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水美舞斗 スペシャルライブ『Aqua Bella!!』配信を見た


水美舞斗 スペシャルライブ『Aqua Bella!!』
<構成・演出>藤井 大介
<出演者>
(花組)水美 舞斗
帆純 まひろ、侑輝 大弥、朝葉 ことの、二葉 ゆゆ   

水美舞斗スペシャルライブ『Aqua Bella!!』を配信で見た。

ちょっと前まで、今日の侑輝大弥さんみたいだったマイティーが、こんなに大きくなって…。水美舞斗さんのことはちっちゃい頃から見ているから、もう、孫とおばあちゃんみたいな気持ちで見ている。

こういうDSスタイルのショーって、その人が持っているもの、大切にしているものが全部出る。マイティーだったら、もっとダンスで押してくるかなと思っていたけど、さにあらず。

もちろんダンスナンバーもふんだんにあった。でも、一番心に残ったのはハート、水美舞斗の人間性だった。

宝塚ファンを自覚する人なら誰もが知っていると思うけれど、水美舞斗という宝塚スターは、本っ当に、素直で、嘘がつけなくて、努力家で、人にやさしい。少人数のショーだし、おそらくは主演者自身がキャスティングにかかわっていると思われるから、どんなチームでもあったかい雰囲気になるものなんだけど。『Aqua Bella!!』は、そうしたレベルを超えて、愛にあふれたショーだった。

帆純まひろさん、侑輝大弥さん、朝葉ことのさん、二葉ゆゆさん。
共演したみんなが、心からマイティを慕っていて、マイティもみんなのことが大好きだというのが伝わってくる。

オープニングからもう、みんな感極まっていて、誰よりもマイティがその感情を抑えきれないといったふうで、ほとんど涙ぐんでいる。四人とマイティのあたたかくて強い関係と、マイティが発散する何かにやられてしまった。言語化はできない。

ソロダンスから始まったのもとてもマイティらしかった。両手を大きく広げて、のびやかに踊る姿は水美舞斗そのもの。誰も拒まない。いつでも、心が開かれている。

タンゴの場面の始まりのナンバーが「タンゴ・アルゼンチーノ」だったのには驚いた。

花組の大切な作品だから、驚くこともないのかもしれないけれど、私には驚いてしまう個人的理由がある。壮一帆さんも、初めてのディナーショー『So!-Fantastic Radio Station-』(2007年)の宝塚メドレーで、この曲を歌ったのだ。

壮さんとは師弟関係にあるマイティのことだから、初めてのディナーショーをやるにあたって、壮さんのこのショーを見たのかもしれない。そういえば、男役二人、娘役二人という人員構成も同じ(宝塚的ジェンダーバランスも良好)。もしかしたら、壮さんへのオマージュ的な意味も少し、あるのかもしれないなと思い、胸が熱くなる。

話はそれるけれど、この初ディナーショーは、私が見た壮さんの舞台の中でも特別心に残っているもののひとつ。当時の壮さんは、「必ずトップになる」と誰からも思われているような宝塚スターではなかったから、ディナーショーをやると知ったときは、ひとつ上のステージに行けるのだという思いもあって、本当にうれしかった。

自分らしさを出したオーソドックスな構成でありながら、くすっとするような楽しい演出もあった。最近の宝塚に慣れた方からしたら、きゅんとさせるようなあざとカッコいいサービスが足りないと感じるかもしれないけれど、「私は宝塚で、この世界で生きていくのだ」という強い思いのようなものが感じられたストイックな舞台だった。

ちなみに、このときの共演者は、悠真倫さん、桜一花さん、華形ひかるさん、初姫さあやさん。当時もちょっとびっくりしたけど、なんてすてきなメンバー。わたしにとっても、今も特別な人たちです。

壮さんのショーがそうだったように、『Aqua Bella!!』でも、マイティが共演者たちをとても大切にしているのがよくわかった。「もっと自分を前に出したっていいのに」と思ったくらい、みんなで今の時間を楽しみつくしているようで、もしかして組替えのようなことが待っているのでは? と、いらぬ心配をしてしまったほど。

なぜ紫色なの? というくらい、紫色がフィーチャーされていたこともあって、この色が何かのサインなのかと思ってしまう。

それというのも、壮さんの花組時代の最後のほうに、これでもかというくらいに、衣装や設定で黄色がフィーチャーされていた時期があって――『サン=テグジュペリ(星の王子さま)』のキツネ、『カナリア』の頃です。「もしかして月組に組替えなのでは?」と、本気で思っていたことがあったのだ。

今は、どれだけ必死だったんだ? と自分に突っ込む笑い話になっているけれど、まあ、願かけみたいなものだったと思う。壮さんにトップになってほしいというのが、その頃のわたしのいちばんの願いだったので。

(その後の壮さんですが、月組に組替えになることはなく、その後、雪組にトップスターとして組替え。『復活』と『CONGA!!』が花組最後の作品でした)

だからというわけではないけれど、マイティもトップになったらいいなと心の底から願っています。こればっかりは自分の力だけではどうすることもできないので、本人を縛りつける呪いになりかねないことは言っちゃいけないとは思うけれど。

『Aqua Bella!!』を見ている間、いいトップさんになるだろうなと何度も思った。

こんなにもみんなに慕われていて、こんなにも熱い思いを持っていて、まわりの人たちを見ることができて、なおかつダンスという武器がある。踊ることで舞台に熱を吹き込み、組を引っ張っていくなんて、誰にでもできることじゃない。

ショーの中では、藤井大介さんが演出したショー作品『Apasionado!!』(2008)、『Exciter!!』(2009)、『CONGA!!』(2012)のナンバーが使われていたけど、見ていた方の大多数が思ったんじゃないだろうか。蘭寿とむ主演『CONGA!!』のようなラテンのショーを水美舞斗主演で観たいと。

さっき、NHK BSドキュメンタリー『火山大紀行 ―水と生命の源へ―』を見ていたら、地球のなりたちと火山と水の関係について語られていて、「これだ!」とひらめいた。

『Volcano!!(ボルケーノ:火山)』なんてどうでしょう。

火山噴火パニックアクションみたいな同名映画があったけど(面白かったです)、地球の始まりをテーマにしたショーにできそう。マイティなら、「火の惑星」と「水の惑星」を表現できるんじゃないかな。大介先生、よろしくお願いします。

いや、こんなのとっくにショー作家の演出ノートに書かれているかもしれないけど。

『Aqua Bella!!』の話に戻そう。

マイティがシシィのナンバー「私だけに」を歌ったのには驚いた。
男役としてではなく、今のマイティーが自然に表現された、いいナンバーになっていた。きっと、今の偽らざる心境なんだろう。

そんな気持ちは、マイティが作詞したオリジナル曲「愛する君へ」にも表れていた。歌詞を要約すると、こんな感じ。

「君がいるから、信じる道をまっすぐに歩いていける。
 まだ見たことのない美しい世界を、一緒に見に行こう」

ハートの伝わるいい歌だった。
マイティーには、ポップスが合うんだなあということもわかったショーだった。

2020年は誰もが冒険心を抑えなければいけない年で、仕方がないこととはいえ、舞台で十分に発散したとはいえない年だったと思う。

今年2021年こそ、思いっきり冒険のできる年になりますように。このショーを見られなくて残念だけど、次の機会があることを信じて。

写真は、鎌倉のカフェ、ヴィヴモン・ディモンシュの「コスタリカ プエンテ タラス エル・スール」というコーヒー。「エル・スール(南)」とう名前に惹かれて飲んでみました。

爽やかな香りと、未知なるエキゾチックなスパイスの存在を感じる、なんとも不思議な味わいでした。

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