体の奥の糸をほどく

高校のときに好きだった先輩が夢に出てきた
先輩は周りが見えていて優しい人だ
私はなぜか妙に友達とうまくいっていなくて
さりげなくフォローしてくれた
「学校」の友達関係、という狭い世界が
すべてだった頃のあの苦しい感覚と
好きな人に気にかけてもらう温かい気持ち
温かいけれどどちらかというと苦しい感覚で目が覚めた

「もう諦めたくない」

急に強い思いが湧いてきて、涙が出た
私は、もうこんなに諦めてきた

私はたくさんのものを持っているのに
持っていない人たちに全部とられてきた
それが当然かの如く
おたがいに、それが当然かの如く

諦めることばかり、慣れていく中で
持っていないことが一つの特権であるかのように
持たざる美学に酔うかのように

だけど、私だって欲しい
いろんなものが欲しい
どうして得られないと思い込んでいたんだろう?


体の中、奥にひとつひとつ、
堅い結び目がある
それはたぶん、白い糸

イヤな思いや
諦めたこと
体はひとつずつ、経験や感情を
丁寧に結んできた
自分を守るため、堅く結んできた

無防備になることを恐れ
見えない鎧のように
攻撃力と防御力を上げていく
結び目は、確かに私を強くした

だけど、結び目が増えて堅くなっても
それに比例して人生がうまくいくわけではない
糸を堅く結ぶ目的は、「自分を守ること」だから
「自分をこの世界から守る」ためなら、人間の体は、「現代で人生がうまくいくこと」を捨てたっていいと判断している

悲しくても
苦しくても
生きてさえいてくれればいいと
体は判断している

体はそう判断していても、
今を生きる私たち、そうはいかない
なるべく柔らかく 温かく しなやかに
私はそう生きたい

体の堅い結び目、
その筋肉のこわばり
それはまさしく古びた鎧
だけど私は猫みたいに生きたいんだよ
柔らかく 温かく しなやかに 跳ぶ!

イヤなことが起きても
初めて知った!みたいに驚いてもいい
この世になんの憂いごともないみたいに
無防備に眠りたい

ならば、この筋肉のこわばりを
「考え方ひとつで変える」ことができるか?
答えはNoだ

体をほぐして柔らかくする
痛くしなくても、ゆっくりやれば伸びていく
血はめぐる
ゆっくり 伸ばして 柔らかく

白い糸の結び目は、「思い出す」
思い出して、ほどく
白い光で包んで、ほどく
あの時とは違う、もう新しい文脈で生きているのだから
古い結び目の役割を終わらせよう
もう大丈夫だよ、って

どちらもひとつずつだ
両者でワンセット
少し体がゆるんだら、ひとつ結び目がほどける
ひとつ結び目がほどけたら、また少し体がゆるむ
一気にやることは難しく、
どちらか一方だけをすることも難しい

心で起こったことは、体にも起きる
体で起こったことは心で起こったことだ

それは、天で星が動くことと同じ
天で起こったことは、地にも起きる
地で起こったことは天にも起こったことだ

広い宇宙、体の神秘、些細なことで傷つく私
すべてはちゃんとつながっている
それはご都合主義的に、複雑で単純に、正確で曖昧に、つながっている


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