見出し画像

裁判ってお金がかかるんですよね・・・

 マスコミの報道もあって、裁判にはお金がかかるというのが一般市民の普通の感覚ではないでしょうか。そして、そのことが訴訟のマイナスイメージにもつながっているのではないかと思われますが、その点、実際のところはどうなのでしょうか。

訴訟にかかる費用には・・・

 まず、訴えを提起する場合に裁判所に納める費用として、訴え提起の手数料や郵便料といった裁判所が訴訟手続を進めるために必要なものをあげることができます(厳密にいえば、その他にも証人の旅費日当や鑑定費用などがありますが、事例としては、証人の旅費日当については時々あるものの、その他の費用についてはかなり少ないといえます。)。しかし、これらの費用については、数億円などの多額のお金を請求するような場合であれば訴え提起の手数料が多額になることがあるものの、そうでなければそれほど高額ではありません。例えば、1億円を請求する訴え提起の手数料額は32万円ですが、10万円を請求する場合は1000円ですし、郵便料は通常、請求金額にかかわらず5000円程度です。つまり、10万円の請求であれば、6000円程度で訴えが提起できるわけです。また、裁判所に納める費用ではありませんが、当事者本人が裁判所に出頭する際の旅費や各種書類を作成して提出する費用などが裁判を進めるために必要な費用として発生しますが、遠方の裁判所に訴えを提起するような場合でなければ、これらもそれほど高額になることはありません。なお、これまでに述べた費用は、訴訟に勝訴すれば、相手方の資力の問題はありますが、いずれも訴訟費用として、相手方から取り立てる方法も準備されています。

問題の本質は・・・

 では、なぜ裁判にはお金がかかるということになるのでしょうか。訴訟を提起するにはとても専門的な知識や経験が必要になり、実際、個人が訴訟を進めるには、必要な知識の習得などにも多大な時間と労力が必要になります。訴訟に専念できるような環境にあるような人であれば可能かもしれませんが、通常は仕事があるなど、そのような時間を作れない人が多いのではないでしょうか。そして、そのような場合には、訴訟の追行を全て弁護士に依頼するという方法が考えられます(簡易裁判所の場合は司法書士に依頼するという方法も考えられます。)。弁護士に依頼すれば、個人で訴訟を進めることによる多大な時間と労力を節約することができることになります。ただし、この弁護士に依頼する費用については、訴訟費用にはならないとされているため、勝訴しても、相手方から取り立てることができず、自分の持ち出しということになります。実際に相手方から回収できる見込みも踏まえて、多額の請求をする訴えを提起する場合であれば、ある程度弁護士費用がかかっても、回収できる金額も大きくなる可能性が高いので弁護士に依頼しやすいといえますが、10万円の請求であれば、割に合わないという考え方も出てきます。つまり、裁判にお金がかかるというのは、主にこういったことを意味するのではないかと思われます。しかし、訴訟は極めて専門的な分野であるため、個人が訴訟を進めるには、必要な知識の習得などにも多大な時間と労力が必要になることや、弁護士が訴訟を追行するに当たっては、時間をかけて判例の調査や書類の作成などの準備をする必要があり、費用のほかに相応の報酬が発生することは、いずれも当然のことといえます。なお、交通事故など不法行為に基づく損害賠償請求については、弁護士費用が不法行為と相当因果関係のある損害として賠償が認められる場合がありますが、これは訴訟費用としてではなく、請求の一部として認められることを意味し、最終的にそれが認められるかどうかは裁判官の判断によることになります。

最後に・・・

 繰り返しになりますが、訴訟を進めるには専門的な知識や経験が必要になるため、個人でうまく進められなかった場合には、勝てる訴訟でも負けてしまうことがあり得ます。結局のところはそのことも踏まえて、弁護士費用も含めた費用を支出してまで訴えを提起するのかどうかを比較衡量することになってくるのだと思います。ただ、それ以前の問題として、まずは、できる限り訴訟を起こさなければならないような事態にならないよう、少なくとも契約をする場合は保証人や担保を確保しておくなど、生活をしていく上では様々なリスクが伴うことがあることをしっかりと意識しておくことが重要なのではないかと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?