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「私は以前から電通の社風や長時間労働は根深いものであって、一朝一夕には変わらないと予想していた」(高橋幸美)

平成27年(2015年)当事、電通勤務の24歳の若い女性、高橋まつりさんが過労で自殺されました。
電通という日本を代表する企業で、24歳の若さでの過労自殺という事件は、日本社会に大きな衝撃を与え、日本企業に蔓延する違法残業や杜撰な労務管理に対して厳しい見方をするきっかけとなりました。
しかし、日本企業は本当に変わったのでしょうか。
電通についていえば、違法残業で有罪となった後も、ずさんな労務管理に対して三田労働基準監督署から是正勧告を受けています。
しかも、今年9月に是正勧告を受けていたにもかかわらず、朝日新聞の報道が出るまで公表していませんでした。
厚生労働省過労死等防止対策推進協議会委員として活動中の、高橋まつりさんの母・幸美さんに、こうした現状をどう考えるのか伺いました。

三宅雪子 @miyake_yukiko35
1965年、米国ワシントン生まれ。玉川学園女子短期大学、共立女子大学を卒業後、民放テレビ局に21年間勤務。元衆議院議員。父は三宅和助元シンガポール大使、祖父は石田博英元官房長官。著書に『福祉と私 ~「支えあう社会」を国政の場から~』

高橋幸美 @yuki843003
1963年、広島県生れ。電通で過労自殺した娘 #高橋まつり @matsuririri さんの母。厚生労働省過労死等防止対策推進協議会委員。

「電通、有罪後も違法残業 ずさんな労務管理に是正勧告」(朝日新聞)

三宅雪子 こんばんは。今日(2019年12月5日)は悲しいニュースを電話インタビューでお届けすることになります。今日は電通、有罪後も違法残業の報道「電通、有罪後も違法残業 ずさんな労務管理に是正勧告」(朝日新聞)がありました。
平成27年(2015年)当事、電通勤務の24歳の若い女性、高橋まつりさんが過労で自殺をされました。そのお母様、高橋幸美さんにお電話が繋がっています。
幸美さんに今日は私も電話をしていたんですけれども、何回かの電話でやっと繋がったわけなんです。朝はご存知なくて、私は何回か電話していて、その後、弁護士さんとご連絡がついて知ったということで。どんなにショックかなと思いながら無理を言って今日、インタビューをお願いしました。
いま、繋がっています。幸美さん、よろしくお願いいたします。

高橋幸美 こんばんは、よろしくお願いします。

三宅 まずですね、これをお知りになったのは、私の電話が何回も入って「なんだろう?」と思われていたというお話だったんですが、何時ぐらいにお知りになったんでしょうか?

高橋 そうですね、午後1時ぐらいですかね。1時ぐらいにいつもスマホを確認しない時間だったんですけど、たまたま見たところ三宅さんと川人弁護士から連絡が入っていて。

三宅 私、3回ぐらい電話してしまって申し訳ありませんでした。

高橋 着信が何回かあったのはそのとき初めて知ったんですけど。毎朝、バタバタして仕事に行くので、朝の朝日新聞の記事も確認していなかったので、私は知らなかったのですが、お昼に知ったということです。

三宅 簡単にこのニュースをご説明しますと、タイトルは「電通、有罪後も違法残業 ずさんな労務管理に是正勧告」(朝日新聞デジタル)で、「広告の最大手、電通の東京本社が、労働基準法と労働安全衛生法に違反したとして三田労働基準監督署から今年9月に是正勧告を受けていたことが分かった」ということです。9月から、要は隠していたというか、あえて公表していなかったということですよね。もちろん、幸美さんもご存知なかったと。

高橋 はい。会社には違反の助成勧告を世間に告知する義務も無いわけですが、こういうことを私のほうにも教えてなかったということは、それが電通の体質であり、変わっていないということだと思います。

三宅 仮に義務が無くても、お母様にとって本当に12月という月は忘れられない月ですよね。

高橋 そうですよね。


その後もずさんな労務管理が続いていた

三宅 その月に、このニュースを知った。9月4日に是正勧告があったんであれば、その義務が無いにせよ幸美さんに知らせるなり、またこういうことが起きてしまったというお詫びなりするべきですね。その義務が無いにしても、そういった誠意も無い会社、そのように感じたということですか?

高橋 まあ、そうですね、はい。

三宅 そのままニュースを読ませていただきますと、今回のケース、「社員の違法残業や、残業時間の上限を定める労使協定(36〈サブロク〉協定)の違法な延長などを指摘された。法人としての電通は、違法残業を防ぐ措置を怠った労基法違反の罪で2017年に有罪判決(高橋まつりさんの件)が確定した。その後もずさんな労務管理が続いていたことになる」。
だいぶ厳しくなったと言われていたけれども実際はそれは外向けの顔で、ずさんな労務管理が続いていたことになるという記事になっています。「関係者によると、是正勧告は9月4日付。労基法違反が2件、安衛法違反が1件で、いずれも、残業時間に罰則付きの上限規制を初めて設けた改正労基法が施行される前の18年中の法令違反が対象だった」ということです。
本当に残念でありますが、先ほどプレスリリースを出されたということですが、どのような内容だったのでしょうか。

高橋 娘の自殺に関して国が認め、謝罪をし、今後再発防止のために労働環境改革に努めると約束をしたのが3年前です。電通のホームページにも告知して誰でも見られるように、現在そうなっています。
その前にも娘が生まれた1991年、大嶋一郎さんという入社2年目の方が亡くなっており、2000年の最高裁判決で会社の責任が認められました。そのときにも同じように謝罪し、約束しております。
この二つだけの、過労自殺だけではないということも電通に関してはあるんですが、大嶋さんの事件の後にも改善してなかった、娘の自殺が起きてしまった。改善を約束していたのに改善していなかったということが、また今年の9月にも明るみになったということですね。
本当に衝撃的な報道だったんですが、是正勧告の内容についても、私は以前から電通の社風や長時間労働は根深いものであって一朝一夕には変わらないと予想していたので、驚きはさほどありませんでした。まあ、やっぱりなという感じだったんですけど。
それにしても36協定違反や過労死ラインを遥かに超えて156時間あったということがわかった。これは本当に氷山の一角だと思います。

社内に設けられる安全衛生委員会に、最低一人は委員として義務付けられている産業医が入っていなかった

三宅 あとさらにですね、社員の安全や健康を確保するために、社内に設けられる安全衛生委員会、これに最低一人は委員として義務付けられている産業医が入っていなかったということなんですね。

高橋 そうですね。また、その委員のメンバーの半数を労働側の委員にしなければいけないという規定にも違反していたということで、労働組合ですか、労働組合としての機能も本当にしているのかという疑問も私はずっと思っているんですけども。変わっていないんだなということだと思います。

三宅 本当にこのニュースを12月に入って聞いて大変ショックだと思うんですけども、いろ色んな過労自殺についてのお仕事もされてるんですね、今、幸美さんは。

高橋 はい、そうです。

三宅 いろんなところ、結構、東京はよくいらっしゃるということですよね。

高橋 東京の方は厚労省の過労死等防止対策推進協議会という会の委員になっておりまして、厚労省のほうで会議に参加しております。

三宅 そうですよね。そちらでもこれから話し合われることになると思いますけれども、ぜひ、改善していただきたいと思います。

高橋 労基署は引き続き監視を続けてもらいたいし、国には労基署の是正勧告が企業に有効に機能していないことを認めてほしいと思います。労基法違反や過労死に対する罰則の強化もしてもらいたいと思っております。

三宅 今日は突然にありがとうございました。

高橋 ありがとうございます。

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