンピースに身を包んだアゲハ嬢も、どこかいそいそとしている。
 リュックを背負って交差点を渡り、ぶつぶつとお経のように、北朝鮮の核実験を独り言で批評・解説し続ける、銀縁眼鏡の三十路の頃の女性もいる。
 とにもかくにも、春はもうすぐそこだ。

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