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裁判所は誰の見方か・・・

 一般市民の方が何か法律的なトラブルに巻き込まれた場合(例えば、身に覚えのない連帯保証人にされていた場合や相続後に突然多額の金銭請求をされた場合など)、どのように対応したらいいのか自分では判断することができずに、誰かに相談をしたいと考えるのが普通ではないでしょうか。そして、そのような場合、日頃からニュースなどで様々な裁判に関する報道がされていることの影響もあるのだと思いますが、裁判所であれば、自分が巻き込まれたトラブルについて、どのように対応したらいいのか知っているだろう、自分の言い分の方が正しいのだから裁判所も味方となってくれるだろうなどと考えて、まずは、裁判所に相談してみようと考えることもあるようです。ちなみに、法律的なトラブルにどのように対応すべきか、自分の言い分が正しいのかどうかについての相談は、法律相談の範疇に入ります。
 では、裁判所は相談者の立場に立った法律相談に応じてくれるのでしょうか。

そもそも裁判所の役割は・・・

 そもそも裁判所は、原告の被告に対する請求に関して、当事者双方の主張を踏まえて、特に争いがある点(争点といわれます。)については、提出された証拠の評価(当事者の主張の裏付けとなりうるかどうかの判断といえます。)をして事実の認定を行い、最終的にどちらの主張が正しいのかを判断する役割を担っています。つまり、裁判所はあくまでも判断をする立場にあり、スポーツの審判と同じということになるわけです(そのため裁判官のことを「ジャッジ」と呼ぶこともあるようです。)。したがって、審判役である裁判所は中立でなければならず、一方当事者の立場に立ってアドバイスをするなど、法律相談に応じることはできないということになろうかと思います。たとえ、訴訟の一方当事者に法律の専門家である弁護士がついていて、他方当事者が法律の知識がない個人の場合であるなど、両当事者の法律的な実力に大きな差が生じている場合であっても、その個人に手続の流れをかみ砕いてわかりやすく説明をしようとすることはあっても、裁判所がその実力差を埋めるために手助けをすることはありません。裁判所にとって、手続を適正に進めることは大変重要ですが、裁判の公正さを担保するためには、中立であることもそれと同じくらい重要なものです。やはり法律相談は相談者の立場に立って話を聞くことができる弁護士や司法書士、法テラスなど法律の専門家にお願いするべきであって、裁判所が自分の味方となって法律相談に応じてもらえるという理解は誤解といえるでしょう。

結論としては・・・

 裁判所の役割を踏まえると、裁判所は誰の味方でもないという結論になろうかと思います。裁判所が一方当事者勝訴の判決を下したとしても、中立の立場からその職責を果たした結果であって、決してその当事者の味方をしたというわけではないと考えるべきでしょう。



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