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グラデュエーション
一人で体育館にたたずむと、なんだか自分がちっぽけになった気がする。
一人で廊下にたたずむと、なんだか長い人生の道みたいに見えてくる。
一人で教室にたたずむと、なんだかいつもと違う雰囲気でくすぐったくなる。
一人で校庭にたたずむと、なんだか果てしなく続く青い空に手を伸ばしたくなる。
洗い立ての教室に、風が吹く。
紺の制服に映える桃色の花。
瞬きをすると、雫が滑り落ちる。
一瞬の三年間。無限の三年間。
笑った。泣いた。喜んだ。抱き合った。崩れ落ちた。驚いた。そしてまた笑った。
歩いても歩いても、思い出ばかりが浮かぶこの校舎は、いったいどれくらいの人々を送り出してきたのだろう。
私も、その一人になった。
私は、弱くも、強くもなった。結局、自分は変わらなかった。
でも、成長したよ。この校舎の香りをまとって。
今日、私は卒業します。
卒業おめでとう。そして、ありがとう。