なんとなく相掛かり指せるようになりたい人へ
相居飛車布教委員会の宮倉杏です。
皆さん、相掛かり指していますか?私はあまり相手してもらえません。
相掛かりって手が広すぎて、何をすればいいかよくわからない方が多いですよね。なんとなく解像度上がってなんとなく指せる方が増えてくれたらいいな~~と思って書きます。
相掛かりって?
相居飛車の戦型の一つで、お互いに飛車先の歩を交換する戦型です。
▲26歩△84歩▲25歩△85歩▲78金△32金で基本図。これで戦型は相掛かりになったと言えます。
ちなみに▲78金に代えて▲76歩と突けば角換わり(か横歩取り)に誘導できます。
大まかな方針の種類
相掛かりは自由度が高く、何をしても一局になることが多いですが、ある程度の方針を決める必要はあります。大まかな方針としては以下の3つ。
①右銀で攻める
②横歩を狙う
③持久戦
③の持久戦は自分からの攻めが難しく難易度が高いため、まずは①②に対応できるようにするのがおすすめです。
①右銀で攻める
棒銀とか早繰り銀で攻める方針。
棒銀の場合、自陣の右側は飛車と銀で攻めの態勢を整えます。玉は左に移動し、金銀をくっつけてある程度堅く囲うことが多いです。
まずは2筋の歩交換をし、飛車は当たりを避けるため、▲28飛と引きます。
相掛かり棒銀の場合は25に歩がいないため、▲26銀ではなく▲36銀と中央方向に使うことができます(▲25銀と出ることができる)。
最大の狙いは▲25銀からの2筋突破ですが、上手くいかないと見れば▲45銀や▲46歩~▲47銀と使うことができます。また、飛車先を止めないメリットもあり、▲26銀型よりもメリットが多い▲36銀型を選択できるのが相掛かり棒銀の強みといえます。
早繰り銀の場合、左側に囲う形とバランス型にする形があります。
飛車は28に引く形もあれば26に浮く形も多くあり、▲36歩と突いたときにヒモを付けておく意味や、▲37桂として▲35歩△同歩▲同銀のあとの△36歩の反撃をケアする意味があります。
②横歩を狙う
正直棒銀だけではきついので、こっちも練習するのがおすすめ。
相手の突いた△34歩や△74歩を取りに行くのを狙う方針。これは飛角桂を使って攻めることになり、金銀はあまり前に出さず低い形を保って戦います。
金銀4枚をバランス良く配置し、▲26飛と浮き飛車に構えるのが基本の構え。▲36歩、▲58玉、▲37桂、▲76歩などを指し、相手が歩を突いたタイミングで▲24歩と合わせて横歩を取りに行くイメージ。桂を活用したいため▲36歩を優先して突きます。
▲26飛と浮くことが多いのは、自分が▲36歩などを突いたときにヒモを付けている意味です。
もちろん下図のような陣形から早繰り銀にしたり、③の持久戦にすることもあります。
とはいえ、いつでも横歩を取ればいいってもんじゃありません。
横歩を取れる条件、取れない条件があるので後述します。
③持久戦
じっくりと駒の働きなどで細かいポイントを稼いでいく将棋になります。自分から攻めるのが難しくなるので、まずは①②を練習しておきましょう。
イメージとしては下図みたいな感じ。▲47銀型にして、細かいポイントを稼いでいく将棋になります。
持久戦にすると先手後手で似た形になることが多く、主に金銀の配置や左桂の働きで陣形差を付けるのが基本の考えです。
多いのは下図のような感じで、先手は左銀を中央に使えていることを主張にし、後手は△24歩~△23銀として銀冠を主張にするような展開が一例です。また、持久戦なので相手の理想形に組ませないようにする注意も必要です。
角換わり腰掛け銀と似たような形には見えますが違いが結構あり、
・相掛かりは飛車先交換しているため▲77銀(△33銀)型の恩恵が少ない
→▲45桂の攻めが通りにくい
・▲47銀(△63銀)型陣形を盛り上げていく展開になりやすい
→銀がいるので▲75歩~▲74歩の桂頭攻めが通りにくい
など、とりあえず角換わり腰掛け銀とは違った部分で陣形のポイントを稼ぎ、違った攻めをする必要があります。たぶん入門として指すにはかなり難しいので、敢えてこれを目指すのはあまりおすすめしません。
なんとなく相掛かりを指すポイント
飛車先の歩は必ず交換しておく
飛車先の歩交換は基本的にポイントになります。お互いに交換するのでバランスが取れていますが、相手だけ飛車先交換ができるが自分はできない状態を避けたいというのが根本にあります。
基本図ですぐに▲24歩と突く必要はありませんが、△34歩△33角とされると▲24歩が突けなくなるので、その前に交換しておくのが基本思想です。
「△34歩には▲24歩を突く」と覚えておけばどうにかなります。面倒なら早めにさっさと交換しておきましょう。
リスクなく横歩を取られない
横歩(6段目の歩)を相手にリスクなく取られると、相手に歩得という確実なアドバンテージを与えてしまいます。
後述していますが、横歩を取られたときの反撃や構想を準備しておく必要があります。
下図は悪い例。
単に△76飛と歩を取っても▲82歩などの反撃がないため、後手にあっさりとポイントを稼がれてしまいます。△86歩▲同歩△同飛に対して、脳死で▲87歩を打たないようにしましょう。
横歩を取れるか問題
横歩を取れば歩得になり、序盤であるほど歩得が大きく生きてきます。
▲76歩と角道を開けるとその歩を狙われるので、角道を開けるタイミングは注意が必要です。
じゃあどんな条件であれば横歩が取れる(取らせてもいい)のか?
①△28歩の反撃が大丈夫か
横歩を取ると飛車が2筋から逸れるので、桂頭に△28歩と打たれる筋があります。
桂が動けない状態で△28歩を食らうとダメなことが多いです。
▲36歩や▲16歩を突いてあると桂が逃げられるので、結構取れます。
序盤に△34歩が取れる・角交換できない状態で、▲24同飛に対して△23歩というのは基本的に考えないほうがいいです。△28歩の反撃が消えるうえに持ち歩を手放すので、何の代償もなくただ1歩損することになりがちです。
②△28角の反撃への基本対応
お互いに角道が開いている状態だと、角交換から△28角という反撃筋もあります。角道が開いていない①の図と違ってこの筋があるため、▲24同飛に△23歩と打たれても▲34飛とできるかは注意が必要です。
▲34飛△88角成▲同銀△33歩▲36飛(▲35飛)△28角が基本手順
②-0 前提知識:△33歩が打てないと成立しない
手順中の△33歩が重要な手で、ここに打つ1歩がないと成立しないため、飛車先の歩交換をしておくことが前提です。
△33歩を打たずに△28角を打つと、▲32飛成△同銀▲18金で打った角が死にます。
香車を取るしかないですが、飛+香と角+金の交換になるため、金と香を交換したみたいなものです。
大きい駒損なうえ、飛車の打ち込みもなく▲22角も残り、さらに守りの金も片方いないという状態のため、かなり苦戦を強いられそうです。
②-1 ▲17香と逃げられるなら逃げとく
▲29桂▲16歩型なら基本これでいいです。
△19角成としても▲26飛と戻しておいて、△18馬には▲36歩や▲36角。馬が働かず歩切れのため、1歩損の代償を得られなさそうです。
②-2 ▲18香~▲27角
▲17香と逃げられない場合の対応。▲26飛で角筋を通していい勝負。
▲37桂型も同じ対応でOKというかこれしかない。
ちょっと飛車が狭いので注意。▲25飛~▲35歩とすればかなりいい感じ。▲39金~▲29金で馬を取りに行く手もある。
③取ったあと飛車が2筋に戻れるか
これは組み合って金銀が前に出てきてからの局面でよくあります。
ここで▲34飛と取ると、△88角成▲同銀△33金▲35飛△24歩のような感じで、飛車を2筋に返さないような指し方で困ります。金銀が前に出ていて、飛車を渡すと弱い陣形です。
▲46歩▲47銀くらいまで入ってると横歩取りにくいイメージ。
結論:結構取れる
①の最初や③の局面は先手が悪いですが、②のパターンは互角かそれ以上に戦えることが多いです。最善を尽くしても互角なので、低い陣形のうちに横歩が取れそうなら取っていきましょう。
死んだら死んだで覚えます。
まとめ
相掛かりは序盤から手が広く、自由度の高い戦型です。
ここに書いたポイントをなんとなく押さえておけば、細かい手順とか覚えなくてもだいたい何指しても一局の将棋になります。
自由度が高いので、駒の効率を良くする、駒を中央に使う、陣形が偏らないようにするなど、基本的な考え方が大事になってきます。実は一番なんとなくで指しやすい戦型かもしれない。
最近は定跡が整備されてきてはいますが、トッププロが序盤からわずかな得を追い求めてるレベルのものであって、将棋で負けても人生に影響がない我々アマチュアは、評価値でいえば-100にならないような手を指していけばどうにかなります。相手も間違うし。
そして大きなメリットは、角道をすぐに開けないため角交換にならず、わけわからん奇襲戦法を食らいにくいこと。とにかく角交換してどこかに打ちたがってくる意識の低い奇襲を食らうことがありません。
イメージだけで怖がらず、相掛かってみてください。
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