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桜の木と私の髪

桜の木が、切られていた。
理由は知らない。ただ、私は軽い焦燥を覚えた。

私が高校を入学したての頃、友人ができて、話せるようになったぐらいのとき。
まだ心のうちが読めなくて、ひどく疲れていた。
そんなとき、バス停を降りて目の前に飛び込んできた満開の桜。
あの桜の木だ。
私は、なんだか、応援されているような、それでいてやさしさに包まれているような気がした。

それから夏が来て、秋を過ぎ、冬になった。
次の春に、あの満開の桜が見れないのは悲しい。
でも私は、いろんなことを乗り越えた。
友人と時にすれ違い、自分を肯定できず泣いた夜もある。
やりたいことのために今を全力で楽しみ、笑顔でいたいと願った。
嘘偽りなく、確かに私はここに存在している。

桜の精に背中を押された私は、髪を切った。
大丈夫だよ。時にはつまずいてもいいんだから。
私はもう、一人で生きていける。