少しずつ、よくなる

少しずつ、よくなっていることを
どこかで分かっていながら

なぜか信じようとしない自分がいる

あんなに寒かった冬が
こんなに曖昧に、中途半端に、
思っていたような形でなく
勝手に春になるなんて

ちょっと許せないような
なぜかそんな気持ちに

我慢した期間や
思いが長い分だけ

きっとそうなってしまう

9年闘ってきたフラつきが
数ヶ月でよくなっていくことを

信じたいのに
どこか、やるせない感じ

治るなら、なんだったの?
あの冬は、なんだったの?って

だけど、ずっと春を待っていた
治ってほしいと ちゃんと願ってきた

安月給の、寒い、げっそりしてしまう会社をやめて
前よりもマシな給与、あったかい設備の会社に入り

どんなにひどくても、あの新卒の会社の頃よりは
ずっとマシになっている

どんなにひどくても、実家にいた頃より
人生はずっとマシになっている

すべて
ありとあらゆるすべて

過去のどんなときより、よくなっている
その事実を、なんだか妙な感覚で見つめている

野放しで喜べないような
いびつな

野良猫が、素敵な人に保護されて
少しずつ、あったかさを知るような

最初はこわいの
だって知らなかった世界だから

だけどやがて知る
大丈夫なんだ、って

信じていいんだって
安心していいんだ、って

楽しいことも
輝く日々も

もう少しなんだって分かる
光はまぶしくて

でも目は慣れてくる
空気を吸いこむ

こんな場所だったか?
この世界は

初めて立ったその日みたいに
また新しい日がくる


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